【澤穂希・丸山桂里奈 ママ対談】つい怒って、子どもの寝顔を見て、反省して・・・子育てはその繰り返し

2024年3月某日、都内のスタジオでの澤さん(左)と丸山さん(右)のツーショット。

2011年FIFA女子ワールドカップドイツ大会で初の世界一となったなでしこJAPANの澤穂希さん(45)と丸山桂里奈さん(41)。現在、澤さんは7歳の女の子、丸山さんは1歳の女の子のママとして、子育てにも奮闘しています。今回、「たまひよONLINE」では元トップアスリートのママ2人の対談が実現。夫も元サッカー選手であるアスリート夫婦の2人に、夫婦関係のこと、子育ての心配事などについて、あれこれ語ってもらいました。

【澤穂希×丸山桂里奈 ママ対談】家族をもってわかった、代表チームで得た経験と、紡いだ絆の大切さ

ママも1年生。子どもと一緒に成長すればいい

3人でよく会うという、丸山さん(左)、阪口夢穂さん(中央)、澤さん(右)。(丸山桂里奈さんインスタグラムより)

――澤さんは先輩ママ。丸山さんから澤さんに聞きたいことはありますか?

丸山さん(以下、敬称略) 澤さんにはすでにいつもいろいろ聞いちゃってます!でも、最近のことだとすると、娘はこの前1歳を迎えたんですが、ますます活発になってきました。いたずらやよくないことをしたときに、どうやって「だめだよ」って教えたらいいのかちょっと悩んでます。たとえば、水が入ってるコップを倒すことってよくありますよね。そういうとき、「あっ!ダメッ!」って瞬発的に怒っちゃうんです。あとから考えたら、「大人が手の届かないところに置けばよかった」ってわかるんですけど。私はサッカーでも瞬発力タイプだったけど、子どもにもそういうとき、瞬発的に怒っちゃう。

澤さん(以下、敬称略) 私は娘が2歳になるくらいまで、1回も怒ったことはなかったなぁ。でも自分に余裕がないときは、そうなっちゃうよね。瞬間的にイラッとする気持ち、すごくよくわかるよ。

私、実は昨年、子育て心理アドバイザーと食生活アドバイザーとスポーツ栄養プランナーの資格を取ったの。子育て心理アドバイザーは通信教育で学んだんです。この勉強をして知ったのは、子どもにあんまり怒りすぎると、自己肯定感が低くなって、自分からチャレンジする気持ちがなくなってしまうことがあるんだって。

だから、できるだけ言いすぎないように気をつけてるんだけど・・・今でもやっぱり余裕がないとイラッとして、怒っちゃうんだよね。夜に娘の寝顔を見て「なんであんなに怒ったんだろう、ごめんね」って自己嫌悪になる、そんな日々の連続だよね。 もっと余裕を持って子育てしたいな、と思いながらも。

丸山 本当にそう! 自分がもっといいお母さんだったらよかったのに、って思います。

澤 でも桂里奈はお母さん1年生、私は7年生。子どもと一緒に成長して、一緒に勉強していけばいいんじゃないかな。子育てって、かわいい、かわいいだけじゃ、絶対できないよね。

だから自分が爆発しそうなときは、していいと思うんだよね。子どもに当たるとか、そういうことじゃなくて。聞いてくれる大人に吐き出すとか。本並さんだって、きっと大きな器で構えてくれると思う。

丸山 ほんと、そうですね。本並さんにはいつも話を聞いてもらってます。でも私には澤さんもいてくれるから心強い。

子育てで悩んだら、夫婦でよく話し合う

2023年の11月、家族で温泉へ。夫で福島ユナイテッドFC取締役副社長の辻上裕章さんと。

――澤さんは子育てで困ったとき、どんな人に相談しますか?

澤 普段の生活のこととか、学校のことはママ友に聞くこともあります。でも娘のことについては、やっぱり夫にいちばんに話を聞いてもらうかな。娘が本当にいうことを聞かなくて困ったら、父と娘の時間を作ってもらって、夫から娘に話してもらってます。それでようやく娘が納得して「私はこう思ったからお母さんにこう言っちゃった、ごめんなさい」って言ってくれることもありました。

丸山 夫婦げんかとかしますか?

