中学生が図書館で仕事体験 不登校支援へ地域連携 藤沢市

児童書を検品する加茂前さん(手前)と下野江さん

さまざまな事情で学校に通わない選択をした不登校の生徒を支援しようと、学校と地域が連携し、学外に居場所を作る取り組みが湘南台中学校で進んでいる。昨秋から隣接する総合市民図書館が趣旨に賛同し、月1度、生徒2人を受け入れて仕事を体験する機会を提供。市内中学校では別室での学習支援があるが、業務体験型の不登校支援は初だ。多様な子どもを受け入れる新たな形として、今後注目が集まりそうだ。

図書館で生徒ら仕事体験

「本が好きなので純粋に楽しくて。自分が読んだことがある本を見つけるとうれしくなる」

15日、職員用の青いエプロンを付けた加茂前暁音さん(15)が返却された児童書を配架しながらほほ笑んだ。並び順や位置、本を傷つけないよう取り扱いにも気を配る。

2年生の終わり、学年末テストを控え突然勉強が嫌になった。試験や塾の宿題で積み重なったストレスが「爆発した」。今はそう分析している。

3年生に進級すると部活以外はほとんど通わなくなり、夏休み前からは不登校の生徒が利用する別室の「湘中ルーム」に時折通うように。図書館での仕事体験はスクールカウンセラーから聞き、「出席扱いになるなら」と昨年末から始めた。

元々読書好きということもあり、仕事はむしろ楽しかった。作業は1階の児童書コーナーで配架と検品を中心に2時間。昨秋から参加する下野江舞さん(13)も「小さい頃から図書館を使っているので居心地がいい。本との出会いや再会が楽しみ」とやりがいを話す。

同館児童担当の多田若菜さん(32)は「2人とも真剣でとても積極的。物覚えも良くこちらが助けられている」と仕事ぶりを評価。中高生当事者に好きな本を尋ねることができるのも選書の上で貴重な機会という。

この春、同校を卒業した加茂前さん。4月からは全日制の私立高校に進学する。「高校生になっても何かしら図書館に関わっていきたい」。図書館での経験は大切な思い出の一つになった。

同校の松原保校長は取り組みについて「学校や別室に通うことが難しい子でもやりがいを感じ、社会との接点を保つことができる。地域の力を借りながら少しずつ場所を増やしていきたい」と話す。現在、公民館とも連携し新たな受け入れの準備を進めているという。

藤沢市立小中学校における2022年度の不登校の児童生徒は前年度より118人多い988人で過去最多だった。全国でも増加の一途を辿っており、新たな支援の形が求められている。

市では23年度から別室に学習指導員を配置する週4時間分の予算を計上。24年度からは県の補助金も上乗せし、週16時間分を確保した。

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