北村一輝&明日海りお、名作ミュージカルで初共演 “見せ方”の情報交換で助け合い

(左から)明日海りお、北村一輝 クランクイン! 写真:高野広美

幅広い年代に愛され続ける不朽の名作ブロードウェイミュージカル『王様と私』が、“王様”役に北村一輝、“アンナ”役に明日海りおと豪華な顔合わせで上演。稽古開始前のタイミングで2人に話を聞くと、まだ初対面から数日にも関わらず、お互いの人柄が表れた、和気あいあいとしたインタビューが繰り広げられた。

◆初対面から数日で心を開いて和気あいあい

1951年にブロードウェイにて初演され、『オクラホマ!』『回転木馬』『南太平洋』『サウンド・オブ・ミュージック』などで知られる作詞・作曲の名コンビ、リチャード・ロジャース&オスカー・ハマースタイン二世の代表作としても名高い本作。1956年にはブロードウェイ公演で王様を務めた名優ユル・ブリンナーが同役に扮した映画版も公開。2015年ニューヨークでリバイバル上演された、王様:渡辺謙、アンナ:ケリー・オハラのコンビによる公演も好評を博した。

日本では、ミュージカル黎明期であった1965年に東宝が日本初演を製作して以来、当代の名優たちによって演じ継がれている本作(1965年日本初演 王様:市川染五郎※現 二代目松本白鸚 アンナ:越路吹雪)。今回、欧米の列強の干渉から国を守り、独立自尊と発展を目指す王様役には、圧倒的な存在感、色気とチャーミングな魅力、情熱あふれる演技力を併せ持ちミュージカル初出演となる北村、同じく主演のアンナ役には、元宝塚歌劇団花組トップスターで、退団後も力強い歌声と華麗な表現力で主演舞台が続く中、テレビほか映像にも活躍の場を広げる明日海が登板。上演発表以来大きな注目を集めている。

――名作ミュージカルへのご出演。オファーをお聞きになった時はどんな印象でしたか?

北村:抵抗しました。無理ですと。ミュージカルをやられていて主演をやりたい方は大勢いる中で、自分が“歌”という部分で本当に応えられるだろうか、やりたい気持ちもあるけれどやっちゃいけないと思っている部分もありまして。かなり時間をかけて、「いけるかな?」と覚悟を決めるまで話し合いました。

お返事するまでには誰にも言わずこそっと1人でカラオケに行き、YouTubeでいろんな人の『王様と私』の映像を観て「これ出るかな?」とそのキーで歌ってみたり。畑違いの人間でもミュージカルの世界に入ってやってみたら、何かのきっかけになったりするのかな?と思ったり、じっくり考えて総合的に決めました。

どういうふうに稽古が始まっていくかもわかりませんし、未知の世界です。わからないのなら、思いっきりやってやれ!という気持ちですね。

明日海:ミュージカルも最近は小説やマンガを原作とする作品もとても増えてきましたし、楽曲もポップスやロックが入って来てどんどんテンポアップしていたり、ダンスもさまざまなジャンルが入ってきている中で、名作である『王様と私』が上演されるということはとてもうれしかったです。でも、「私に任せていただいていいんだろうか?」という不安もありました。北村さんが「じゃ、やってやろう!」といういい空気を全面に押し出してくださっているので、私もチャレンジするつもりでついていきたいです。

私自身は、昨年ミュージカルに2作出演して、コンサートが9月に終わってしまったので、舞台に立つのはちょっと間が空いていて。お客様と劇場という同じ空間にいてというのは、本作が今年初めてになるので、そこがとってもうれしいです。

――(取材時点では)まだお稽古前ですが、お互いの印象はいかがでしょう?

北村:100点!

明日海:ありがとうございます(笑)。

北村:物を作るときは、まずは開く、開放することが大事だなと思っていますね。明日海さんはすごく話しやすいですし、ちゃんと心で話せるというか、すごく一緒にお芝居もやりやすいのだろうなと思います、今の段階では(笑)。明日になると変わっているかもしれない(笑)。

明日海:初日あたりにはピリッとしていたり(笑)。

私はどちらかというと、人と接するときに、「なにか失礼なことしてしまっていないかな」とか、「いまご機嫌いかがかな」とかいろいろ考えてしまうタイプなんですけども、北村さんは本当にオープンに優しく接してくださいます。

――北村さんは今回ミュージカル初挑戦となります。

北村:演目にもよりますが、ミュージカルは華がありますよね。子どものころからミュージカル映画をすごく観ていたので、やっぱりどこか惹かれるものがあるのだと思います。

舞台はただでさえ、緊張しますね。いやぁ~すごく嫌ですよ。きっと皆さん「できるの?」みたいな感じで観てくると思うんです。前のめりでこう食いついて観てくれたらいいのに…。

明日海:開演アナウンスで流してもらいましょうか? いつもは「背もたれに背中をつけて…」ってあるんですけど、今回は「気持ちはぜひ前のめりで観てください」って(笑)。

北村:お願いしますね。

◆舞台の見せ方、映像での見せ方 情報交換しながらやっていきたい

――製作発表で、王様とアンナ、それぞれの衣裳姿をご覧になられましたが、いかがでしたか?

