市町村DV相談機関 茨城県内、水戸・古河の2市どまり 「努力義務」影響か

水戸市の配偶者暴力相談支援センターでは、当事者が安心できるよう個室で相談を受けている=同市役所

ドメスティックバイオレンス(DV)に関する相談支援センターの設置が茨城県内市町村で進んでいない。DV防止法で都道府県の設置は義務化されているが、市町村での設置は努力義務となっているためだ。現在は水戸、古河の2市が設置。2024年度には新たに2市が加わる予定だが、設置ペースは全国的に見ても遅れている状況だ。

配偶者暴力相談支援センターは、都道府県や市区町村が設置する公的な支援機関で、DVに関する相談に応じ、自立支援や一時保護などを担う。また、被害者が行政サービスを円滑に申請するために必要な「DV相談証明書」の発行、保護命令申し立ての援助ができるようになる。

県内で設置されているのは義務化された県を含め3カ所。全国では23年7月現在、埼玉県が24カ所と最多で、東京都22カ所、北海道21カ所、千葉県20カ所となっている。

市町村で24年度に新設を予定しているのは、つくばみらい、かすみがうらの2市。つくばみらい市はDVに関する相談が年々増えていたことから、かすみがうら市は被害者の負担軽減を図る目的などから、それぞれ導入を決めたという。

17年度に開設した水戸市によると、設置前はDV相談証明書の発行時などに県のセンターまで出向かねばならず、当事者は同じ内容を複数回説明する必要が生じていた。

同市では個室で対面相談を実施。各課職員が部屋を順次訪れ、当事者の状況に応じて、健康保険や扶養の除外手続き、生活保護申請などを行っている。現在はほとんどの手続きがワンストップで完結できるようになり、当事者の負担軽減につながっているという。

DV被害の女性支援などを行うNPO法人ウィメンズネット「らいず」の三富和代代表理事は、「身近な市町村で対応してもらえることが当事者の後押しになる」と指摘。被害経験を繰り返し話すことは当事者の負担になるため、1カ所で手続きが済むことが望ましいとしている。

DVを巡っては、身体的暴力などに加え、4月から精神的暴力もDV防止法に基づく保護命令の対象になる。今後は保護命令の申請増が予測されるが、申請には同センターか警察への相談が必要となる。

三富代表理事は「身近な市町村で相談できるのが最も望ましい。法改正を契機に、各市町村は設置を検討してほしい」と話した。

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