シニア犬に「硬水」はNG!…愛犬が“年をとってきたら”気をつけたいポイント【獣医師が解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

一般的に、ワンちゃんの1年は人間の7年に相当すると言われています。愛するワンちゃんが年をとってきたら、どのような点に気をつければ良いのでしょうか。現役獣医師で『愛犬と20年いっしょに暮らせる本 いまから間に合うおうちケア』著者の星野浩子氏が解説します。

シニア犬は水分をたっぷりとる

高齢になってから栄養をどのようにとるかについては、ドッグフードと手づくりごはんのそれぞれについて、順番にくわしく説明します。共通して気をつけたいポイントを先に挙げておきましょう。

まず、水分をたっぷりとることです。人間についても水分をたっぷりとりましょうといわれていますが、ワンちゃんにとっても水分は非常に重要です。体のほとんどは水分で満たされていますから、体内の水分が不足すると、まず体全体の動きが悪くなります。

また、血液がドロドロになって、心臓に負担がかかります。血のめぐりも悪くなるので、腫瘍ができたり、痛みが生じたりします。

1日に必要な水分は、体重1キロあたり約40㏄です。水はいつでも自由に飲めるようにしておきます。腎臓にトラブルがある場合は、それよりたくさん飲みましょう。老廃物を出す能力が落ちているので、たくさん水分をとり、尿を増やして、その能力を補います。

硬水は飲ませない

高齢のワンちゃんはのどの渇きを感じにくくなっているので、自分で飲む量に任せず、飼い主さんが意識して水分をとらせるようにしましょう。冬は少しあたためると、飲みやすくなります。

なかなか水を飲んでくれない場合は、ごはんの水分量を増やす(ドライフードはふやかすなど)、ヨーグルトを混ぜる、犬用ミルクを使う、肉や魚、野菜の煮汁を飲ませるなどの工夫をしてあげるといいでしょう。

自分で舌を動かして飲めるのであれば、体を少し起こして支え、小皿などに入れた水をなめさせます。自力で飲めない場合は、スポイトやシリンジなどを使って少しずつ飲ませます。誤嚥性肺炎を避けるためにも、横になった状態ではなく、体を起こして飲ませましょう。

硬度の高いミネラルウォーター(硬水)は飲ませないでください。カルシウムやマグネシウムなどのミネラル分を含むため、結石の原因になることがあります。日本の軟水であれば問題ありません。

水を飲む量が急激に増えた、おしっこの量が急激に増えたなどの場合は、糖尿病、副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)、子宮蓄膿症、腎不全などが疑われるので、病院で診察を受けましょう。

愛犬の食が細ってきたらどうすれば良い?

高齢のワンちゃんの飼い主さんから、「若いころは、ごはんを出したらすぐにパクパク食べたのに、最近はなかなか食べないんです……」というご相談を受けることがあります。そんなときは、次のようなことをチェックしてみてください。

ごはんをあげすぎている

ごはんを残すようなら、まずあげすぎでないかを確認しましょう。高齢になると、必要なカロリー量は減ってきます。体型、便の状態、活動量の変化などの様子を見ながら加減してください。一度にたくさん食べられないなら、回数を分けてもいいでしょう。

嗅覚が鈍くなっている

ごはんを出してもすぐに食べない場合は、嗅覚のおとろえも考えられます。ドッグフードを替えるのも手ですが、あたためて香りを強くするだけでも、食べはじめることがあります。ドライフードなら、少しお湯を足してあたためるといいでしょう。

ただし、熱湯を入れるとビタミンが壊れてしまうので、40~50度くらいのぬるま湯を使います。

食べる力がおとろえている

歯が悪くなってきたり、飲み込む力が弱くなってきたりしたために、食べにくいという場合もあります。ドッグフードをふやかしたり、ふやかしてさらにマッシャーなどでつぶしたりすると食べやすくなります。

また、頭を下げてごはんを食べるのはそれだけでも負担になるので、ごはん台をつくるのもいいと思います。雑誌や本、ブロックなどで食べやすい高さに調整してあげるとラクになります。

食欲をわかせるひと工夫

食欲をわかせるには、ドッグフードになにかトッピングしてもいいでしょう。体によいものを足してあげてください。また、食欲がなくても、お灸やマッサージで体をあたためてあげると、食べる気力が戻ってくることもよくあります。

心配な状態がつづくようなら、早めに病院で診てもらいましょう。

星野 浩子
ほしのどうぶつクリニック院長
獣医師/特級獣医中医師

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