入学・卒業式、保護者は撮影ダメ…なんで? 学校、教育委員会に聞いてみた SNSなど問題山積

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 春は卒業と入学のシーズン。成長した子どもの晴れ姿を記録に残そうとカメラを手に取る保護者も多そうだが、式典中の撮影に対して学校から「待った」がかかるケースが出ている。「せっかくの機会なのに、どうしてNGなの?」。神戸新聞の双方向型報道「スクープラボ」にも保護者から疑問が寄せられた。背景を取材すると-。(鈴木久仁子) ### ■自分の目で見てほしい、SNSのトラブル回避

 「子どもの姿を自分の目でしっかりと見てあげてほしい。それが一番の理由です」。神戸市内の公立小学校の校長はそう話す。静かな式典中のシャッター音やフラッシュなどは「子どもの集中力を低下させ、他の保護者への配慮にも欠ける」と懸念を示す。

 加えて、多くの学校関係者が指摘するのは「交流サイト(SNS)への投稿」だ。どうしても前後左右に自分の子ども以外が写り、トラブルのもとになりかねない。ある管理職は「『くれぐれも自分で楽しむだけにして』と手紙や会場で呼びかけるが、最初からご遠慮願う場合もある」と、リスク回避の狙いを明かす。

 音楽会などについても保護者の撮影を禁止している学校は少なくない。別の校長はエスカレートする席取り合戦や「レンズ越しにしか子どもを見ず、演奏後に拍手が起きない」状況も理由に挙げる。学校によっては撮影スペースを設けているところもある。 ### ■業者「売り上げは変わらず」

 保護者による撮影を制限する一方、業者のカメラマンが撮った写真を販売することから、スクープラボに届いた保護者の投稿には「業者を優遇しているのでは」と疑う見方もあったが、学校側は「ありえない」と口をそろえる。

 長年、保育園や公立の小中学校で写真を撮影してきた西宮市内の業者は「保護者が撮っても撮らなくても、売り上げはほとんど変わらない。むしろ保護者が撮ってくれたら気が楽」と笑う。データでの販売を求める声もあるが、やはりSNSでの拡散を心配する学校は多く、プリント注文にのみ対応している。 ### ■満足いく答えは…

 写真や動画の撮影について神戸市教育委員会に尋ねると「特に決めているルールはない」とのこと。学校側には保護者や地域の意見を聞いて寄り添うよう促しているという。実際、この春の卒業式ではいったん「撮影禁止」を決めたものの、保護者から反発を受け、一転して許可した小学校もあった。

 ちなみに保護者の中には「禁止され、かえってゆっくりと式典を見られた」という意見もあった。式典中の撮影について誰もが満足できる答えを探すのは難しく、議論が続きそうだ。

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