【志田光インタビュー・後編】プロレスラー・志田光ができるまで。新世代の主人公になる!

4月26日(火)新木場にて尻神教解散興行を行う志田光に迫ったインタビューだが、後編はプロレスラー志田光のレスラーになったきっかけ、参戦の各団体などについて語ってもらった内容をご覧ください。

<プロレスラーと女優、これこそが志田光の人生>

――あらためて、これまでのプロレス人生を振り返って、いかがですか?

志田:20歳から始めて、6月で29歳になりますけど、あっという間ですね。こうして皆さん、どんどん結婚できなくなっていくんでしょうね(笑)

――プロレス入りのきっかけは何でしたか?

志田:映画『スリーカウント』のオーディションです。出演するためにプロレスデビューして、プロレスラーとして映画に出る企画でした。私はもともと女優志望だったので、芸能事務所に入って、オーディションに行ってみたら、オーディション会場で「明日から練習に来てください」と言われて、プロレスを始めました。

――プロレスをさせられてから、なぜだかプロレスに目覚めていったんですね。

志田:プロレスを一度も見たことがなかったんです。何をやっているかわからないまま、練習していました。もともと柔道と剣道をやっていて、三歳ぐらいから運動もやっていたので、こういう企画は私向きだろうなと思って、映画に出るためにプロレスをやっていました。

――いつから、プロレスを本業にしようと思いましたか?

志田:「(プロレスで)デビューして一年間は、映画のためにプロレスを続けてください」と言われていたので、その間は、「なんで私プロレスをやってるんだろう?」という思いでいっぱいでした。だけど公開された映画を見たら、自分自身もプロレスを通じて輝いているように見えたので、「プロレスをやっている私、いいかも」となって、本気でプロレスをやってみようという思いになりました。それからはとにかく必死で、「もっとこうしたほうがいい」と思って続けているうちに、いつのまにかプロレスに夢中になっていました。今思うと、最初の一年間嫌々続けていたことが悔しいです。あの一年をもっとちゃんとやっていたら、今もっと上に行けていたのに、って後悔しています。

――実績は十分にあるし、ベルトも数多く保持しています。プロレス界の一角を完全に占めていると思います。

志田:来年で(プロレス歴)10年と思うと、まだいけるし、まだやらないと。

――プロレスでは、大きな怪我の経験はありました?

志田:大きいものは、ないですね。

――柔道や剣道のバックボーンがうまく役に立ったのでしょうか?

志田:体が丈夫なんです。風邪とかも……気付かない(笑) 怪我も、普通の骨折はないですし、剣道をやっていたころに疲労骨折をしたんですけど、そのときは気付かず、あとからお医者さんに「折れてたよ」と言われました。

――忍耐力があるというか……鈍感?(笑)

志田:鈍感力です(笑)

――プロレスを本当に自分の仕事として決めるきっかけはありましたか?

志田:プロレスをすることによって、自分の夢がどんどん叶うんですよ。映画で主演をやらせていただいたこともそうですし、小さい頃からずっと歌手になりたかったんですけど、プロレスを始めたことでCDを作らせてもらいました。イギリスに行きたくて英語を勉強していたら、プロレスでイギリス遠征に行くことができました。プロレスを通じて、自分の夢が、数えきれないくらい叶っていきました。小さい挫折や悔しいこともありましたけど、プロレスを始めてから、私の人生が上向きになりました。

――プロレスをやって夢が叶ったんですね。ファイティング・ミュージカル「魔界」も、三年間継続されています。魔界に参加して、変わったことはありましたか?

志田:見られることに対する意識が格段に変わりました。魔界に出ている皆さんは立ち振る舞いが素敵なので、ただ立っているだけでもかっこよく見せることの重要さを、すごく学びました。

――魔界は、プロレスラーとして幅を広げようというきっかけになったんですね。

志田:そもそも魔界自体がプロレスと演劇の組み合わせで、志田の人生を表しているようなものですから、魔界は、今の時点で、志田光の代表作になるんだろうなと感じています。今は月に一度、三年かけてきましたけど、もっと時間をかけて、志田光の代表作を今作っているんだろうなという意識があります。

――これから、魔界でチャレンジしたいことはありますか?

志田:海外公演が、みんなのひとつの目標ですね。いけると思うんですよ。かっこいいし、言葉がわからなくても伝えられると思うので。

――イギリスに行く夢がかなったとのことでしたが、英語は話せますか?

