【規制改革推進会議WG】スイッチOTC促進議論/令和8年末までOTC化目指す成分リスト公開

【2024.03.29配信】内閣府規制改革推進会議「健康・医療・介護ワーキング・グループ」(WG)が3月28日に開かれ、スイッチOTCの促進について議論された。

厚労省、PMDAと日本OTC医薬品協会による「スイッチOTCワーキンググループ」を新設

厚労省はWGの中で、昨年12月の「規制改革推進に関する中間答申」に掲げられた目標を達成していくための検討を進めていく方針を説明した。

具体的な目標は、海外2カ国以上でスイッチOTC化されている医薬品(令和6年末までに申請されたもの)については原則、令和8年末までに日本でもOTC化することを目指す。そのほか、①「医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議」への要望書の提出時点から総期間1年以内に検討結果を取りまとめる、②承認申請から承認の可否を判断するまでの総期間1年以内とするーーなどとする。
企業から申請があって評価検討会議を開催する場合は、併行して進行することも可能として、①と②の合計で1年を目指すことも可能とした。

具体的に該当するスイッチ候補成分としては合計58成分あるとして、成分リストを公開した。

リストのうち、特に日本未承認の赤字の成分を中心に進める方針が示された

そのほか、厚労省はPMDA、日本OTC医薬品協会を交えた「スイッチOTCワーキンググループ」を新設したことも明かした。ここでは評価検討会議及び薬事・食品衛生審議会要指導・一般用医薬品部会の不定期だった開催を年4回定例とすることを含め、スイッチOTCの申請から承認可否判断までの目標タイムライン案を検討しているという。
そのほか、スイッチOTCの審査に必要となる申請資料の内容の見直しや審査の論点とそれに必要な資料がわかるようなガイダンスの作成を目指しているとした。また、企業のスイッチOTC開発状況を把握するため、申請予定品目調査の実施を検討しているという。

日本パブリックアフェアーズ協会「処方薬として扱うべき医薬品を定義し、それ以外の医薬品を原則としてOTC化(処方薬のポジティブリスト化)することを要件とすべき」

厚労省としてもかなり踏み込んだ対応を急ピッチで進めている状況が示されたが、それでもWGではさらに踏み込んだ対応への要望が出た。

スイッチOTCの促進策をプレゼンした日本パブリックアフェアーズ協会は、審査・承認に要する期間は1年より短い期間として設定すべきと提案。例えば、英国と同様の6カ程度を提案した。
審査プロセスの合理化としては、企業による申請の場合、企業による申請以外の場合いずれも、評価検討会議を不要とするべきで、有識者会議は薬食審に集約すべきと提案した。
審査要件の合理化・適正化 については、評価検討会議においては、これまでスイッチOTC化に反対する意見として、例えば、販売体制(プライバシー確保)や環境(性教育の遅れ)についての意見が出されたことがあるなど、申請企業にとってどのような審査要件を満たせばよいか予見可能性が極めて低い状況にあると指摘。その上で、そもそも薬食審がスイッチOTC化を審議するに当たって、審査要件は必ずしも明文化されていないとし、審査要件を客観的かつ具体的に明確化することが必要と提言した。具体的には海外の事例などを出し、処方薬として扱うべき医薬品を定義し、それ以外の医薬品を原則としてOTC化(処方薬のポジティブリスト化)することを要件とすべきとした。
加えて、評価検討会議における課題点の整理・対応策の検討は、個別医薬品における使用者の適正使用の観点のみの議論としてはどうかとした。
審査・審議を行う有識者会議の委員構成の適正化についても触れ、スイッチOTC化の審議を行う構成は、利益相反関係に留意しつつ、審査要件を科学的(薬学的など)かつ中立的に審議できるメンバー構成にしてはどうかと提案した。

OTC薬協、今後の課題として「医師の管理下」の医薬品スイッチ

日本パブリックアフェアーズ協会のプレゼンを受け、日本OTC医薬品協会理事長の磯部総一郎氏は、種々の提案のほか、昨年12月の「規制改革推進に関する中間答申」の内容に謝意を示した。
その上でOTC薬協としては、中間答申を適切に処理してほしいと要望したほか、会議の運営上の課題などは現状でもあるとしつつも、その解決に向けては厚労省が新設した「スイッチOTCワーキンググループ」での議論も通しながら課題を整理したいとの考えを示した。
一方、今後の課題としてが評価検討会議の中間取りまとめにおいて、賛否両論とされているものとして、「医師の管理下での処方で長期間状態が安定しており対処方法が確定していて自己による服薬管理が可能な医薬品」があると指摘。このカテゴリーの医薬品に関しても前向きに検討してほしいとした。具体的には生活習慣病などの慢性疾患、またそれをきちんと管理をするための穿刺血を用いた検査薬のOTC化なども一緒に検討してほしいとした。

