「園が現場を見ていない」相次ぐ幼稚園・保育園教職員の一斉退職…背景には「少子化」と「働き方改革」

静岡県掛川市の保育園で保育士の半数以上が3月末で一斉退職する問題で、園は3月28日夕方から保護者説明会を開いています。静岡県内の幼稚園や保育園で相次ぐ職員の一斉退職。背景に見えてきたのは、「少子化」と「働き方改革」でした。

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<浜松総局 山口駿平記者>
「職員が一斉退職する保育園では、まもなく保護者説明会が開かれます」

掛川市の私立保育園では、18人の保育士のうち、11人が3月末で退職する予定です。掛川市には、3月22日時点ですでに15件の転園の申し込みがあり、保護者などからは不安の声があがっています。園は午後6時から保護者説明会を開き、一斉退職問題などについて説明しているものとみられます。

一方、焼津市の私立幼稚園でも教諭の一斉退職問題が明らかになりました。

<幼稚園を退職する教諭>
「子どもの安全を確保できない環境。経営陣が子どもファーストでない」
「『先生の人数、環境を整えてほしい』と再三声をあげたにもかかわらず、応えてくれないことが原因」

教諭たちが訴えたのは、経営陣の現場を顧みない姿勢でした。教諭ら15人のうち13人が3月末で園を去ります。

相次ぐ教職員の一斉退職。背景には、どのような事情があるのでしょうか。保育現場の労務管理の支援などを行う法人の菊地加奈子さんは、「少子化」が一つのきっかけになっていると分析します。

<社会保険労務士法人ワーク・イノベーション 菊地加奈子代表>
「少子化によって園児が減ってきているので、どの園も生き残る園になるため、選ばれる園になるためにということで、今までとは違ったことをしていかなければいけない。そうすると、保育の内容を大きく変えてしまう。職員の同意や対話をしないで、そのまま進めてしまうことによって、現場を見ていない」

掛川の保育園では、理事長がプログラミング教育などの運営改革を推し進めたことが現場との摩擦を生み、一斉退職の大きな要因となりました。

さらに、菊地さんは、業界の事情と合わない急激な「働き方改革」の流れも原因になっていると話します。

<社会保険労務士法人ワーク・イノベーション 菊地加奈子代表>
「単なる業務改善というところに重きがいってしまって、ただ、残業だけはしてはいけませんよと。でも、目の前に子どもたちがいるので(先生たちには)やらなければいけないことがある」

これにより、先生たちの残業が増えるという悪循環が生まれているのです。

職員が一斉退職する2つの園では、新たに職員を採用し、運営を続けるということですが、保護者の不安は拭えません。

子どもたちの安心・安全を確保するためにも職員たちが納得できる現場の実現が求められます。

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