志田:英語は、普通の会話はできます。でも、プロレスって英語がいらないんですよ。凄いですよね!プロレスラー同士は、言葉がなくても通じちゃうんですよ、プロレスで(笑)だから魔界も通じるんですよ、戦いで。

――魔界はオリエンタル色が強いので面白いですね。例えばフランスなら、今のパッケージをそのまま持って行って勝負してもいいかもしれません。志田さん自身が和の美人という感じがするから、合うような気がするんですよ。

志田:フランスは日本のアニメとか漫画とかが人気ですからね。夢ですね、海外公演。あとは、今でも一部実現していますけど、プロレスラーだけが戦うんじゃなくて、ミュージシャンや俳優、力士など、各業界の一流の人が、異種格闘技戦的な感じで戦う場所になったら面白いと思いますね。全然関係ないところ、たとえば書道家とかでも(笑)! 夢が広がります。

――縛られていない世界なら参戦しやすいですよね。そこは演出家のゆうしゃさんにお願いして(笑)

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<志田光のクリエイター。さくらえみ、田村欣子、朱里>

――話は変わって、プロレスラーの師匠に当たる人はどなたですか?

志田:さくらえみ選手(現・プロレスリング我闘雲舞代表)です。

――どんなことを学びましたか?

志田:アイスリボンにいた頃の代表で、プロレスを教わった方なんですけど、最初はすごく嫌いでした。口うるさいおばさんだなーと(笑)

今思うと、プロレスを教える天才なんですけど、特にプロレスラーとしてのふるまいを本当によく教えてくださったと思います。印象に残っていることがあって、「マイナスなことを書くな」って、すごーくうるさかったんですよ。ブログに何を書くな、Twitterにそんなこと載せるなと言われていたんですけど、そのころは二十歳くらいで、全然意味が分からず、仕方なく言うことを聞いていました。だけど今思うと、確かに、お客さんに元気を与えるべきプロレスラーがマイナスなことを書いていたら、お客さんは読みたくないですよね。とてもわかるんですよ。フリーになって、自分でプロデュースする中で、さくらえみさんの言葉は本当に大事なことだったと気付きました。プロレスラーとしてのあるべき姿、人前に立つ人間としてのあるべき姿を教えていただいた気がします。

――デビュー当時に憧れた先輩や、レスラーとしての理想像はありましたか?

志田:んー……あまりいませんでした。当時はプロレスを知りませんでしたから。ただ、NEOの田村欣子さんが引退されるときは、本当にショックで、「行かないで」と思いました。最初の映画も一緒に出させていただいて、シングルも何度もやらせていただきました。田村さんの攻撃はめちゃくちゃ痛いんですよ。ド新人に対しても容赦なく痛めつけてくるんです。デビューして二戦目が田村さんとのシングルで、死ぬ!と思いましたね。痛すぎて、タップしたいけど、どこにも手が届かない。その頃の私はプロレスを好きになれず悩んでいました。田村さんは私を気にかけてくださっていて、あの方が辞めるまでに、ちゃんと成長した志田が見せられたらよかったなと、今でも思います。

――先輩との戦いがあって、今があるんですね。現時点でのタッグパートナーである朱里選手はどんな人ですか?

志田:朱里ちゃんは……変人? 格闘技でもバリバリやっているじゃないですか。それでも、たまにプロレスのマイクで「争いはやめようよー」とか言ったりするんです。何しに来てるんだオマエってなるじゃないですか(笑)本当に何も考えていないという雰囲気があって……天然さんですね。私が言ったことを、全部「いいよ?」って言ってくれますから。オマエ考えてないだろって思うんですけど(笑) だけど意外と、深く聞くと、自分のしたいことやなりたいもの、目標や内面がすごくしっかりしている。頑張り屋さんですし。

――タッグを組む時は、志田さんがチームリーダーですか?

志田:それを朱里ちゃんは「おっけー、わかったー」って(笑)

――朱里さんとは控室で会話していますか?

志田:本当にくだらない話もしますよ。こないだは、オススメの漫画について話してました。最近本読んでる?って話とか、魔界についての話もしました。

――(朱里さんの)魔界でのキスシーンについては何か話してました?

志田:特にはなかったですね……。「やりまーす」みたいな程度で。いつもこんな言い方なんですよ(笑) 怒ってる朱里ちゃんを見たことがないんです。私はすぐ怒っちゃうタイプなんですけど、朱里ちゃんは、後輩に対してでも、全く見たことがない。本当に天然で、ゆるーい感じです。だけど、ちゃんと芯がある。

※OZアカデミー公式発表より

――強さがあるからこそ、パートナーの信頼につながっていると思います。

志田:朱里ちゃんにも負けていられないって思うし、同い年なので、あれだけ頑張っているのを見たら、やる気が出ますね。

――トレーニングも一緒に?

志田:全然ないです。そもそも彼女のトレーニングについていけないと思うんですよ。いっしょに舞台をやったりするんですけど、舞台の本番前に格闘技の練習をしてきたリ、大阪で一緒に試合に出た後で、ダッシュで帰ってそのまま練習行ってきたリ。ストイックすぎるんです。試合で会って、「あさって総合(格闘技)の試合でしょ、何してんの? プロレスに出ている場合じゃないでしょ!?」って思ったりしますよ。

――ヘビーなスケジュールでもやっちゃうんですよね。だけどそんな朱里さんは天然、と。

志田:あ、天才っ!(笑) 天才です!