専門委員からも、日本パブリックアフェアーズ協会のプレゼン内容と同様の指摘が相次いだ。

大石佳能子専門委員は、「これを満たせばスイッチOTCが出せるんだということがはっきりと関係するすべての人に分かることが大事」と指摘し要件の明確化を求めた。また評価検討会議の内容については、「一製薬会社があまり解決できないことなどもお話が出てきたり、それを議論する議員の方々が利益相反ということを疑われるような方がいたりという、いろんな不都合が明らかにあるにもかかわらず、これから検討するというのは遅いと思う」と指摘した。

桜井なおみ専門委員は、「PMDAの方で評価されていれば評価検討会議というものをわざわざ通さなくてもいいのではないか。薬食審の方でもやっていけばいいかなと思う。その辺りのシステムを変えることでスピードアップ化ということを検討されるということはないのか」と疑問を投げかけた。また評価検討会議がどう安全に使ってもらうかを検討する場であるとしても、「その渡し方の議論が科学的ではないと思った。また今まで使ってきた実績があると思うのでそれを活かした形で議論をしていけばいいのではないか」と指摘した。

伊藤由希子専門委員は、目標が達成できなかった時はどうするのかの考えを厚労省に尋ねた。伊藤氏は「過去に進まなかった歴史がある。これまでダメだった知見はあると思う」とした。座長も進捗管理と対応策の検討を求めた。

佐々木淳専門委員は、「新薬は世に初めて出るのでその承認には多くのプロセスが必要なのはよく分かるが、OTC薬はすでに10年以上、市場で使われて、安全性と有効性があり、海外ではドクターが必ずしも関与しなくても安全に使えると実際にそういう風に使っている国もありますねと、そういう成分がたくさんあって、それをまた薬食審があって評価検討会議があってPMDAがあって、3つのプロセスを丁寧に通さなければいけないということが理解できない。前回も厚労省さんの説明を聞いたが、やっぱり理解できない。評価検討会は本当に必要なのか。これがないとOTC医薬品の安全性と有効性、OTCとして出していいかどうかの判断はできないのか。それなら薬食審は何のために存在するのか」と指摘した。

間下直晃委員は、スイッチOTC化の要件について、「海外では割と決まってるというところもあるようだが、日本はどこまで出来ていてるのか。どうしても裁量が多すぎてしまって、例えば検討会議のメンバーで変わってしまうとか、そういったことも出てくるように感じている。審査基準等は具体的に決めるということが原則論だと思う。なるべくしっかり決めていくことによって、より無駄な議論も少なくできると思う」との考えを示した。

印南一路専門委員は、「企業からの申請を待って、ではなく、医療用医薬品であって長年使われて有効性・安全性が確認されるもののうち、OTC化しても構わないものをリストアップするのが本当の役割ではないかと思う」との考えを示した。その上で、構成員について、「少なくとも保険者とか労働組合の代表とか、単に消費者、患者団体から1人、2人入れるのではなく、専門家の方はもう少し減らして、必要に応じて参考人として意見を言っていただければいい。中医協を参考にすれば公益委員みたいな人たちの比率をもっと増やして、患者団体や保険者や労働組合の方の意見も聴いて議論をスタートさせるべきではないか」と述べた。

OTC薬協の磯部理事長も、「関係する医学関係の学会であったり医会の代表者が入っておられると、医師が処方しなくても良いものを選ぶということに(スイッチの議論は)なってくるので、どうしても医師の立場では非常に抵抗感がある問題になってくる。多くの場合はどうしても反対の意見が多くなり、安全性の問題だとかちゃんと薬剤師が使えるのかというそういうようなことで意見が出てきて、結果的に非常に論点が広がってしまう。それが結局、審査の期間の方にも影響してしまう。どのように改善していくのか、運用の改善も含めて医薬品審査管理課といろんなコミュニケーションをとっているので、単純に右か左かということだけではなく考えていければ」と述べた。また、印南専門委員の意見に対しては「賛成」とし、「評価検討会議がいいのかどうかは議論があると思うが。日本はOECDの中で見ても世界トップクラスで外来の受診頻度になっていることもあるので、どうやって良い方向にもっていくのかという大きな視点もどこの場でどういうふうに議論していくるのか、重要な視点だろうなというふうに思っている」とした。

こうしたWGでの指摘に対して厚労省は、評価検討会議についてはスイッチ化の課題と対策を議論する場であり、スイッチ化を促進するためにも必要との考えを示した。
評価検討会議の構成員については専門家も含めて議論することには意味があるとの考えとともに、一部の意見だけでなく意見は多数意見であったかどうかなども検討会議で整理されると説明した。
審査要件の明文化についても、中間とりまとめで要件を設定していることを説明した。

いずれにしても中間答申からまだわずか4カ月しか経っていない中、厚労省でも急ピッチで対応している状況を説明。個別製品の議論も併行して進めており、例えばPPIについては過去の検討会議では否決となったものが、今回は賛成の意見が多く、パブコメのステップに移ることなども紹介した。
厚労省としては、規制改革推進会議WGの指摘・要望も受け止め、検討を進めたい考えだ。

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