毎戦ピット作業トラブルに見舞われるキック・ザウバーF1、根本的な解決策が日本GPに間に合わない可能性

 キック・ザウバーのトラックサイドエンジニアリング責任者セビ・プホラルは、頻発しているピットストップ時のトラブルに関して本格的な解決策が導入されるのは5月以降になる可能性があると示唆している。問題とされているC44用の新しいホイールナットの製造には非常に長い時間がかかり、日本GPと中国GPには間に合わないものとみられるからだ。

 オーストラリアGP決勝序盤、バルテリ・ボッタスはハース2台の前、フェルナンド・アロンソ(アストンマーティン)の後ろを走っていた。マグヌッセンのアンダーカットを防ぐために早めにピットイン。メカニックたちはホイールガンとホイールナットを完璧に合わせるために最大限の注意を払っていた。ところが、左フロントのホイールナットが斜めに噛んでしまう問題が発生。ボッタスは約30秒を失い、ポイント獲得のチャンスを逃した。

 その後、周冠宇もピットで約20秒を失ったが、それについてはホイールナットの問題は関係なかったという。プホラルは「その時、ギヤボックスの小さな問題に対処しており、それが原因でエンジンがストールした。つまりタイヤ交換に関しては何も問題なかった」と述べている。

 オーストラリア決勝で行った4回のタイヤ交換のうち、唯一のホイールナットの問題が、9番手を狙って走っていたボッタスに起きた。それによって貴重なポイントを逃したボッタスは、レース後、「この問題が解決されない限り、どれほど優れたマシンがあっても、どれほど良いドライビングをしても関係ない」とフラストレーションを示した。

2024年F1第3戦オーストラリアGP バルテリ・ボッタス(キック・ザウバー)とケビン・マグヌッセン(ハース)

 ピット作業のトラブルは序盤3戦で連続して起き、バーレーンではボッタス、サウジアラビアでは周冠宇が問題に見舞われた。さらにオーストラリアでは、ザウバーが抱えている問題とは無関係ではあるが、作業中のミスでチームは5,000ユーロ(約80万円)の罰金を科された。ボッタスのピットストップ中に、ホイールナットがファストレーンに転がり落ちたため「潜在的に危険な状態を引き起こした」とみなされたためだった。

 ホイールナットの問題について、プホラルは、次のように説明した。

「開幕戦から、ピットストップ時に問題に直面した。ホイールナットが斜めに噛んでしまうトラブルが起きたのだ。フリープラクティスやプレシーズンにはこの問題は見つからなかったが、レースに入るたびに問題が深刻になる。オーストラリアではいくつか小さな修正を行ったが、十分強固な策ではないため、メルボルンでもピットストップの問題が1回起きてしまった」

 チームは、できるだけ早く問題を解決することを目指しているが、根本的な解決が図れるようになるまでには、ある程度の時間がかかるものとみられる。

 すでに新しい設計が承認され、新たなホイールナットの製造プロセスがスタートしている。ライバルチームと同様に、ウイリアムズのホイールナットは外部のサプライヤーが製造する。新しいフロントハブもそうだが、製造に必要な加工プロセスには非常に時間がかかる。彼らが使えるようになるまでに4週間かかる可能性があり、導入は早くて第6戦マイアミGP、現実的には第7戦エミリア・ロマーニャGPになるかもしれない。そのためザウバーは、次の日本GPでは現状のなかで問題に対処する方法を見つけ出すことに集中しているようだ。

2024年F1第3戦オーストラリアGP 周冠宇(キック・ザウバー)のピットストップ

 プホラルは、昨年の部品に戻ることは不可能であると説明した。

「2024年型フロントサスペンションは完全に変更されており、昨年のパーツはそのサスペンションでは使用することができないからだ。そのため、昨年のマシンに搭載していたものは今季型シャシーにフィットしない」

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