ふくよかなシャアに思わず涙…27年前にゲームで実写化『ガンダム0079』の衝撃度

PSソフト『ガンダム0079 THE WAR FOR EARTH』

今もなお新たなシリーズが展開され続けている『機動戦士ガンダム』。Netflixにて今秋、実写版作品『機動戦士ガンダム 復讐のレクイエム』が放送されることが発表され、ファンも盛り上がりを見せている。

しかし、プレイステーションで発売された“とあるゲーム作品”が、今から27年前、一足先に“実写化”を実現していたことをご存じだろうか。その名も『GUNDAM 0079 THE WAR FOR EARTH』だ。まさかの“実写化”でファンを驚愕させた本作に迫ってみよう。

■『GUNDAM 0079 THE WAR FOR EARTH』とは

その凄まじい原作人気から多数のゲーム作品が生み出されてきた『機動戦士ガンダム』だが、そのなかでも数多くの挑戦的な試みでファンを驚愕させたのが、1997年にバンダイ(現:バンダイナムコエンターテインメント)から発売された『GUNDAM 0079 THE WAR FOR EARTH』。もともとは前年にリリースされたPC用ゲームで、それがPS版として移植された。

初代作品である“ファーストガンダム”の世界観をベースに、民間人の主人公がガンダムに搭乗し、連邦とジオンの苛烈な戦いへと身を投じていくことになる。プレイヤーは主人公、アムロ・レイのポジションとなり、ガンダムの世界観を追体験することが可能な作品で、原作でガルマ・ザビが死亡するところまでの流れを軸に、ゲームオリジナルな物語が展開されていく。

これだけ聞くと一般的な「ガンダムのゲーム作品」といった印象なのだが、本作は挑戦的な試みで原作ファンはもちろん、手に取ったプレイヤーたちを大いに驚愕させた。それはなんと、作中に登場する『機動戦士ガンダム』の登場人物たちを海外の俳優たちが演じるという「実写パート」で物語が進行していくのだ。

PS全盛期の時代にアニメ作品の“実写化”を試みただけでも驚きなのだが、やはり一筋縄ではいかなかったようで、なかなか賛否両論が飛び交う一作となっている。

■まさかの“実写”にファンも困惑…!?

本作はゲームのプレイ画面をCGで表現しつつも、その合間に繰り広げられるストーリーシーンはすべて“実写”で表現されている。海外の俳優たちがそれぞれのキャラクターを演じ、原作の『機動戦士ガンダム』ではおなじみのやり取りが繰り広げられていくのだ。

主人公はオリジナルキャラであるためアムロ・レイは登場しないが、艦長であるブライト・ノアや、カイ・シデン、リュウ・ホセイといったお馴染みの面々は健在。……だが、どうしても気になってしまうのは各キャラクターの“配役”についてだろう。

このゲームでは、原作のキャラクターイメージとは大きくかけ離れた外見の俳優が多く起用されているのだ。リュウが「大柄なスキンヘッドの黒人」だったり、カイが「ポニーテールの小柄な日系人」だったりと、かなり大胆にイメージチェンジされたキャラクターが少なくない。

味方側はもちろん、敵となるジオンサイドの登場人物にもこの唐突な“イメチェン”が見られ、ガルマ・ザビが「オールバックの白人青年」になっていたりと、原作を知れば知るほどに首を傾げてしまう配役となっている。

そして極めつけが、『機動戦士ガンダム』という作品を象徴する人気キャラクター、シャア・アズナブルの配役だ。

原作人気も高い、“赤い彗星”の異名を持つ強敵のシャア。本作では、頭部を覆う仮面こそ再現されているものの、ふくよかな体系と少し割れた独特の“あご”が特徴的な中年男性になってしまっているのだ。そのなんともオリジナリティ溢れる姿から、本作をプレイしたファンの間では「ケツアゴシャア」なる異名を与えられ、いじられる対象となってしまっている。

これ以外にも、女性陣がほぼオリジナルキャラに差し替えられていたりと、原作に比べてかなり大胆な改変が多く見られるのだが、一方でキャラクターの吹き替えは原作と同じ声優が担当しており、お馴染みの名台詞などもしっかりと飛び出す。

人気キャラクターの多いシリーズだが、その思い切った配役の数々に当時のファンは衝撃を受けたはずだ。

■“戦場”さながらの気を抜けないアドベンチャーパート

“実写化”だけでもインパクト大な本作だが、肝心の“ゲームシステム”もなかなかの曲者だ。

『機動戦士ガンダム』のゲーム作品といえば、モビルスーツを操って敵を撃破していく「アクションゲーム」が多いが、本作は原作シナリオを追体験することに重きを置いたためか、いくつかの選択肢から正解を選び取っていく「アドベンチャーゲーム」というジャンルとなっている。

具体的にはガンダムに乗った主人公が、その時々で4方向への「移動」と「攻撃」「防御」「操作」のどれかを選択し、ステージを進んでいく。さらに「攻撃」には「ビームサーベル」「格闘」「頭部バルカン砲」「ビームライフル」「ハイパーバズーカ」の5種類が用意されており、場面に応じて適した武装を選ばなくてはいけない。

選択肢自体にはそこまで違和感を抱かないかもしれないが、問題なのはその“難易度”だ。実は本作、間違った選択肢を選ぶとほぼほぼ「即死」してしまうため、常にこの膨大な選択肢のなかから正解を引き当て続けなければならない。

しかも、そのほとんどがノーヒントであるため、プレイヤーは実際にゲームをプレイし、何度も失敗しては同じシーンを繰り返すことで、徐々に正解の選択肢を掴み取るほかないのである。

このため、「アドベンチャーゲーム」としても、本作は屈指の高難易度を誇る一作としても有名になってしまっているのだ。ある意味でこれも、一手のミスで命を落とす“戦場”のリアルさを表現しているのかもしれない。

海外のキャストを使った“実写化”や超高難易度のアドベンチャーなど、“ガンダムゲーム”のなかでもなかなか挑戦的な一作となった『GUNDAM 0079 THE WAR FOR EARTH』。

だが、一方で裏設定も活用したオリジナルシナリオなど、本作ならではの表現が随所に登場している。攻めに攻めたその内容は、今こそ再確認するべきなのかもしれない。

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