働き世代 がんになったらお金はどうする~会社員編~(4)住宅ローンの支払いが苦しい…

支出を減らすなら変動費ではなく固定費で(C)日刊ゲンダイ

本連載1、2回に登場した30代会社員Aさん。肺がんで抗がん剤治療を受ける中で気掛かりとなっていたのは、住宅ローンでした。子供2人はまだ小さく、妻は子育てで手いっぱい。高額療養費制度、傷病手当金、加入している健康保険組合の給付金など、使える制度は利用したものの、今後を考えると、少しでも支出を減らしたい──。

家計を調整する上で基本となるのは、「収入維持」と「支出減少」です。支出を減らす際、食費や水道光熱費といった変動費に手をつけがちですが、心身に負担がかかるため長期間では無理が生じやすく、また支出に占める割合がそう大きくないので“効果”も得にくい。減らすなら、額が大きい固定費で、中でも住宅ローンは検討すべき項目のひとつです。

働き盛りの世代でがんとなった場合、住宅ローンを今後どうするかを考える上でのポイントは、「治療スケジュールから返済困難の期間はどれくらいか」「ほかに支払うべきお金との兼ね合い」です。

Aさんは、肺がんの通院での抗がん剤治療が6カ月を予定。体力低下で復職が困難な期間は4~5カ月ほど。抗がん剤治療終了後は経過観察で、主治医との話し合いで「長く見ても半年ほどで職場復帰ができそう」という見通しが立っていました。

そこで選んだのが、住宅ローンを組んでいる金融機関へ赴き、返済条件の変更を相談する方法です。金融機関からの聞き取りの後、審査期間がありましたが、半年間だけ、住宅ローンの返済額を少なくしてもらえることになりました。

ただこの方法は、治療が長期化しそうな方には向いていません。一時的に住宅ローンの額を減らせても、それによって返済総額が増えるので、後々の負担となってくるからです。

家にかかるお金は住宅ローン以外にも、固定資産税や(マンションの場合)管理費・修繕積立金もあります。また、家以外にも医療費や教育費、日々の生活のために必要なお金もありますので、今後の生活の希望についてまずは家族で一度話し合い、お金に関しての方向性を考えていくことが大事です。

固定費は、自動車保険、携帯電話やインターネット、クレジットカードの会費、あまり利用していない習い事やサブスクなどの支出も含まれます。それらのうち減らせるものはないか。私が相談に乗った件では、8万円近くの支出減になった方も。がん患者さんでなくても物価高な世の中、一考してみるのもいいかもしれません。 (おわり)

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