肥前島原子ども狂言20周年 「釣ろうよ」脚本 松尾さんしのぶ 春の狂言会で35人上演

春の狂言会で「釣ろうよ」を上演する子どもら。写真左からガンバ(フグ)、タイ、海の精、梅花の精、最後が太郎冠者=島原市城内1丁目、島原文化会館

 今年20年目となる「肥前島原子ども狂言」の受講生が稽古の成果を披露する「春の狂言会」が24日、長崎県島原市内で開かれた。同狂言の代表を長年務め、1日に88歳で亡くなった郷土史家の松尾卓次さんのオリジナル狂言「釣ろうよ」など8演目を、4歳の保育園児から22歳の大学生まで35人が上演し追悼した。
 子ども狂言は、約400年前の築城時から島原城で能楽が演じられてきた伝統を受け継ごうと2004年、小中学生らを対象に始まった。和泉流狂言師・野村万禄さん(57)=福岡市=が演技を指導し、同城資料解説員だった松尾さんが古文書などをひもとくワークショップ形式で、延べ約700人が参加してきた。
 「釣ろうよ」は06年、島原に伝わる狂言を原案に松尾さんが脚本化。タコやガンバ(フグ)、タイなど、有明海の生きものと、それを釣ろうとする太郎冠者との掛け合いをユーモラスに描いている。
 この日は、今年の島原城築城400年や子ども狂言20周年を祝うため松尾さんが22年に発案し、脚本に追加した島原城の「梅花の精」も登場。子どもたちは松尾さんの遺影を前に、にぎやかに演じた。
 08年から参加する活水女子大4年の宇土咲音さん(22)=長崎市=は「子ども狂言を通じ、伝統文化の面白さを知ることができた。今後はスタッフとして魅力を伝えていきたい」と話した。
 観客席で見守った松尾さんの妻・久子さん(83)は「一生懸命に稽古してきたことが伝わった。主人もきっと喜んでいることでしょう」と目を細めた。

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