子どもの憩い場「かのん[奏音]」閉鎖へ 野口さん「今後も本を通しての子ども支援は続けていく」 長崎・佐世保

「今後も本を通しての子ども支援は続けていく」と話す野口院長=佐世保市、かのん[奏音]

 長崎県佐世保市島地町にある、子どもらが自由に読書や休憩などに使えるスペース「かのん[奏音]」が、今月末で閉鎖する。開設者で心療内科「かなでクリニック」(同市下京町)の野口栄二院長は「スペースは閉鎖するが、今後も本を通しての子ども支援は続けていく」と穏やかに話す。
 心療内科医として約30年にわたり思春期の子どもらと関わってきた野口院長が、医療につながる前に力になりたいと2019年12月に自費で開設。学生は利用無料で、約90平方メートルのスペースに机や椅子、ピアノを配置。4千冊以上の本も並べるなど「子どもたちが何も強制されず、自由にできる場所」の提供を目指した。
 これまで書籍販売やクラウドファンディング、大人の有料会員制などで維持費を捻出しようと取り組んできた。しかし、ほとんどを野口院長が支出する状況は変わらず、今年に入り「経済的にこれ以上は難しい」と判断し、閉鎖を決めた。
 昨年は大人を含めた1100人以上が足を運び、子どもの多くは勉強をするために訪れたという。野口院長は、無料で安心して利用できる自由なスペースの提供は、子どもたちの居場所になると指摘。訪れやすいよう街中にあることが望ましく、「行政にそのような場所の提供をしてほしい」と訴える。
 最後に野口院長は、「大人は子どもたちを大切に思っているということを行動で伝える必要がある。今後も本を通した支援を続け、『君たちのことを考えているよ』と発信し続けていきたい」と結んだ。
 参加店舗の専用本棚から自由に本を借り、返すことができる「旅する本たち」の取り組みは今後も続ける。また、寄贈本などを除く同スペースの蔵書の贈呈をしている。問い合わせは同スペース(電080.7802.6296)。

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