初代『ゴーストバスターズ』はベンチャー企業コメディだった? 最新作『フローズン・サマー』は春休みに観たい「学校の怪談」的エンタメ大作

『ゴーストバスターズ/フローズン・サマー』

2024年3月29日(金)公開の『ゴーストバスターズ/フローズン・サマー』は、お化け退治の専門家<ゴーストバスターズ>の活躍を描くヒット・シリーズの最新作です。1作目の公開は1984年ですから、40年も続いているわけですね。

ホラーコメディの金字塔『ゴーストバスターズ』の魅力

ここで今までの流れについてざっと触れておきましょう。ニューヨークに住む超常現象の専門家で科学者でもあるピーター・ヴェンクマン博士(ビル・マーレイ)、レイモンド・スタンツ博士(ダン・エイクロイド)、イゴン・スペングラー博士(ハロルド・ライミス)は“研究の成果が出ていない”と大学をクビになります。そこで3人は起業。それはゴースト=幽霊やお化けたちを駆除するサービス<ゴーストバスターズ>でした。

おりしもNYではお化けたちが同時多発的に出現、大騒ぎを起こしていました。なのでこのビジネスは大当たり。メンバーには受付嬢のジャニーンや新人のウィンストン・ゼドモアも加わり、5人で日々ゴースト騒動に対処していました。そんな彼らの前に強敵が現れます。過去に何度も人間界を破壊してきた邪神ゴーザが復活したのです。

ゴーザは攻撃を仕掛ける前に、対峙する人間たちの想像した物の姿に形を変えるという習性があります。スタンツ博士は、一番“害のない物”の姿を思い浮かべればゴーザがそれに変身すると考え、マシュマロお菓子のマスコット・キャラクター<ステイパフト・マシュマロマン>を思い浮かべます。結果、ゴーザは30mの巨大なマシュマロマンとなってゴーストバスターズに襲いかかりますが、なんとか撃退。NYに平和が訪れます。

続く1989年の『ゴーストバスターズ2』では、大魔王と恐れられたヴィーゴ大公と戦います。この時ゴーストバスターズは不思議なスライム(ねばねば物質)を使って、なんと自由の女神像を動かしNYの危機を乗り越えるのでした。

ざっと振り返る新旧『ゴーストバスターズ』ヒストリー

ここで一旦、ゴーストバスターズの映画はストップします。2016年に主要キャストをすべて女性が演じた『ゴーストバスターズ』が作られます。そして2021年に『ゴーストバスターズ/アフター・ライフ』が公開。この2016年版は1984年版/1989年版とつながらない完全リメイク作ですが、2021年版は初代2作からの続きなのです。つまり32年ぶりに作られた続編だったわけです。

その『アフター・ライフ』では、故人となったスペンクラー博士の娘でシングルマザーとなったキャリーが子供たち(息子のトレヴァー、娘のフィービー)を引き連れてオクラホマ州に引っ越すところから始まります。おりしもこの田舎町は不思議な地震騒動が続いていました。科学オタクでもありちょっと変わり者のフィービーは自分の祖父が、かつてNYでゴーストバスターズであったことを知ります。そして一連の地震騒動は、ゴーストバスターズの宿敵ともいうべきゴーザの再復活と関係があったのです。

祖父の残したゴーストバスターズの装備を使って、ゴーザに立ち向かうフィービーたち。そこに、引退していたヴェンクマン博士たちや霊体となったスペンクラー博士も駆けつけます。こうしてフィービーたちは、またしてもゴーザの危機から世界を救うのです。

――というのが、これまでの流れ。前2作でスペンクラー博士を演じていたハロルド・ライミスが故人となったため、劇中でもスペンクラーが亡くなっているという設定になっています。

NY帰還の『フローズン・サマー』は過去シリーズと何が違う?

最新作『ゴーストバスターズ/フローズン・サマー』は、フィービー(マッケナ・グレイス)、トレヴァー(フィン・ウォルフハード)、キャリー、そしてキャリーの新しいパートナーでフィービーたちの教師だったゲイリー、さらに兄妹の友達で前回の騒動に巻き込まれたラッキーやポッドキャストらがNYに移り住み、ゴーストバスターズとしての活動を再開している、というところから始まります。

このゴーストバスターズは旧ゴーストバスターズのメンバーであり、いまでは成功した資産家となったウィンストンのバックアップをうけています。受付嬢だったジャニーンも新ゴーストバスターズをサポート。さらにヴェンクマン博士は研究を続け、スタンツ博士は怪しげなオカルト書店を経営しています(いまだにマシュマロマンに憑りつかれている)。

一方、現在のNY市長ペッグは、役人だった1984年の時にヴェンクマン博士たちに恥をかかされて以来、ゴーストバスターズのことを恨んでいます。こうした状況の中、20世紀の初頭にNYに恐怖の現象を巻き起こした、暗黒神ガラッカが復活。ガラッカは恐怖の冷気を使う恐ろしい相手です。

前作『アフター・ライフ』も楽しい作品でしたが、やはりゴーストバスターズはNYにいるお化け退治という設定が秀逸。なので今回はホームタウンであるNYに戻ってきてくれたことが嬉しい。ただ初期2作との一番大きな違いは、主人公がフィービーだということです。

初代『ゴーストバスターズ』は大人向け“ビジネス・コメディ”だった?

もともと『ゴーストバスターズ』というのは、3人の科学者のかけあいが面白いのです。彼らは呪文とか魔法とかオカルト的な方法でゴーストたちを排除する訳ではない。幽霊たちを一種のエネルギー体とみなし、そのエネルギーを中和させることで閉じ込める/排除するという科学的な方法で立ち向かいます。こういうマニアックな設定や会話がおかしいし、見方をちょっと変えれば、奇妙なベンチャー企業の立ち上げを描くドタバタ劇でした。要は大人向けのビジネス・コメディだったのです。

それに対して『アフター・ライフ』『フローズン・サマー』は、ファミリーがテーマになっています(昨今のハリウッド映画の主流ですね)。特に今回は悩めるフィービーのやらかしが大騒動を巻き起こします。日本でいうと「学校の怪談」みたいなお話を、ティーンエージャーを主役に据えた感じと言えばいいでしょうか?

そして最新作でも相変わらず、登場するゴーストたちが愛らしい。僕の好きなレギュラーメンバー(?)のスライマー=緑色の大食いお化けも大活躍です。

また、記念すべき第一号ゴーストである“図書館の女性”が40年の時を経て復活。新お化けでは、ポゼッサーが笑わせてくれます。姿・形がないのにキャラが立っています(笑)。そんな『フローズン・サマー』は、春休みに楽しむのにピッタリのエンターテインメントです。

なお1作目の『ゴーストバスターズ』は、日本では12月公開。要は冬休み映画だったんですが、この時『グレムリン』と『ゴジラ(1984)』 が公開され、興行界では<3G決戦>と言われていたのです。『ゴジラ-1.0』のアカデミー賞で沸き、もうすぐ『ゴジラ×コング 新たなる帝国』の公開が迫るゴジラ・ブームの中、『ゴーストバスターズ』の新作が封切られるというのも何かの縁ですね。

文:杉山すぴ豊

『ゴーストバスターズ/フローズン・サマー』は2024年3月29日(金)より全国公開

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