ギャンブル、薬物…「依存症」のすさまじい戦い 自力解決は困難、治療には人を頼るべき 医師が語る

メジャーリーグの大谷翔平選手の通訳が巻き起こした一件がもとで、今、日本では至るところで「ギャンブル依存症」という言葉が囁かれています。依存症というのは、立派な病気です。ギャンブル、アルコール、違法薬物など様々な種類があります。「ギャンブル依存なんて自業自得だから、ほっておけ」という人もいます。しかし、これらの依存症は個人の問題のみならず、社会問題、犯罪に繋がります。決して他人事として放置せず、ちゃんと考えてみるべき問題だと、私は考えます。

ギャンブル依存症をはじめとして、これらの病気を自分一人の力で治癒することは、かなり難しいと言えます。日本にはギャンブル依存者が社会復帰を目指すリハビリ施設が各地に点在しています。その施設の素晴らしい点は、自身もギャンブル依存症から回復した強者が運営に携わっておられ、言葉だけで付き合うのではなく、自身が回復したという貴重な経験をもとに、依存者たちを更生させ、共に生活しておられるところです。

また、行政との連携も取りながらプログラムの改善を図っておられるとも聞きます。多くの依存者たちが同じ過ちを繰り返す中、そのことを責めるのではなく、ともに生きている仲間がいるということが彼らを助けます。強くて、優しい思いやりを持つ人間が適切なプログラムに沿って治療を行うところに、非常に重要な意味があると思います。

例えば、家族、友人が簡単にお金を貸したり、借金の肩代わりをするのは、よくないこととされています。しかし、更生施設に通っている際に、ギャンブルをしたからと言って、厳しく非難、叱責するだけではよくないとされるケースもあるそうです。これらのさじ加減は、経験者にしか分からない微妙なものがあると思われます。

また、薬物、アルコール依存症に対しても、同様のリハビリ施設が日本全国に点在しています。仕事上、薬物依存の患者さんにお会いすることはあります。残念ながら、その多くの方が、再犯を繰り返します。その負のサイクルから個人の力で脱出するのは、100%不可能ではないだろうかと思うほど困難です。

日本には「ダルク」と言う薬物依存者が社会復帰を目指すリハビリ施設が各地にあります。その施設では、薬物依存回復への確立したプログラムがあります。また、常時情報を取り入れ、プログラムの改善を図っておられるようです。また、ギャンブルと同様、自身が依存から回復した得難い経験を生かして、回復へ尽力されています。特に、薬物依存の場合、“抜ける”ための道筋はきれいではないですし、並大抵ではありません。時には、命懸けの局面もある険しいものです。

繰り返しになりますが、ギャンブル、薬物、アルコールも、依存症は病気です。自分一人で解決しようしないことが肝要だと思います。また、いつでも治療を止めることがやめるなどと軽く考えずに、ご家族、友人、他人の力を借りて、依存症からの脱出を図ることは非常に大切なのです。

◆谷光利昭 兵庫県伊丹市・たにみつ内科院長。外科医時代を経て、06年に同医院開院。診察は内科、外科、胃腸科、肛門科など。

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