高温ガス炉で電源喪失試験 茨城・大洗 原子力機構、安全性を検証

安全性の実証試験が行われたHTTRの制御室。職員が試験の手順を確認し、原子炉の出力を見守った=27日午後5時、大洗町成田町(代表撮影)

日本原子力研究開発機構は27日、茨城県大洗町にある高温工学試験研究炉(HTTR)で、運転中に冷却機能が喪失した状態を再現し、自然冷却によって原子炉を停止させる試験を実施した。機構によると、出力100%の状態での試験は初めて。事故時でも高い安全性を実証し、実用化に向けた足掛かりとする。

HTTRは炉心の冷却に水を使う一般的な原発(軽水炉)と異なり、ヘリウムガスを使う国内唯一の高温ガス炉。試験では制御室の職員がヘリウム循環機3台の運転を順番に停止し、制御棒の機能も止めて電源喪失状態を再現した。

原子炉内で用いられる黒鉛は蓄熱性が高いため、冷却材の循環が止まっても時間をかけて自然放熱できる仕組み。試験開始から約5分で、安定性の維持ができたとして、「成功」とアナウンスされた。

篠崎正幸高温工学試験研究炉部長は「操作なしに出力がほぼゼロを確認できた。第1段階としては成功」と話した。28日午前まで経過を観察する。

機構は原子炉から取り出した最高950度の熱を活用した水素製造施設の建設について今後、国と協議する。

HTTRは東日本大震災の影響などで運転を停止していたが、2020年6月に原子力規制委員会の審査に合格。21年7月に運転を再開した。安全性の実証は3段階計画し、今回が最後の試験。11年と22年は出力30%でいずれも安全性を確認している。

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