スペックの高さなら佐々木、タフネスなら高橋光、平良や高橋宏にもチャンスあり?...2024年の沢村賞候補7人をピックアップ<SLUGGER>

いよいよ3月29日に日本プロ野球が開幕する。3年連続で沢村賞の座を独占していた山本由伸がドジャースへ移籍。投手最高の賞を次に手にするのは一体誰なのか。7人の候補を選出し、それぞれの可能性を探ってみよう。

●髙橋光成(西武)
2023年成績:23試合 4完投 155.0回 10勝8敗 防御率2.21 120奪三振
【タフネス】★★★★
【奪三振能力】★★☆☆
【安定度】★★★☆
【伸びしろ】★★☆☆

現役投手の中で、かつての「先発完投型」に最も近いのがこの高橋光だ。昨季の4完投はリーグ最多で、21~22年はいずれもリーグ最多先発&170イニングをクリア。以前は安定感に欠ける面もあったが、ここ2年は防御率を2.20前後に収めている。奪三振率も年々向上していて、沢村賞の選考基準をすべてクリアする可能性もある。熱望するメジャー移籍へ向け、本人も気合十分だろう。

●佐々木朗希(ロッテ)
2023年成績:15試合 0完投 91.0回 7勝4敗 防御率1.78 135奪三振
【タフネス】★☆☆☆
【奪三振能力】★★★★
【安定度】★★★☆
【伸びしろ】★★★★

山本不在のNPBで、次に“球界No.1投手”になるのはこの佐々木だと考えるファンも多いだろう。確かにスペックの高さは誰もが認めるところだが、沢村賞で重視される先発完投能力で見ると、むしろ分が悪い。規定投球回到達はいまだなく、昨季は故障もあって100イニングすらクリアできなかった。圧倒的な支配力を維持した上で故障なく1年間を完走できれば、沢村賞受賞はぐっと近づくだろう。●村上頌樹(阪神)
2023年成績:22試合 2完投 144.1回 10勝6敗 防御率1.75 137奪三振
【タフネス】★★★☆
【奪三振能力】★★★☆
【安定度】★★★☆
【伸びしろ】★☆☆☆

昨季はプロ野球史上3人目の新人王&MVP受賞と大ブレイク。個人タイトルでの次なる目標は当然、沢村賞だ。だが、さすがに昨季の活躍は出来すぎの感も否めない。本塁打を除くフェアゾーンに飛んだ打球の被打率を示すBABIPは.229とかなり幸運にも助けられており、成績悪化の兆候も見え隠れする。三振奪取能力はまずまずだが、沢村賞獲得のためには投球の質を維持しつつ、イニング数も昨季の144.1回から積み上げていきたいところだ。

●東克樹(DeNA)
2023年成績:24試合 4完投 172.1回 16勝3敗 防御率1.98 133奪三振
【タフネス】★★★☆
【奪三振能力】★★☆☆
【安定度】★★★★☆
【伸びしろ】★☆☆☆

2019~22年は左肘の故障に苦しんだが、昨季は見事に復活。16勝で最多勝に輝き、4完投もリーグ1位、172.1イニングは2位で、村上を抑えてベストナインに選出された。チームでは1983年の遠藤一彦以来となる沢村賞受賞へ向けての最大の障壁は奪三振だろう。昨季は172.1回を投げて133奪三振で、9イニング平均では6.95に過ぎなかった。仮にイニング数が昨季と同水準だった場合、150奪三振をクリアするためには8.00近くまで必要になる。●宮城大弥(オリックス)
2023年成績:22試合 3完投 146.2回 10勝4敗 防御率2.27 122奪三振
【タフネス】★★★☆
【奪三振能力】★★☆☆
【安定度】★★★★
【伸びしろ】★★☆☆

安定度にかけてはこの宮城の右に出る者はそういない。過去3年続けて2ケタ勝利を挙げ、2021年と昨季は防御率リーグトップ3以内。昨季まではチームメイトだった山本の影に隠れていた部分もあったが、今季からは押しも押されぬエースとして期待される。昨季は3完投をいずれも完封で記録するなど耐久性も十分で、イニング数がさらに増えても不思議はない。東と同じく、奪三振能力をいかに高めるかがカギになりそうだ。

●平良海馬(西武)
2023年成績:23試合 0完投 150.0回 11勝7敗 防御率2.40 153奪三振
【タフネス】★★★☆
【奪三振能力】★★★★
【安定度】★★★☆
【伸びしろ】★★★☆

リリーフから先発に転向した昨季は見事な好成績を残した。11勝、防御率2.40はもちろん、23先発で18回クオリティ・スタートを記録し、150.0イニングで153三振を奪うなど、沢村賞選考委員が重視する項目でも軒並み優れた数値を残している。向上心が非常に旺盛で、「(自分には)外角低めのストレート、あれ意味ないです」と語る求道者。昨季は一つもなかった完投数がネックになるが、そこさえクリアできれば沢村賞受賞の可能性は十分ある。
●髙橋宏斗(中日)
2023年成績:25試合 1完投 146.0回 7勝11敗 防御率2.53 145奪三振
【タフネス】★★☆☆
【奪三振能力】★★★☆
【安定度】★★☆☆
【伸びしろ】★★★★

山本に心酔していることでも知られる竜の次世代エースは、2年続けて負け越してはいるものの、防御率はいずれも2.50前後と実力はすでに十分。150キロ台中盤のストレートとスプリットは一級品で、イニング数も着実に積み上げている。オープン戦の不調で今季開幕は二軍スタートとなったが、昨季の山本は23先発で沢村賞を手にしており、まだ挽回のチャンスは十分。今季が無理だとしても、今後数年の間に投手最高の栄誉を手にする可能性は高いのではないか。

上記の7人以外にも、山下舜平大(オリックス)、戸郷翔征(巨人)、今井達也(西武)ら沢村賞候補は数多くいる。新たに“球界最強投手”に名乗りを上げるのは一体誰になるだろうか?

構成●SLUGGER編集部

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