【3月29日付社説】小林製薬のサプリ/被害拡大の防止に力尽くせ

 小林製薬の「紅こうじ」成分を配合した機能性表示食品のサプリメントを摂取し、腎疾患などの健康被害を訴える人が相次いでいる。100人近くが入院し、サプリ摂取との因果関係が疑われる死亡事例が4件確認されている。

 厚生労働省は「有害物質が含まれている疑いがある」とし、本社のある大阪市に対し、食品衛生法に基づく措置を取るよう通知した。「紅麹(べにこうじ)コレステヘルプ」など3商品に回収命令が出された。

 対象商品が手元にある人は絶対に服用してはいけない。摂取した人で、尿の出が悪い、手足がむくむなど腎機能の悪化が疑われる症状があれば、医療機関を受診し、保健所に相談する必要がある。

 被害の報告が多い紅麹コレステヘルプは2021年2月から今年2月末までに約100万個が販売された。小林製薬はあらゆる手段を講じて使用中止を呼びかけ、回収を急がなければならない。

 国や自治体などには、サプリを摂取した人の相談や、症状がある人と医療機関の仲介支援などに当たる体制の構築が求められる。

 小林製薬が健康被害の可能性を把握したのは今年1月中旬で、小林章浩社長が報告を受けたのは2月だった。今月22日の公表までに2カ月余りを要したことについて、会見した小林社長は「報告を受けた時点で何らかの形で回収になるだろうと覚悟した。当該の商品が原因となっているか分からず判断できなかった」と述べた。

 回収になる可能性を認識していながら原因究明に時間を費やして公表が遅れ、被害の拡大を招いた恐れがある。最優先で取り組むべき健康被害の防止を軽視した対応と言わざるを得ない。

 小林製薬によると、紅こうじの一部から検出された「カビ由来の未知の成分」が健康被害につながった可能性がある。成分の調査には1、2カ月ほどかかるとみられる。調査を進め、被害との因果関係を究明することが急務だ。

 小林製薬の紅こうじ原料を使った商品を取り扱う企業は170社以上ある。厚労省はきのう開かれた会議でこれらの企業に対し、過去に医師から健康被害が報告された製品がないかどうかなど自主点検を依頼する案を提示した。対象となる企業名も示された。

 企業名の公表は消費者の不安を軽減し、小林製薬とは無関係の紅こうじ製品への影響を小さくする上で欠かせない。一方で取引先企業への問い合わせが集中するなどして混乱が拡大しないよう、国は点検で得られた正確な情報を迅速に公表することが重要だ。

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