澤 けっこうするよ〜!かなりの言い合いになる。でもわが家は、けんかをしても必ずその日のうちに仲直りする、って決めているの。だからだいたいはけんかしてもすぐおさまるんだけど、本当にムカついて、一応謝るけどどうしても許せないときがあるわけ(笑)。そうすると娘が「もうそろそろ許してあげたら」って言ってくれたり。

丸山 親子3人でフォローしあってるんですね。うちはけんかすると2対1(本並さんと娘対私)に分かれちゃうかも。とにかく娘が本並さんが大好きで、態度が全然違うんですよ! 私が仕事から帰宅してもチラ見するくらいなのに、本並さんが帰宅すると、大喜びして抱っこをせがむ、みたいな(笑)。何かやってほしいことがあるときも、私じゃなくて本並さんのほうに行ったりして。まだ言葉は話さないけど、本並さんのほうがやってくれるとかわかってるみたい。

澤 子どもってよく親を見てるし、言葉を話さないうちから、いろんなことをよくわかってるよね。

わが家は逆に、夫と娘で私を取り合ってるかも。寝るときは、川の字の真ん中は必ず私だし、夫は基本的に妻ファーストの人。子どもはいつか巣立っていくけれど夫婦はずっと一緒だからと、私のことをすごく大事にしてくれる。夫は「早く子どもが大きくならないかな」と冗談で言ったりすることもあって。子どもが巣立ったら、夫婦2人でキャンピングカーで日本中の温泉をめぐりたいらしく、今からキャンピングカーを物色してます。

丸山 え〜! それってめっちゃすてきですね!

母親がしっかりしていないと、子どもがしっかり者になる!?

1歳を迎えた丸山さんの娘さん。ティッシュでいたずら?!

――澤さんの娘さんは幼稚園に通っていましたか?

澤 2歳のときにプレスクールに週1回通っていて、3歳からは幼稚園です。そういう集団生活で、演劇をやったり、チューリップの種を植えて育てて、芽が出てくるのを観察したり、いろんな体験ができてよかったと思います。同じ年ごろのお友だちと一緒に遊ぶことも、子どもの学びになったと思います。

丸山 今はうちの娘は1歳になったばっかりだけど、まわりに同学年の赤ちゃんがあんまりいないんですよね。

澤 私も子育てしはじめのころはそうだった。私の友だちの子どもも年上の子が多かったから、初めはお兄さんお姉さんと遊ぶことが多かったよ。年上の子って、年下の子になにかと譲ってくれたり優しくしてくれるじゃない。でもプレスクールや幼稚園に入って、同じくらいの年齢の子と遊ぶと、「貸して」「どうぞ」とか、「いや」とか、そういうコミュニケーションを学ぶことも、社会で生きるのに必要だなって感じたな。

――澤さんは東京出身で、結婚後に仙台で暮らしているそうですが、子育てのコミュニティとはどんなふうにかかわっていますか?

澤 仙台は私たち家族にとても合ってるんです。仙台の教育の環境もいいなと思っています。
仙台には昔からの知り合いはいないんですが、ここで生活するなかで、子どもを通して知り合い、気が合うママ友もできました。今は夫が福島で仕事をしていて週末だけ帰ってくるんですが、仙台の教育の環境が娘にとってすごくいいと思うから、私は娘が中学校までは仙台で暮らしたい、と希望しています。その後は、どこで生活するかは彼女の選択に任せようと決めています。

丸山 娘さんに「東京に行きたい」って言ってほしいな。そしたら澤さんも東京に来ますよね。もっと会えるようになる・・・。

澤 あはは(笑)。わかんないけど、たぶん。もし海外に行きたいってなったら娘だけ行かせるかも。

丸山 すごいしっかりしたお嬢さんに育ちそう。

澤 もう今の段階で、家族3人のなかでいちばんしっかりしてるかも。すごく助けられてるし、わが娘ながらすごいなって。なんだか言語系が得意なようで、そして暗記力もすごくて、ことわざとか慣用句とかは私よりはるかに知識があるくらい。

丸山 しっかりした子に育てるコツとかあるんですか?

