道路環境、一緒に考えて 芸工大卒の鈴木さん、全国学生コンペ準グランプリに

尿入りペットボトルの不法投棄について研究した鈴木美里さん=山形市

 東北芸術工科大(山形市)コミュニティデザイン学科を今春卒業した鈴木美里さん(23)=金山町出身=が、大学の卒業研究テーマで、道路沿いに不法投棄された尿入りペットボトルの問題解消に取り組み、尿を再利用して肥料化するプロジェクトを考えた。アイデアは、全国の学生を対象にしたコンペティション「JIDF学生文化デザイン賞」で今月、準グランプリに選ばれた。

 尿入りペットボトルの不法投棄は全国で問題になっているという。東日本高速道路(NEXCO東日本)によると、山形自動車道と本県の東北中央自動車道で年間約千本が、東北自動車道本宮―白石間では年間約8千本が回収されている。

 鈴木さんは昨年5月に鶴岡市内でごみ拾いをした際、尿が入っていたとみられるペットボトルを見つけた。処理の難しさから放置してしまった。悔しく思い、何とかしたいと研究テーマに据えた。

 県内外の社会人ら約170人を対象に認知度を調べたところ、8割以上が「知らない」と答えた。鈴木さんは、「トイレに行く時間が惜しい」「処理が面倒」といった個人的な理由のほか、長時間運転などの労働環境、ネット市場の急成長と配送業務量の増加などが背景にあるのではないか、と推察した。

 尿を価値あるものに変えようと、土壌中で分解される素材を用いた容器を作り、肥料化するシステムを考案した。さらに、耕作放棄地に着目し、尿の肥料で果物を育て、植物由来の合成皮革「ビーガンレザー」の開発につなげるアイデアを提起した。「行動の背景を知り、問題を共に考えてもらいたい」との願いを込め、尿入りペットボトルをモチーフにしたキャラクターを作り、問題を周知する取り組みも行った。

 大学2年時から環境問題に興味を持ち、2022年に循環経済関連の会社を立ち上げた。今年8月からは海外で先進事例や語学を学ぶ。「いずれは山形県をフィールドに、プロジェクトを実現させたい」と意気込む。

 コンペは日本文化デザインフォーラム(JIDF、東京)が18年から毎年実施。今年は約60人の応募があった。

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