【いわきの医療】行政主導で課題解決を(3月29日)

 いわき市は地域医療の発展を目指して新年度、保健福祉部に「医療対策課」を新設する。専門職員を配置して医師の確保を推し進め、医療機関などの連携強化にも取り組む。市、市医師会、市病院協議会の3者でつくる医療構想会議の議論や指摘を踏まえ、市が先頭に立って課題を洗い出し、脆弱[ぜいじゃく]とされる医療環境の改善に努めてもらいたい。

 人口10万人当たりの市内の医師数は2022(令和4)年12月現在、182.8人で、全国平均の262.1人、県平均の218.7人に依然、及んでいない。平均年齢は55.9歳で、全国平均の50.3歳、県平均の52.8歳を上回っている。救急搬送も福島、郡山両市に比べ、面積が広いため時間を要する。増大化する医療需要に対応するには、常態化した医師不足の早期解決が急務と言える。

 市は、福島医大などに寄付講座を設けるなどして医師確保に努めている。診療所新設への補助制度などの施策も展開してきた。病院の常勤勤務医は2020年8月から3年間で21人増加した。診療所は3カ所開設されるなど成果は表れつつある。従来の施策を継続、発展させるとともに、優先的に整備が必要な診療科を見定め、人材の育成、発掘を進めるべきだ。

 構想会議では、高齢化の進展に合わせて複数の疾患に対応できる総合診療科、緊急手術が必要となる脳神経外科、出産・育児環境の向上に資する産婦人科や小児科などの設置を求める意見が出ている。診療科ごとに類似都市との医師数の比較などを示し、治療に窮する医師不足の現状を具体的に訴えながら招聘[しょうへい]活動に当たる必要があるだろう。

 医療環境の充実には、医療機関や福祉施設の連携も欠かせない。各病院や福祉施設は急性期、回復期、慢性期、介護などの状態に応じて患者を引き受ける。こうした役割分担を推進し、市内唯一の3次救急医療機関である市医療センターは、重篤患者の受け入れ態勢を常時、十分に確保しておくことも重要だ。

 介護認定についても迅速化に向け、行政、医療、介護など各分野で連携の在り方を導き出してほしい。脳疾患など各病院の専門医を当番制にするなどして、曜日にかかわらず治療可能な仕組みづくりも求めたい。(円谷真路)

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