春の訪れ、美の競演 第80回現代美術展開幕

作品解説を聞きながら工芸の秀作を鑑賞する来場者=29日午前10時45分、金沢市の石川県立美術館

  ●県立美術館、21世紀美術館

 第80回現代美術展(一般財団法人石川県美術文化協会、北國新聞社、一般財団法人県芸術文化協会など主催)は29日、金沢市の県立美術館と金沢21世紀美術館で一般公開が始まり、美術工芸王国に春の訪れを告げる1103点が会場を彩った。訪れた人は美の伝統を受け継ぎ、高みを目指す作家の決意が込められた秀作や被災地から寄せられた力作に見入った。

  ●被災地からの力作など1103点

 現代美術展は終戦の2カ月後に初開催され、毎年途切れることなく続く公募展。80回の節目を迎えた今回は能登半島地震発生から3カ月後の開催となり、日本画、洋画、彫刻、工芸、書、写真の6部門に美文協役員・会員による委嘱作402点、遺作3点、一般の部で入選した684点のほか、過去10年の美術文化大賞受賞作などが並んだ。

 洋画、彫刻、工芸、写真の会場となっている県立美術館では、今回の美術文化大賞に輝いた柴山桂子さん(金沢市)の洋画「ハルノウタ」、準大賞を射止めた毎田仁嗣さん(金沢市)の工芸「moment」が存在感を放った。

  ●院賞山岸氏の作品も

 工芸では能登半島地震で被災し、輪島から金沢に避難した沈金(ちんきん)人間国宝の前史雄さんが出品した棗(なつめ)「春待(はるまつ)」や、2023年度日本芸術院賞に選ばれた山岸大成さん(能美市)の陶芸「日本の美・藤」も展示された。

 作品解説では、美文協会員の荒川文彦さん(加賀市)が工芸の作品に用いられた技法を紹介。午後は会員の山岸睦さん(金沢市)が洋画について解説した。

 日本画と書の会場である金沢21世紀美術館では、美術文化委嘱賞に選ばれた松永敏さん(小松市)の日本画「秋を解く」、松﨑節恵さん(金沢市)の書「春の空」などが注目を集めた。

 現代美術展は4月15日まで。入場料は一般千円、高校・大学生700円、小・中学生は600円となる。会期中は平日午前10時半~11時半、午後1~2時に作品解説を行う。

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