明日海:あの豪華な色、装飾に負けないオーラを持ってらっしゃるのはさすが北村さんですよね! 厳しそうにも見えるし、普段の北村さんのお優しさも見えるし、ぴったりだな、早くセットに立たれているお姿を見たいなと思ってしまいました。

北村:明日海さんは本当におキレイだなと思いました。映像でも舞台でも、どの作品でも女性は絶対にキレイに見えるべきだと思うので。どこまで協力できるかわからないですけども、それは絶対条件で。

明日海:プレッシャーが…(笑)。頑張ります!

北村:普段ドレスの人に会うことがありませんから、スカートがあんな大きいとは思っていなくて。どうやって踊るのだろう?と思いました。

明日海:大変ではあるんですが、意外と遠心力が加わったら、スカートがふわっと広がって、上手にできたりするんです。

――北村さんは、最近映画でカラオケ好きなヤクザの組長を演じられたり、すべてが今回のミュージカル出演につながった感もありますが…。

北村:全然! ダンスは苦手ですね、リズム感ないんですよ。周りの方からすると僕がちょっと踊るとミラーボールが見えるみたいです。昭和が見えるみたいで(笑)。

歌は今、歌唱指導の先生にレッスンを受けていて、どんどん面白くなってきました。歌い方が違うせいか、何曲歌っても喉が痛くも苦しくもならず。そうやって変わってきたのが面白い段階ですね。

――明日海さんは、昨年デビュー20周年を迎えられました。最近では映像作品へのご出演も多いですが、舞台との相乗効果を感じられたりはしますか?

明日海:映像に出させていただく機会はまだまだ数える程度で、今でも毎回緊張しています。フレームアウトしちゃったり、セリフとなるとスイッチが入って声を張ってしまったり、表情筋もついつい動きすぎてしまったり。そうしたことにずっと気を付けながらお芝居しているので、映像のことが舞台に活かされているかというと…。でもその分、舞台に行った時の開放感みたいなものがあります。やっぱり全身を見ていただけますし、自由に動ける感覚もありますし。カンパニーの皆さんと1つの座組で行動して作っていこうという、あの雰囲気が大好きでやっているんだなと改めて感じます。

――カンパニーでいいますと、今回は花組時代の後輩となる朝月希和さんもご一緒ですね。

明日海:そうなんです! 久しぶりの再会なので楽しみです。

――これから『王様と私』のお稽古でお忙しくなりますが、最近キュン!とした新しい出会いはありましたか?

北村:僕はそれこそ先ほど言いました「歌」ですかね。ジムには行くのが億劫ですけど、今は時間が空いたら歌のレッスンに行こうかなって。実はずっと楽器をやりたかったのですが、なかなか行動に移せずにいましたが、そんな時にこのお話をいただいて、レッスンを重ねるうちに、「歌」も楽器なのだろうなって感じ始めています。だからすごく面白い。最近でいうと撮影以外はこの作品に関することしかやっていないですね。

――明日海さんはいかがでしょう?

明日海:ずっと考えていたんですけど、なくて…(苦笑)。私、単純に仕事が好きなんです。この仕事が好きだから、ほかにあまりいらないんです。最近は深夜のドラマに出させていただいたのですが、ほかのドラマとはまたテンションが全然違って、知らない自分が出てくる感覚があって面白かったです。

ほかにもカメラが1台の時と、2台の時では全然違うので、そういう発見があるのが面白いです。個人的には舞台の時のお客様の視点と一緒なので、カメラが1台のほうが安心できます。1台だと、前から見ていただいて、自分は今こう映っているんだなとわかるんですけど、2台の時はもうパニック! 舞台では、引きで見た時に今こことここにいるからちょっとこうだなとか、角度がこれだと否定の意味になっちゃうなとか、いろいろと考えながらお芝居していることが、映像に行ったら全然使えてなかったりも…。

北村:あ、それを教えてほしい! こう動くとこう見えちゃいますよ!とか、男役をやられていたから、いろいろアドバイスをお願いします。

明日海:微々たることかもしれませんが…。

北村:すると僕が映像のコツをお教えしたり(笑)。

明日海:お願いします! お聞きしたいことが山のようにあるんです。

北村:なんでも聞いてください。一緒のチームメイトとして稽古も本番もいろんなことを助け合いながらやっていきましょう!(笑)

(取材・文:田中ハルマ 写真:高野広美)

ミュージカル『王様と私』は4月9日~30日に東京・日生劇場、5月4日~8日に大阪・梅田芸術劇場メインホールにて上演。

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