【コラム・天風録】明かりと人権

 「1字違いで大違い」の類いは英語にもある。例えば、明かりや光を表すlight。頭文字のエルがアールに変わればright。権利や右を意味する言葉になる▲ただ片仮名では、どちらもライト。そのせいか、権利と明かりのイメージには重なるものもある。格差や分断の巣くう社会、海外でやまない戦火…。出口の見えない暗闇でもがく身にすれば、手の届かぬところにある人権は、まぶしく映っていよう▲心に希望の灯をともす判決だろう。最高裁が初の判断を今週示した。国の犯罪被害給付制度に基づく給付金は、同性カップルでも支給対象になり得る―。札幌高裁も先ごろ、民法や戸籍法の同性婚を認めぬ規定は憲法違反と踏み込んだ▲札幌の原告が思いの丈を書きつづった陳述書が手元にある。〈私たち同性カップルの人権は、まるで点(つ)いたり消えたりする灯のようなものだと思いました〉。黙殺された状態が続き、よほど生きづらかったに違いない▲点滅から青信号へと、新しい時代風景を創っていかねばなるまい。多様な性の在り方に見て見ぬふりをする思考停止は、これ以上許されない。誰にとっても、人権の灯は明々と、ともる方がいいのだから。

© 株式会社中国新聞社