井田典子さんに聞く、心がラクになる手放し方『この先の人生に必要な物を選ぶ』

人生後半戦を身軽に暮らす!経験や思い出が増えるほど、持ち物も増えていきます。体力も判断力も落ちていくお年頃だからこそ、これからの人生に必要な物だけを残しませんか?心がラクになる手放し方を教えてもらいました。

<教えてくれた人>
整理収納アドバイザー 井田典子さん(神奈川県 63歳)
夫(63歳)、3人の子どもは独立。現在は長女の家族と2世帯住宅で同居。各媒体でスーパー主婦として活躍。著書に『今やるのが、いちばんハヤイ!人生が整う「小片づけ」』(主婦と生活社)など。

「捨てる」のではなく、必要な物だけ選ぶ

「40代はやりくりや家事、子育てで忙しく、ゆとりはゼロでした」と井田さん。でも、悪戦苦闘の日々で身についた物との付き合い方や取捨選択する力は、今の暮らしにも役立っているそうです。「『老後は今より物を減らして身軽に暮らしたい』という人も多いはず。物を捨てることに心苦しさを感じるなら、『この先の人生に必要な物を選ぶ』というスタンスで片づけに取り組むのがおすすめ。自分が選んだ物だけに囲まれた暮らしはとても気持ちがいいですよ」。

30代~40代、50代、そして現在 物との付き合い方が変わってきました

人生の節目をむかえたり、年を重ねるごとに、大切な物や必要な物は変化。物があふれて片づけられない自分を責めるのではなく、「今どう暮らしたいのか」を自問自答してみることが、物の持ち方を見直すきっかけに!

家事に育児に仕事にフル回転!30代~40代

子どもの成長とともに物が増え、物量MAXの時期。
子どもが大きくなるにつれて持ち物が徐々に増加。働き盛りの親の服や身の回りの物などの必需品も多く、物量はピークに。日々の忙しさから「便利」や「お得」という言葉につられ、生活用品も増えがち。

「乱れない家」ではなく、「乱れてもリセットできる家」を目指した

片づけてもすぐ散らかるとイラ立つのをやめ、「生活している以上、散らかるのは当然」と割り切ることに。必要な物は置き場を決めて、戻しやすくすることで、部屋が一時的に乱れても「リセットできるから大丈夫」と気持ちに余裕が。

おもちゃの大きな箱は処分。ラベルを空き缶に貼って中身を移し替え

更年期で不調&イライラ!50代

体調不良や体力低下で片づけが停滞しやすい時期。
体力が落ちてきたり、50歳前後からは更年期症状で心身の不調が続いたり。物の整理や処分が億劫になって、片づけが停滞しやすい傾向に。親の介護が始まり、自分の家の片づけが後回しになるケースも。

物の取捨選択や片づけを先送りせず、今やることを意識

「いつか片づけよう」と先延ばしにすると、次の人生のステージでもやるべきことに追われ、結局できないままになりがち。「人生の節目やライフスタイルが変化するたびに、物の要・不要を見直すよう心がけました」。

分別ゴミのラベルに収集する曜日も貼り、家族にも協力してもらう

夫婦の第2の人生がスタート!60代以降

子どもの独立で、物量や生活スタイルを見直す時期。
巣立った子どもが残していった物、長年ため込んだ物などが家の中を占領。高齢になるほど足腰や気力が弱って片づけがしんどくなるので、今の生活に必要な物を早めに見極め、整理することが大切。

生活サイズをコンパクトにし、「4分の3の暮らし」を実践中

3日分の買い物で4日間過ごしたり、お風呂の湯量や押し入れの収納量をこれまでの4分の3に減らしたり。買う、使う、持つ物の量を今までより少し減らすことを意識し、夫婦2人の生活を無理なくサイズダウン。

家計簿と日記は思い出深い結婚1年目の分だけ残すことに。

年とともによどまない! 暮らしを新陳代謝させる上手な手放し方

住む人は年を取って変化しているのに、家の中の物が変化しないままだと、人と物との間にズレが生まれ、暮らしにくくなります。物がどんどんたまると部屋がよどみ、その結果、自分自身もよどむことになるので、上手な手放し方をマスターしましょう。

小さなところから片づけ始める

玄関や洗面所など、思い入れが少ない物や場所から手をつける

服や写真など思い出にまつわる物は、片づけに時間がかかりがち。まずは思い入れが少ない玄関や洗面所、範囲が狭い薬箱や裁縫箱などから手をつけてみて。

だ・わ・へ・し(出す→分ける→減らす→しまう)の4ステップで片づける

片づけたい場所の中の物を全て出し、種類別に分け、不要な物を減らし、必要な物だけしまう。家中どこでも、この4つのステップを繰り返すのが片づけの基本です。「まずは引き出し1つから始めてみましょう」。

これからの人生に必要な物だけ残す

アルバムはベストショットを厳選し、10分の1の量に

「重いアルバムは誰も見ないから」と、ピンボケや顔が切れている写真を外し、写りのいい物を厳選して手軽なポケットアルバムに移し替え。「3人の子どもそれぞれのベストアルバムができました」。

大切な思い出の品は量を絞り、気軽に見返せる位置にしまう

家族の思い出の品は、ダイニングテーブルの横にある収納庫にひとまとめ。「思い出の品は箱にしまい込んだら、ほぼ見ません。だから数を絞って、いつでも気軽に見返せる場所に置いています」。

「枠」を決め、その中で物を「循環」させる

レシピのファイルは20年間1冊のみで、中身だけアップデート

料理のレシピは20年間同じ1冊のファイルにまとめ、作っておいしかったレシピのみ保管。新しいレシピを追加したら、もう作らないレシピをその都度処分し、常に今必要な最新レシピだけをキープ。

本や雑誌はこの棚からはみ出したら見直すのを徹底

物ごとに「ここに入るだけ」と入れ物の枠を決め、枠の中で新旧交代することが大切。新たに1つ加えたら、1つ処分するルールにするのも◎。枠からはみ出したら中身を見直すサインと心得て。

むやみに収納グッズを増やさない

収納グッズは家にある物を活用する

スペースを仕切る収納グッズは安易に買わず、家にある空き箱やケースなどをフル活用。「浅めの引き出しを仕切るときには、牛乳パックで作った仕切りが便利。不要になったときの処分もラクです」。

牛乳パックを仕切りに再利用

年賀状はファイリングせず、背をテープで貼るだけに

新たに入ってくる物は、捨てるときのことを考えて収納を。「年賀状をファイルにしまうと1枚ずつ出すのが面倒で捨てづらいので、背にテープを貼ってまとめています」。

※本書の一部は、『サンキュ!』20年1月号~ 23年8月号に掲載された記事を抜粋、加筆、再編集しています。※名前、年齢、家計については取材当時の情報を掲載しており、現在とは変わっていることがあります。※名前は本人の希望により仮名を使用している場合があります。

参照:『サンキュ!』2024年4月号「50代からの身軽で豊かな暮らしBOOK」より。掲載している情報は2024年2月現在のものです。構成・文:鹿島由紀子 編集/サンキュ!編集部

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