澤 たぶんね、私がしっかりしてないから子どもがしっかりするんだよ。だからきっと桂里奈の子も大丈夫。しっかり者になるよ(笑)

丸山 いやいや、澤さんはしっかりしてないはずない。

澤 最初はね、初めての子育てだから、あれしなきゃ、これしなきゃって、いろいろ見たり調べたりして一生懸命やっていたけど、でもそうしてると疲れちゃう。ほかの家族と比べる必要もないし、自分の子どもに合ったように対応すればいいなって考えるようになって。だからもう、頑張りすぎないようにしよう、って思ってます。

疲れたら、子どもが幼稚園や学校に行ってる間に昼寝したりとか、今日は何もしない日にする、と決めるとか。なんでもお母さんがやらなきゃってなると、「なんで私だけ1人でこんなにやらなきゃいけないんだろう」って不満に思っちゃうから。だから1人の時間も大事だよね。桂里奈は自分の時間を大切にしてるよね。

丸山 うんうん、私も自分1人の時間とか、友だちに会う時間はすごく大事だなって思います。本並さんに娘を寝かしつけてもらって、自分で2〜3時間絵を書いたり、好きな夜食を食べたり。娘と数時間離れるだけで、ぜんぜん違うって思う。

子育てで大切にしていること

2023年8月、アメリカの学校のサマーキャンプに参加したあと、ワシントンD.C.のホワイトハウス前で。

――子育てする上で大事にしていることはどんなことですか?

澤 最近娘は中間反抗期っていうのか・・・学校で覚えたいろんな言葉を使って反抗するから、それに対して、私は寛容な心がなくてイラッとすることがあります。
わが家では、「思ったことはちゃんと伝える」ってルールがあるんです。自分が間違いだと思ったら、人に嫌われたくないから指摘しないのではなく、きちんと言葉にして伝えよう、と。日ごろからそう教えているから、娘も私に対してはっきり意見を言うんです。

娘に図星のことを言われたら、「ごめんね」って素直に謝るときもあるんだけど、でも私もアスリートだったから、負けず嫌いなところがあって言い返しちゃうことも。そんなときは自分も素直じゃないなって反省します。もっと寛容に受け止めて「ごめんね」って言えるようになりたいなって。

一方で、娘は素直に「ごめんなさい」が言えるんです。それはすごいなって。いつも子どもから学んでいます。

丸山 娘さん、めっちゃいいですね。大人同士でも謝れない人って多いじゃないですか。「ごめんね」と「ありがとう」を言えることって、すごく大事ですよね。

澤 本当にそう。娘にも、どんなに小さなことでも、人になにかしてもらったら「ありがとう」と感謝の気持ちを忘れちゃダメだよ、って話していて、それは大事にしたいです。ほかに、子育てするうえで夫と話し合って決めたのは、夫婦のどちらかがしかったらどちらかがフォローしよう、ということかな。

丸山 子育てって正解がないなかで、いろんな情報がありすぎて、何を選んだらいいかわからなくて迷いがちだけど、こうやって澤さんと話せて、ちょっと安心しました。これから娘の幼稚園とか学校とか、ママ友のこととかどうなるんだろう、って思ってたんです。澤さん、ママ友がいるって言ってたけど、こんなスターがいたら周囲のママさんたちがびっくりしませんでしたか?

澤 どうだろう? あんまり気にしなかったな。でも、子ども同士のかかわりでいろんなママさんたちと知り合う機会が増えると思うから、いろいろな人と知り合ううちに、きっと気が合う人も見つかるんじゃないかな。

お話・写真提供/澤穂希さん、丸山桂里奈さん 聞き手・文/早川奈緒子、たまひよONLINE編集部

三姉妹のママ・横澤夏子。同じ顔の“横澤夏子”が家に四人いる、賑やかすぎる日々。夫は育業を経験して、パパとしてバージョンアップ

日本代表として世界と戦った2人ですが、試行錯誤しながら子育てをする等身大のママの姿に、共感できるエピソードがたくさんありました。

●記事の内容は2024年3月の情報であり、現在と異なる場合があります。

澤穂希さん(さわほまれ)

PROFILE
1978年9月6日生まれ、東京都出身。15 歳で日本代表入り。日本代表では、通算 205 試合に出場し、83 得点。日本女子代表史上、出場数・ゴール数歴代1位を獲得。2011年国民栄誉賞を受賞。2015 年 8 月に結婚し、同年 12 月に現役引退。現在は、一児の母として子育てしながら、スポーツの普及のため様々な活動を行っている。2023 年に「スポーツ栄養プランナー」、「子育て心理アドバイザー」、「食生活アドバイザー®3級」を取得。

丸山桂里奈さん(まるやまかりな)

PROFILE
1983年3月26日生まれ、東京都出身。第4回女子W杯、アテネ五輪、北京五輪、第6回女子W杯(優勝)、ロンドン五輪(準優勝)で日本代表として活躍。2005年Lリーグ(現なでしこリーグ)新人王、2011年国民栄誉賞を受賞。現在はバラエティ番組、スポーツ番組などで活躍。2023年2月に第1子の女の子を出産。

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