今年でラストを飾る世界最古のTV業界マーケット「MIPTVカンヌ」 ~新たに「MIPロンドン」来春に立ち上げ~ / Screens

フランス・カンヌのTVコンテンツ国際マーケット「MIPTVカンヌ」が4月8日~10日の開催をもって、61年の歴史に幕を下ろす。主催のRXフランスが現地時間3月26日に発表した。一方、新たな春の業界のマーケットとしてMIPロンドンを立ち上げ、来春に開催される第1回目のMIPロンドンは近年、業界内で注目を集めている「ロンドンTVスクリーニング」に併設する新たなマーケットのかたちが作られる。

■4月8日から記念すべき最終回を開催

テレビ番組の国際取引マーケットとして、世界で初めに作られた見本市がMIPTVと言われる。RXフランスの旧社名リードミデムの創設者である故Bernard Chevry氏が1963年にカンヌでMIPTVを立ち上げて以来、世界中のテレビメディア企業や関係者にとって重要な年中行事となった。番組の海外展開を行う日本のNHKや民放各局も毎年のように参加出展するイベントである。

4月8日から開幕するMIPTV(プレイベントのMIPFORMATSおよびMIPDOCは4月6・7日に開催)の出展社数は、130社を見込む。また、11カ国(オーストリア、ベルギー、カナダ、中国、フランス、イタリア、ルーマニア、韓国、スペイン、トルコ、ウクライナ)から13のナショナル・パビリオンブースが展開される予定だ。世界76か国からプロデューサーやバイヤー、ディストリビューターがカンヌに集結するイベントになる。なお、昨年は5500人以上が会場のパレ・デ・フェスティバル・エ・デ・コングレに来場した。

そんな歴史のある番組見本市のMIPTVカンヌが今年の開催で最後になる。開催直前の3月26日に主催者のRXフランスが発表したところだ。RXフランス エンターテインメント部門ディレクターのルーシー・スミス氏は「MIPTVは60年以上前にカンヌで設立され、カンヌ市と密接な関係にあります。MIPTVは4月で幕を閉じますが、記念すべき最終回を開催したいと思っています。またカンヌにおけるテレビ業界を代表する世界的なエンタテインメント・マーケットは10月のMIPCOMカンヌに集中することになります」と明かす。

つまり、カンヌで開催される番組コンテンツ見本市は10月開催のMIPCOMに集約されることになった。MIPCOMカンヌは2024年10月21日~24日に開催予定し、今年で40周年を迎える。

■500人以上の海外バイヤー参加「ロンドンTVスクリーニング」

MIPTVカンヌをクローズさせる一方で、新たな春の業界のマーケットとしてRXフランスはMIPロンドンを立ち上げる。初回の会期は2025年2月24日から27日(プレオープニングデー23日)とすることを発表した。会場は、ロンドンのウエストエンドにあるサボイ・ホテルとIETロンドン/サボイ・プレイスに隣接する施設が中心となる予定。

同時期開催となる「ロンドンTVスクリーニング」は2023年2月に開催された第3回イベントにおいて、2022年開催時の87%増となる28のスタジオ/配給会社と500人以上の海外バイヤーが参加し、日本のテレビ局も含まれる。盛り上がりをみせる「ロンドンTVスクリーニング」では、ネットワーキングをはじめ、カンファレンスやスクリーニングに対するニーズが高まっていることを受けて、MIPロンドンがその役割を担うかたちで併設される運びになったという。激動の業界マーケットのニーズを反映し、長らく検討した結果、MIPロンドンという新たな業界イベントを形成する。

RXフランスのスミス氏は「新たな年が明けてから、この3月まで世界的なコンテンツビジネス業界のニーズは動いています。MIPロンドンは、昨今世界各地域で拡大している各種の業界イベントを効率良く集約するという意味合いに止まらず、コンテンツビジネスに関わる多くのの国際関係各社が既存のロンドンTVスクリーニングへの参加機会にプラスして参加する価値を提供するものになると考えています」と、発表文に綴っている。

■新たな試みとしての「MIPロンドン」

MIPロンドンは、従来のMIPTVのような見本市/展示様式ではなく、イギリス市場を軸に世界でのプレゼンスの確立を目指す業界関係者にとって、より便利な機会を提供し、また効率の高いネットワークを築くため、カスタマイズされた幅広いオプションイベントを提供することに重点を置く。バイヤーを対象に無料登録可能な招待枠も設ける。

「各社がコンテンツを持ち寄り、国際ビジネスを促進する上でもっとも効果ある機会の1つとしてこの新たな場をお客様に提供するべく、様々な演出をしていくことは長年培ってきた国際マーケットMIPの主催者として我々が最も得意とするものであり、カンヌ、そして昨今ではMIP カンクンの成功を受け、多くの関係者に認められてきたものであると自信を持っています」と、スミス氏は続ける。MIPロンドンは、RXフランスの主催でメキシコのカンクンで開催されている地域特化型マーケットのような位置づけにもなりそうだ。

最後にスミス氏は展望をまとめた。「今回の決定の背景には既存のロンドンTVスクリーニング主催者だけでなく、数々の国際コンテンツイベント関係者の意見にも真摯に耳を傾けながら検討を重ねた経緯があります。この新たな試みは決して、既存のロンドンTVスクリーニングと競合するものではなく、むしろスクリーニングの形態だけでは得られない、新たな魅力を長年のMIPTVの経験値で補うべく、幅広く展開し、大手ディストリビューター、スタジオ、そして何よりも多くのバイヤーが参加できる新しい選択肢を提供したいと思っています。この試みはあらゆる業界関係者に対しそれぞれのメリットが提供でき、来春2月、ロンドンで皆様に更なる多大なビジネスチャンスをもたらすことができる場になることを確信しています」

MIPロンドンの詳細についてはまだ明らかになっていないが、ラストを飾る今回のMIPTVカンヌでは新たに始まるMIPロンドンをはじめ、コンテンツビジネス業界マーケットの変化について注目が集まり、この話題で持ちきりになるだろう。またFASTやAVOD、生成AIをテーマにした集中セッションなども昨年に続いて企画されており、業界キーマンが登壇するキーノートをはじめ、各種セッションも予定されている。さらに、初日の8日にはTBSがイギリス最大手の制作会社All3Media Internationalとの共同制作フォーマットについて語る特別セッションが開かれることも決定している。現地の模様については開催後、改めてレポートする。

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