【名医が教える腸活】「ご長寿地域の高齢者」に多い腸内細菌…「酪酸菌」を増やす“医師おすすめの食材”

(※写真はイメージです/PIXTA)

健康や寿命を左右するのはズバリ「腸」…そう断言するのは、腸の名医・江田証氏。腸内環境は一人ひとり異なりますが、すべての人に共通する「長生きのための腸内細菌(=ご長寿菌)」もあり、これらを増やすことが健康長寿のカギになるといいます。本連載では、江田氏の著書『60歳で腸は変わる 長生きのための新しい腸活』(新星出版社)より一部を抜粋し、ご長寿菌の具体例や活用方法を紹介します。今回取り上げるのは「酪酸菌」。酪酸菌の効果や、酪酸菌を増やすための「食べ物」を見ていきましょう。

“病気になる人・ならない人”の分かれ目は「酪酸菌」にあった

酪酸菌は水溶性食物繊維(穀類・海藻・野菜など)をエサとして自らが発酵し、代謝物として酪酸を生み出す菌のこと。酪酸とは「短鎖脂肪酸」の一つです。短鎖脂肪酸は主に「酪酸(ほとんどが腸の上皮細胞のエネルギーとして使われる)」「酢酸(強力な抗菌作用で、有害な菌が増えづらい環境をつくる)」「プロピオン酸(ビフィズス菌を増やす)」の3つで、さまざまな健康効果をもたらすことがわかっています。

[図表1]酪酸菌
イラスト:佐々木恵子
出所:江田証著『60歳で腸は変わる 長生きのための新しい腸活』(新星出版社)

実際に、酪酸菌がいかにすごいか、例を挙げてみましょう。「長寿の町」として知られる京都の京丹後市内には、100歳以上の高齢者が全国平均の約3.1倍もいます。ここに住む高齢者を対象に腸内環境を調査したところ、ほかの地域の高齢者と比べて腸内に酪酸菌を格段に多く持っていることがわかりました。

同じ京都府内で、京丹後市と京都市の都市部に住む高齢者の、腸内フローラと健康状態を比較したところ、酪酸菌の重要性を裏付ける結果が出ました。京丹後市内に住む高齢者のほうが血管年齢が若く、大腸がんや糖尿病、認知症などの患者数が少ないことが判明したのです。つまり、病気になる人とならない人の分かれ目は、酪酸菌にあったのです。

これは何も京丹後市の人に限ったことではなく、鹿児島県・奄美群島の徳之島や、沖縄県・南大東島などの長寿地域の人の腸の中にも酪酸菌が多いことが報告されています。

また、年齢を重ねると、どうしても筋力が衰え、歩くスピードが遅くなりがちで、サルコペニア(筋肉減少症)になりやすいのですが、京丹後市の高齢者にはサルコペニア患者がとても少ないことが判明しました。

酪酸菌を増やすために、「豆類」や「海藻類」を食べよう

酪酸菌については、菌そのものを含む食材があまり多くありません。そこで、酪酸菌のエサになる食物繊維、とりわけ大好物の水溶性食物繊維が豊富な食べ物を積極的に摂りましょう。

酪酸菌の栄養源となり、増殖を助ける食材には、豆類、穀類、果物、野菜(特に根菜)、海藻類などがあります。これらが酪酸菌を活性化させることで、菌の代謝物である酪酸が増え、腸から体を健康にしてくれます。事実、長寿の町としてご紹介した京丹後市や徳之島、沖縄の長寿地域の方々は、ワカメやノリ、モズクといった海藻類や、大豆やアズキ、エンドウ豆といった豆類、カボチャやダイコンといった根菜をよく食べています。また、水溶性食物繊維には、胃や腸で水分を吸収して大きくふくらみ、便通を促進する効果もあるので、便秘に悩む方には特におすすめです。

[図表2]酪酸菌を増やす食材 出所:江田証著『60歳で腸は変わる 長生きのための新しい腸活』(新星出版社)

江田 証
江田クリニック院長、医学博士
毎日、全国から来院する患者さんを胃内視鏡、大腸内視鏡で診察し、おなかの不調を改善することに生きがいを感じている消化器病専門医。愛する故郷の人々をたくさん胃がんで失ったことから医師を志す。1人でも多くの胃腸の不調で悩む日本人を救っていくことがミッション。『世界一受けたい授業』(日本テレビ系列)などテレビ、ラジオ出演多数。『腸を治す食事術』(新星出版社)など著作の累計出版部数は90万部を超え、中国、韓国、台湾などで6冊の本が翻訳・出版されている。

© 株式会社幻冬舎ゴールドオンライン