MISORAの挑戦(3月29日)

 新産業創出の拠点「福島ロボットテストフィールド」は、南相馬市の「財産」と言えよう。ロボットの技術を競う国際サミットが開かれたのは3年前。市内のものづくり企業が英知を結集し、世に送ったMISORA(ミソラ)が準優勝を果たした▼アルミ製の銀のボディーを、ベルト付きの車輪が支え、がれきの中を走行できる。自在に動く1本の腕で散乱した破片を持ち運べる。名称は、美空ひばりさんにちなんでいる。「ヒバリ」は南相馬市の鳥で、雲雀[ひばり]ケ原祭場地は相馬野馬追のメイン会場でもある。市民に身近な言葉に、古里愛がにじむ▼サミットは来年10月、再びロボテスで開催される。MISORAは、工場での災害を予防する種目への出場を目指す。前回は被災現場の障害物を越える動きが中心だったが、難易度はぐんと上がる。パイプなどが入り組んだ模擬工場で計器を読み取り、バルブの開け閉めに挑む▼1年半後の本番に向け、機体の改良が検討されている。機械、金属加工で定評のある町工場の腕の見せどころだ。技術者の魂が吹き込まれた新型ロボットが、晴れ舞台で躍動する日が待ち遠しい。産業復興を高らかに告げる快いさえずりがきっと響く。<2024.3・29>

© 株式会社福島民報社