ボン・バス、住民の生活支え25年 西広島駅と住宅地結ぶ 4月1日に節目、地域高齢化や運転手不足課題

JR西広島駅と住宅地を結ぶボン・バス。沿線住民の生活には不可欠な存在だ(

 広島電鉄(広島市中区)の子会社エイチ・ディー西広島(西区)が運行するボン・バスが4月1日、1999年の運行開始から25年を迎える。収支が厳しい路線を規制緩和に合わせて分社化し、コストを抑えて路線網を広げてきた。地域の高齢化や運転手不足の課題を抱えながら、住民の生活を支え続けている。

 ボン・バスは主に西広島駅と郊外の住宅地を結ぶ支線のようなルートを走る。当初は西広島駅と大迫団地、広電己斐団地、共立ハイツを結ぶ3路線。広電では採算が厳しく、分社化による人件費の抑制や車両の小型化でコストを引き下げた。

 狭いエリアを走るフィーダーバスやコミュニティーバスは自治体が管理運営している場合が少なくない。一方、エイチ・ディー西広島は新型コロナウイルス禍で一時的に赤字になっただけだ。砂古智之常務は「コストを抑えたことに加え、広島都心部に近い大きな団地が営業エリアにあることが大きい」と説明する。

 路線数は、周辺の宅地開発に合わせて高須台などにも乗り入れ、2004年に6路線になった。02年と03年には一部路線を市中心部の紙屋町地区と八丁堀地区に延伸。乗客数は06年度に255万6千人を超えた。その後は団地の高齢化で通勤・通学客が減り、下降線をたどった。

 転機となったのが、大型商業施設ジ・アウトレット広島(佐伯区)の18年4月の開業だ。乗り入れを始めた18年度は、全体の乗客数が最多の268万1千人に達し、19年度も264万人を超えた。コロナ禍で大きく減ったが、21年7月から広島県運転免許センター(同)にも乗り入れ客層の拡大に期待を寄せる。

 ただ、運転手不足は深刻だ。43人の小所帯ながら「常に数人は足りない」(砂古常務)。昨年5月には日中を中心に15便減らした。今年3月30日にも平日で8便、土日祝日で13~14便減らす。己斐上の主婦(85)は「昼間は2時間に1本しかない。荷物が増えるとタクシーを使わざるを得ない」と漏らす。

 支援の動きもある。沿線の広島学院中・高の美術部がデザインしたラッピングバス2台が3月下旬、市中心部にも乗り入れる路線で走り始めた。車体後部の全面を使って運転手募集を訴える。

 古本靖幸社長は「ボン・バスの減便で住民が不便を強いられているのは事実。運転手さえ確保できれば便数を戻したい」と力を込める。地域の暮らしを守るため、小さなバス会社は大きな使命を背負っている。

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