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<志田光が、プロレスの新時代を作る。壁を、超える。>

――志田さんはいろいろな団体に参戦されていらっしゃいます。レギュラー参戦されている各団体についての、志田さんの印象や立ち位置を聞かせていただけますか?

志田:もともとキャラをあまり作りたくなくて、志田光はどこでも志田光でありたいんですが、OZアカデミーではダイナマイト・関西選手も引退して、今がまさに、世代交代の時代です。志田・朱里がタッグ(OZアカデミー認定タッグ)のチャンピオンで、松本浩代がシングル(OZアカデミー認定無差別級)のチャンピオン、花月もそれに挑戦しました。OZさんは老舗団体で、レジェンド級の方がいっぱいいらっしゃる中で、私たちの世代がOZの時代を変えていくべき時が来たと思っています。松本・志田・朱里・花月と、全員がライバルでありつつも、この世代で一貫した思いをもって、世代交代を成し遂げていきたいです。

――その中では志田さんが主役でありたい、と。

志田:もちろんです! 自分が主役じゃないと意味がないですから。

――プロレスリングWAVEにも参戦されていますね。

志田:メチャメチャ試される団体だと思ってます。なんでもできなきゃいけないんです。「志田さんならできるでしょ?」と、次々と課題をぶつけてきてくださる団体です。

――GAMIさんが(魔界で志田さんが演じる)鶴姫役を狙っているそうですけど(笑)

志田:会うたびにめっちゃ言われます(笑) 「あたし鶴姫やってもいいよー、そのときは安成役は小峠(篤司)君、安房役は飯伏(幸太)君ねー」みたいな(笑)

――GAMIさんのお気に入り選手ばかりじゃないですか(笑) いろいろと危機感が募りますね。

志田:GAMIさんはプロレス頭が凄いので、いろいろなルールを開発してくるし、見て面白いと思ったものをすぐ取り入れてきますね。3WAYだけどチェンジ権はふたりとか、やっている方はマジでやめてくれと思うけど(笑)そういう試練を与えてくれるからこそ、WAVEでは成長できています。

――プロレス頭を鍛えられる団体ですね。

志田:よくわからないルールが多いですけど、楽しいです。毎回が挑戦ですね。

――最近はセンダイガールズプロレスリングでも戦っています。

志田:いやー、単純に面白いです! みんなガツガツしているのがすごく面白い。里村明衣子を倒すという大きな目標があるので、彼女を倒すまでは出続けないといけない。

――朱里選手が倒しちゃいましたね!

志田:勝った瞬間に「うぉお!!」ってガッツポーズして、胸が熱くなる試合でした。次は私だな、とも思いました。

――朱里さんも、里村さんを倒して、プロレスラーとしての大きな自信になったと思います。エポックメイキングな試合になりましたね。

志田:松本浩代も、里村さんを倒しましたね。女子選手の間では、横綱・里村明衣子を倒すという、一種のボーダーラインがあると思うんですよ、そこを超えていないのが私の足りないところですね。それを超えたい。

――驚異の新人・橋本千紘さんが、アジャ・コングさんを破ってチャンピオンになりました。

志田:こないだ初めてタッグマッチで試合をして、その時はそれほどでもなかった。裏を返せば、相手もそれほど必死ではなかったのかもしれません。そう思うと、シングルで里村明衣子とアジャ・コングを倒した、橋本千紘(の本気)を感じられていないし、引き出せていないのでしょう……。

――力量を図るのはこれからですね。

志田:驚異ではありますよね。体も全然違うし、高角度のジャーマン、オブライトも嫌ですね。できれば受けたくないです。

――カサンドラ宮城さんも、変わった方向で驚異の新人です。

志田:彼女とは最近よく当たっていますけど、あいつが「出身地・魔界」とコールされるのが本当に嫌(笑) お客さんが「魔界だって」ってささやいてるんですよ……。彼女は凄いですよ。成長が本当に急角度です。仙女が凄いのは、新人の「あわよくば食ってやるぜ」感が強烈なところです。そこが本当に面白い。

――その中で、里村さんがターニングポイントになるんですね。ヒップアタックを封印した志田さんの、新たな目標が生まれましたね。最後に、個人的な告知もあればお願いします!

志田:あ、舞台やります。5月です。元プロレスラーのMARUさん主催で。今回も主演でやらせていただいて、プロレスラーさんを呼んでいます。

――去年は「和牛ステーキ1ポンド」で丸藤正道さんと共演しましたね。プロレスでも演劇でも、大活躍ですね。これからのご活躍を期待しています!

志田光選手公式ブログ

脱ヒップアタックで今後どの様な姿を見せてくれるのか!尻神教解散後の志田光選手の動きが見逃せない。

(インタビュアー:山口義徳 撮影:二瓶隆弘)

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