加賀藩の愛本刎橋 仮想空間に再現 黒部市歴史民俗資料館にVR

ゴーグルで没入体験ができる愛本刎橋のVR映像=黒部市歴史民俗資料館

  ●ゴーグルで没入 渡ったり、眺めたり

 黒部市は加賀藩が黒部川に作った日本三奇橋の一つ「愛本刎橋(あいもとはねばし)」を仮想現実(VR)技術で再現、ゴーグルを使って没入体験を楽しめる映像を制作した。体験システムを常設する市歴史民俗資料館で28日、完成式が行われ、武隈義一市長ら関係者が加賀藩の歴史遺産を生かした誘客や広域観光推進に期待を込めた。

 全長63.5メートルの愛本刎橋は加賀藩5代藩主前田綱紀の命を受け、1662(寛文2)年に川幅の狭い箇所に架設された木造橋。急流のため橋脚を設けず、両岸から「刎木」を出して橋を支える特殊工法で、明治期まで架かっていた。

 他の日本三奇橋は錦帯橋(山口県岩国市)、猿橋(山梨県大月市)で、愛本刎橋のみ現存していないことから、市議会などから復元を求める声が上がっていた。

 VR映像は構造の特徴を分かりやすく紹介し、木橋自体の美しさ、黒部川扇状地や遠望できる山並みの自然美などを精緻に描き出した。ゴーグルで上下、360度を見渡すことができる。館内で展示する刎橋2分の1模型の橋上にシステムを設置した。

 併せて、インターネット上の仮想空間「メタバース」を活用した愛本刎橋を作り、公開した。分身キャラクター「アバター」となって橋を渡ったり、上下から眺めたりでき、複数人による空間内での交流も可能。NTTグループが協力、プラットホーム「DOOR」で利用できる。

 完成式で武隈市長は「VR技術で加賀藩が誇りとした橋が復活し、この地への注目がさらに高まる。広域からの誘客につなげたい」とあいさつした。

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