宮城県建築士事務所協会/CLTの住宅建築利用拡大へ、屋根材の実証試験24年春開始

宮城県建築士事務所協会(宮城事協、高橋清秋会長)は、一戸建てなど一般住宅建築でのCLT(直交集成板)利用拡大に向けた実証試験に今春着手する。新しい木製品として合材などと比べ認証取得が遅れているCLTだが、試験でCLTパネルの水平接合強度などが基準を満たすかを確かめる。一般的な住宅の屋根を構成する野地板、垂木、母屋、小屋束、火打梁などの組み立て部材をCLT板材1枚のユニットでカバーする想定。実現すれば施工効率化やCLT流通量の拡大につながる。
宮城県の「みやぎCLT普及促進事業補助金」に技術提案し承認を受けた。県産CLTの新製品、技術開発を支援する「CLT活用技術開発支援事業」に認定。CLTなどの新たな需要拡大と価格低減を図る目的がある。屋根や床材としての利用を当面の目標に定め、水平剛性の認定取得(大臣認定機関)を目指す。
今後2回の実証実験を経て東北職業能力開発大学校(宮城県栗原市)と産学共同でモックアップを製作する。学生を交え実際の施工性を確かめる。学生教育の一環として研究成果を還元。学生にCLTや木材に興味を持ってもらう狙いもある。協会員外にも講習会の開催やパンフレット配布などでCLTの普及を図っていく。
実証試験は宮城事協が技術開発、山大(宮城県石巻市)がひき板(ラミナ)などの材料供給、シネジック(宮城県富谷市)が接合ビスの提供をそれぞれ担う。CLTののり付けは西北プライウッド(同石巻市)で施工。材料は県産スギ材を使用する。
第1段階として長さ2・7メートル×幅1・2メートル、厚さ90ミリの材料をハウスプラス住宅保証(仙台市青葉区)で試験。その後試験体の長さを3・6メートルに拡大し、水平方向の強度を確認する。秋ごろには東北職業能力開発大学校で学生を交えて実際の施工を実証。2025年3月までに報告書をまとめ県に提出する。
23年11月に協会員や関係業者で構成するプロジェクトチームを設立。統括を務める大宮利一郎会長代行副会長(楠山設計)は「水平剛性の認定を取得することで住宅の床材などにも利用を拡大できる」と指摘。プロジェクトチーフの東山圭理事・青年部会長(東山設計)は、大規模建築での採用が中心の現状を踏まえ「中小建築にも採用できる現場で使いやすいCLTの開発を目指す」方針だ。

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