集合住宅向け融資の多い米銀、今年損失被りやすい=フィッチ

Matt Tracy

[ワシントン 27日 ロイター] - 格付け会社フィッチ・レーティングのアナリストグループは27日の電話会見で、一部の集合住宅、特に厳格な家賃規制のある州の物件所有者向けに多額の資金を融資している米国の銀行は今年、コスト増加に直面するのに伴い、損失を被りやすいとの見方を示した。

フィッチは会見で、集合住宅向け融資を引き受けている銀行が直面するリスクを強調。同社の19日付リポートによると、集合住宅向け融資総額は昨年末時点で6130億ドルとなり、2020年以降で32%増加した。

だが集合住宅は供給が需要を上回っているため、家賃に下振れ圧力が働いている。物件所有者はまた、物件価値の下落に加えて金利の上昇や保険料の値上がりといった逆風にも見舞われており、コストの増加を家賃に転嫁するにも限界に来ているという。

こうした要因が集合住宅向け融資の多い一部地方銀行の経営を圧迫。フィッチのシニアディレクター、ブライアン・ティース氏は集合住宅向け融資が「現在、融資成績を左右する懸念材料となり得る」と述べた。

フィッチは昨年末時点で集合住宅向け融資の多い銀行としてフラッグスター・バンク、ファースト・ファウンデーション・バンク、ダイム・コミュニティー・バンク、パシフィック・プレミア・バンク、アップル・バンク・フォー・セービングスなど10行を挙げた。

昨年末時点で集合住宅向け融資の少なくとも5%が返済期限を超えて延滞している銀行は49行となっている。

フィッチは、自己資本が逼迫している銀行はこうした融資債権を損失覚悟で売却することを検討する公算が大きいと指摘。ティース氏は「大半の米銀は現時点で集合住宅向け融資に対して十分な資金を引き当てていると考えられるが、一般的には突き詰めると、担保価値がどうなるか、銀行が債権を売却する用意がどれほど整っているか、といった要因に左右される」と説明した。

© ロイター