フランスの校長、スカーフ外すよう生徒に求め殺害を予告される 辞職し社会問題に

フランス・パリの中等学校の校長が先月、イスラム教徒が着用する頭髪を覆うスカーフを外すよう女子生徒らに指示したところ、ソーシャルメディアで殺害を予告され、今月辞職した。生徒の1人は校長にたたかれたと虚偽の主張をしたとされ、首相がこの生徒は訴追されると発言するなど、社会的な問題となっている。

フランスでは2020年以降、学校に対するイスラム主義者の脅威が非常に深刻に受け止められている。

同年10月には、学校教諭のサミュエル・パティさんがパリ郊外の路上で首を切り落とされて殺害される事件が発生。その5カ月後にも、北部アラスの学校で教諭ドミニク・ベルナール氏が殺害された。

今回の校長(氏名非公表)は今年2月28日、パリ20区にある学校「モーリス・ラヴェル・リセ」で、10代の女子生徒3人に、国内の法律に従って校内ではスカーフを外すよう求めた。

生徒2人は従ったが、もう1人は従わず、言い争いとなった。

その後の数日で、校長はソーシャルメディアで殺害予告の対象となった。同校は内務省のホットラインに通報した。

校長は今月22日、同僚らにメールを送信。公教育には45年間携わってきた末に、「自分と学校の安全への懸念から」「辞職を決断した」と説明した。

殺害予告で2人を拘束

殺害予告をめぐっては、検察が2人を拘束したと発表した。身元は明らかにされていないが、教育省は学校とは無関係の人物だとしている。

女子生徒の1人は校長にたたかれたと話したが、警察は証拠を見つけられなかった。これを受け、ガブリエル・アッタル首相は、この生徒は偽証について裁判にかけられると発言した。

政治家らは左右を問わず、尊敬を集めていた教職者がインターネットのヘイト(憎悪)キャンペーンでキャリアを絶たれたことに憤りを表明。

「現在の政府は私たちの学校を守ることができない」、「これは国家の敗北であり(中略)イスラム主義の壊疽(えそ)はさらに範囲を拡大している」、「殺害予告のために校長が辞職するのは集団的な失敗だ」などの意見が噴出した。

爆破予告で休校

これとは別に、パリのいくつかの学校が27日、イスラム主義者と思われる人物から爆破予告を受け、休校に追い込まれた。

先週もパリ地域の約30校に同様の脅迫があった。その際、斬首の動画が添えられていた。

捜査当局は、ロシアの偽情報活動の一環である可能性もあるとしている。アッタル首相は今月初め、フランスのウクライナ支援を弱めることを目的に、ロシア政府が「大規模な不安定化の活動」に乗り出したと警告した。

(英語記事 France to sue teen over headscarf row claim

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