【社説】プロ野球開幕 マツスタ15年、優勝で飾ろう

 プロ野球はきょうセ、パ両リーグで開幕する。広島東洋カープはDeNAと横浜スタジアムで開幕カードを戦う。

 来月2日に地元初戦を控える本拠地マツダスタジアムは、開場15年を迎える。チームも広島の街も変えた「夢の器」である。その節目のシーズンを、6年ぶりのリーグ制覇で飾ってもらいたい。

 マツダスタジアムの原点は、今から20年前に起きた球界再編騒動にあるといえるだろう。資金力の豊かな球団主導の1リーグ構想を巡り、カープは存続の危機に立たされた。カープを守るためファンや市民は「平成のたる募金」で新球場建設の機運を高めた。

 官民が力を合わせ整備したマツダスタジアムは2009年4月、JR広島駅の東に開場。総天然芝の内外野の美しさは今も球界一だ。多様な席種も魅力の一つで、リーグ最多の車いす席は「誰もが楽しめる場に」との考えの象徴である。スタンドは真っ赤に染まり、ファンが勝利を後押しする好循環が生まれた。

 主力選手が出て行くばかりだったチームに米大リーグから黒田博樹さん、阪神から新井貴浩監督が戻ってきた。16年からの3連覇はマツダスタジアム抜きに語れまい。

 スタジアムが新たな人の流れを生み出し、足踏みの続いていた広島駅周辺の再開発を動かした。来春には新しい広島駅ビルも完成する。カープが広島にある意味や、プロスポーツの価値に改めて思いを寄せたい。

 広島市中心部に先月、もう一つの「夢の器」が誕生した。J1サンフレッチェ広島の新本拠地エディオンピースウイング広島である。「まちなかスタジアム」らしく、試合の日には、観戦の余韻に包まれたまま繁華街へ繰り出す動きが見える。にぎわいづくりでもチーム成績でも、相乗効果を期待したい。

 カープ2軍では岩国市由宇町にある本拠地の由宇球場に加え、新しい練習拠点が廿日市市大野の「ちゅーピーパーク」に29年完成を目指し整備される。サンフレの練習拠点、安芸高田市サッカー公園を含めれば広島広域都市圏と重なる面的な広がりを持つ。

 広島県は人口の流出超過に歯止めがかからない。二つのスタジアムが持つ集客力を、エリアの魅力向上やサービス業を軸とした新たなビジネスにつなげる一層の努力と仕掛けが官民に求められよう。

 カープは昨季2位に躍進し5年ぶりにクライマックスシリーズ(CS)へ進出した。新型コロナウイルス禍を乗り越え、ジェット風船など、おなじみの応援風景も戻ってきた。西川龍馬選手がフリーエージェント(FA)移籍した穴を埋めて余りある若手の台頭が優勝争いの条件となる。

 勝ちを追い求めながら選手を伸ばしていく―。そんなカープらしさの発揮がより求められるシーズンとなる。個々の力を引き出し、家族のようにまとめる。そんな新井監督の采配に注目である。

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