士業やコンサルタントという仕事をしていると、クライアントにアドバイスをする機会が少なからずあるものです。しかし、「なぜかクライアントがアドバイスを受け入れてくれない」ということがあれば、その対応に何らかの問題があると考えられます。本記事では『オーナー士業(R)になって、たちまち年商1億円を突破する方法』(すばる舎)から、著者の〈あべき光司氏〉が、クライアントに嫌がられる話し方と、正しい話し方を事例付きで解説します。
クライアントに嫌がられないコンサルのコツとは?
士業やコンサルタントは、立場上ついアドバイスをしてしまいがちです。しかし、実際アドバイスをしてみたら、クライアントがやれない理由を並べたてて、まったく受け入れてくれない、ということがよくあります。
クライアントはアドバイスをなぜ受け入れてくれないのかというと、コンサルタントに意見を押しつけられたと感じるからです。士業やコンサルタントは、なにか有益なことを教えてくれる先生と見られているので、アドバイスをされた人は、「やらなければならない」と感じます。
ところが、多くの社長はなんでも自分で決めたいと思っているので、人から命令されるのをいやがります。だからクライアントになにかアドバイスをしたいと思ったら、クライアントが押しつけられたと思わず、自分で決めてもらえるように会話を進める必要があります。
コンサルティングの現場で、クライアントからコンサルタントが意見を求められたとき、もしくはアドバイスしたくなったとき、どう対応するのかについて、2つの事例で説明します。
事例①クライアントが「押しつけられた」と感じる話し方
まず、クライアントがコンサルタントに意見を押しつけられたと感じて、アドバイスを受け入れてもらえない事例を見てみましょう。
コンサルタント「今社長のお話を聞いていて思ったんですが、私が以前に関わっていた会社が同じような課題をかかえていたんです。その会社でやってみたことで、うまくいったことがあるんです。……(うまくいった事例を紹介)……同じ業種ですし、会社の規模も似ているし、きっと社長のところでやってもうまくいくと思います。一度この方法でやってみましょう」 クライアント「確かに、面白いやり方ですね。いいとは思うけど、うちの会社とはそもそも客層がぜんぜん違うので、とてもうまくいくとは思えませんね」
この場合は、コンサルタントから一方的に自分のやり方を押しつけられているようにクライアントが感じているので、たとえ内心ではコンサルタントの意見が正しいと思ったとしても、素直に受け入れたくないのです。
事例②クライアントが意見を聞いてくれる話し方
次に、クライアントがコンサルタントの意見を聞いて、自分で判断してくれるように会話を進めるための3つのステップについて説明します。
以下の3つのステップで話を進めると、クライアントはコンサルタントに意見を押しつけられたとは感じず、意見を聞いてくれるようになります。
(ステップ1)
コンサルタント「今社長のお話を聞いていて思ったんですが、私が以前に関わっていた会社が同じような課題をかかえていたんです。その会社でやってみたことで、うまくいったやり方があるんです。その話をしてもいいですか?」
クライアント「ぜひ聞いてみたいです」
【ポイント解説】最初に、自分の意見を言っていいか、相手の許可を取ります。ここでダメと言われたらここで終わりますが、だいたいはどんな話をするのか興味をもって、「聞きたい」と言ってくれます。
(ステップ2)
コンサルタント「……(うまくいった事例を紹介)……同じ業種ですし、会社の規模も似ているので、このやり方を社長のところに合わせた形で取り入れてみたらどうか?と私は思ったんです」
【ポイント解説】あくまで自分の意見として端的に述べます。
(ステップ3)
コンサルタント「今の私の話を聞いてみて、社長はどう思われましたか?」
クライアント「なるほど、そんなやり方もあるんですね。リスクも少なそうだし、一度やってみてもいいかもしれませんね」
【ポイント解説】自分の意見を述べた後に、「今の話を聞いてみて、どう思われましたか?」と必ず相手の意見を聞きます。クライアントは、肯定的に受け止めてくれる場合もあれば、否定することもあります。こうやってクライアントの意見を聞くことで、クライアントが意見を押しつけられたと思わず、意思決定もクライアントがする状況をつくります。
(ステップ3のつづき)
コンサルタント「今そうおっしゃってみて、どれくらいしっくりきましたか?」
クライアント「8割くらいかな」
コンサルタント「社長、残りの2割ってなんですか?」
クライアント「じつは……」
【ポイント解説】このように、相手がどう思っているか、本当に納得して決断しているか、なにか引っかかることがないか、など、ていねいに聞いていきます。そうすると、最後に「じつは……」とクライアントが本音を語りはじめることがあります。
事例①では、たとえコンサルタントにそのつもりはなくても、クライアントは一方的にコンサルタントから意見を押しつけられていると感じています。いっぽう、事例②の場合は、コンサルタントはクライアントに自分の意見を言っていいか許可を取ってから、自分の意見を述べ、その意見についてクライアントがどう思ったかを確認しています。
クライアントから見たら、コンサルタントは自分が考えつかなかった選択肢を新しく1つ増やしてくれています。その選択肢を選ぶかどうかを決めるのは、あくまでもクライアントです。
ここまで紹介してきたように、クライアントにアドバイスをするときは、この3つのステップを順番にやっていきます。
ステップ1 相手に自分の意見を言っていいかどうかの許可を取る
ステップ2 あくまで自分の意見として伝える
ステップ3 その意見について相手がどう思ったかを確認する
「許可を取ってから、自分の意見を述べ、相手の意見を確認する」という3つのステップは、クライアントにアドバイスをするときだけでなく、事務所でスタッフにアドバイスするときにも使えます。
あべき光司
EMP税理士法人 代表
国際コーチ連盟認定プロフェッショナルコーチ
※本記事は『オーナー士業(R)になって、たちまち年商1億円を突破する方法』(すばる舎)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。