性暴力問題で休館 長崎人権平和資料館が来月再開 岡氏の展示は撤去、性被害考えるコーナー新設

4月1日に再開する「長崎人権平和資料館」のリーフレット表紙(右)。岡氏の性暴力問題を受け、休館前(左)と比べると館名を変えたほか、上段の基本理念に「人権保障」を加えた

 平和活動家の故岡正治氏による約30年前の性暴力問題を受け、昨年10月から休館中の長崎人権平和資料館(旧岡まさはる記念長崎平和資料館、長崎市西坂町)を運営するNPO法人は28日、展示内容の見直し方針を発表した。岡氏ら個人の活動に焦点を当てた展示を撤去し、現代の「性差別と性暴力」を考えるコーナーなどを新設。4月1日に再開する。
 岡氏は朝鮮人被爆者の実態解明などに尽力した牧師で元長崎市議。1994年に死去した岡氏の遺志を継いだ市民有志が95年、旧資料館を開き、日本の戦争加害責任に関する展示を続ける。一方で元記者の女性が2020年、生前の岡氏から「性暴力を受けた」と告発。運営法人は昨年、女性に謝罪して休館し、館名変更などを検討してきた。
 新展示では「個人の記念ではなく被害者に寄り添う展示とする」として、岡氏の他に運営法人の初代理事長、故高實康稔氏に関するコーナーも外す。これに代わり▽現代の性差別の実態▽性暴力事案▽二次加害▽岡氏の性暴力問題への対応と反省-などの項目で展示。「消え去らない植民地主義」コーナーも新設し、過去の日本の植民地支配や、現在まで続く外国人差別や排他的意識などを伝える。
 運営法人は昨年12月以降、理事会と会員有志でつくる検討会(約20人)で計7回、展示見直しを議論してきた。岡氏の性暴力問題による館名変更の経緯も、館内のパネルで説明。「社会正義や人権を重んじる社会運動の中にも根強く存在する性差別に対し、常に自覚的で改善のために発言・発信・行動する資料館に変わる」と記す。
 28日会見した崎山昇理事長は「私たちの経験と反省を来館者に知ってもらい、同じ過ちを繰り返さないようにしてほしい。日本社会の性暴力問題の改善につなげたい」と述べた。

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