のどに違和感や異物感…更年期ストレスのサインかも? 食養生での対応策とは

国際中医薬膳師のかみむら佳子さん【写真:かみむら佳子】

病気ではないのにだるかったり、イライラしたり、「なんとなく不調」を感じることはありませんか。先人の知恵が詰まった薬膳では、春は心身が不安定になりやすい時期ととらえ、食養生を行うそうです。「Hint-Pot」では、更年期の女性の元気をサポートする、国際中医薬膳師のかみむら佳子さんによる連載をスタート。第1回は、何かがのどに詰まった感じがする「梅核気(ばいかくき)」や、改善するための食養生についてお届けします。

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第2子流産がきっかけで薬膳と中医学の道へ 更年期サロンを主宰

はじめまして。更年期向けのサロンを主宰し、身近な食材でできる手軽な薬膳や中医学の指導などを行っているかみむら佳子です。人生100年時代の現代、女性は更年期に入るのが50歳なら、残り50年もあります。女性に元気でいてほしいという思いから、自分の経験や知見をもとに、更年期を快適に乗り切る身近な薬膳などを紹介していきたいと思っています。

私は30代後半で第2子を流産。そのあとからプレ更年期の症状に悩まされたのですが、そのひとつがのどに何か詰まっている気がしたことです。耳鼻咽喉科で診てもらっても、「のどに問題はないので大丈夫でしょう」と言われましたが、その異物感、違和感は残ったまま。そして異物感を出そうと空咳が頻繁に出たり、首元が詰まった洋服なども苦しく感じたり……と、不快な気分が続いたものでした。

のちに学んだ薬膳、中医学で、これが「梅核気」といわれる症状だとわかったのです。

何かがのどに詰まっているような症状「梅核気」

「梅核気」とは、梅の種がのどに詰まったような感じで、その異物感を出すことも飲み込むこともできない症状のこと。これはストレスが主な原因といわれており、中医学では「気」のめぐりが悪くなる「気滞」という状態をいいます。

ちなみに「気」とは気力、エネルギーのようなもの。中医学では「気・血・水」3つのバランスが整うことが健康な状態だとし、「血」とは血液、「水」とは血液以外の体液のことです。この3つを生み出し上手にめぐらすために「肝・心・脾・肺・腎」の五臓が働いていると考えられています。

気は常に全身をめぐり、私たちの正常な活動を後押ししていますが、ストレスや疲労感などを慢性的に感じていると気が停滞し、滞りが生じるのです。すると、のどに物がつかえた感じや、胸のあたりが苦しい感じがする「梅核気」になることがあります。

更年期は自分自身の体調の変化や向き合う状況でストレスを感じやすい

ストレスの原因は人それぞれ違いますが、「梅核気」がとくに現れやすくなるのが45歳から55歳くらいまでの更年期の女性といわれています。加齢やホルモンバランスの乱れなど、自分自身への体の変化や衰えを感じながら、仕事と家庭の両立、仕事での責任ある立場、思春期や受験期の子育て、高齢になった親との関わりなど――さまざまな状況に向き合うストレスフルな日常が多くなるからです。

更年期の女性が「梅核気」になりやすいもうひとつの要因は、ストレスに弱い「肝」の働きが低下することにあると考えられます。肝とは中医学でいう「肝・心・脾・肺・腎」の五臓のひとつ。気を全身に送り届けて精神を安定させ、血を貯蔵して全身に適切な量を送り届ける役割を担います。閉経を迎える時期は、この血の貯蔵が減るために、肝の機能が弱るといわれています。その結果、ストレスの影響を受け、「梅核気」になりやすいのです。

中医学では「梅核気」で気がめぐらない状態を放っておくと、冷え症、無気力、疲労感、汗が出やすい、息切れなどが起こりやすいとしています。さらに血のめぐりも徐々に悪くなり、皮膚のかさつき、動悸、不安感、不眠などの症状にも発展していくと考えられています。

ミントティーにクコの実をプラスしたもの【写真:かみむら佳子】

気のめぐりの解消は芳香が効果的 お茶や料理に香りをプラスしてみて

このような状態を緩和するために、薬膳では、温かいお茶を飲んで気のめぐりを解消します。香りも楽しめるので、いわゆるアロマセラピーのように芳香を利用できて、ストレスの緩和に役立つでしょう。

おすすめのお茶は、花の香りのジャスミンティーやライチの甘い香りの茘枝(ライチ)紅茶です。また、生のミントの葉にお湯を注いだミントティーも気分を落ち着かせてくれます。

お茶にクコの実を入れると、さらに更年期の不調のサポートに向きます。薬膳では、クコの実は血を補うと考えられ、ストレスで弱まった肝の機能を高める食材として用います。健康のためとクコの実を買ってみたものの、使い切れなかったという話をよく聞きますが、そんなときはお茶に入れてクコの実も一緒に食べましょう。

また、グレープフルーツやレモンなどの柑橘、セロリやミツバの香りもおすすめです。サラダに柑橘類やセロリを加えたり、肉のソテーや焼き魚にレモン果汁を絞ったり、お吸い物にミツバを添えたりと香りをプラスしてみてください。

春は気のめぐりが悪くなり、肝が弱る時期です。とくに病気ではないのに、更年期でなんとなくのどの詰まり感がある人は、お茶や料理に自分の好きな香りを加えることでストレスを発散して、ご自身で更年期の不調を整えましょう。

かみむら 佳子(かみむら・けいこ)
大学卒業後、ハウスメーカーの営業職にて勤務後、28歳でフードコーディネータースクールに通い、アシスタントを経て独立。35歳で第2子流産後に続いた体調不良をきっかけに、薬膳を学び始める。「あなたスタイル薬膳RKazen」を主宰し、身近な食材で手軽に養生を実践する簡単薬膳や中医学の指導、セミナーなどで活動中。

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