「課長職」月収49万円でも、手取りは40万円弱…さらに「再雇用後」に待ち受ける現実

(※写真はイメージです/PIXTA)

「課長」というと、部長と双肩してまさに「中間管理職」というイメージですが、給料はどのくらいもらっているのでしょうか。これから課長になる人はもちろん、今現在課長である人にも、辛い現実が待ち受けているかもしれません。本記事では「定年退職の残酷な現実」について見ていきます。

「課長」職の平均給与は「49万円」だが

厚生労働省『賃金構造基本調査』(令和5年)によると、日本の「課長」職の平均給与(所定内給与額)は49万800円(年齢49.2歳、勤続年数20.9年)。

手取りにすると月収40万円弱ほどになります。部下をマネジメントする立場として、仕事の責任は重いものですが、「課長」職の平均手取りが月40万円弱というのは割に合うものでしょうか。

定年間際の方に話を聞くと、課長の辛い現実が明らかになりました。

不動産管理会社で課長をしていた飛田さん(60歳/仮名)。給与は平均額とほぼ同じで49万円、ボーナスは年2回支給されていました。仕事にやりがいを感じていた飛田さんでしたが、定年の波には逆らえませんでした。

「『嘱託社員として今後もウチで活躍してくれないか?』と言われたときは、悪い気はしなかったです。年を取っても必要とされているのは嬉しいものでしょう。ただ、その喜びも一瞬だったな」

「嘱託社員になった場合の給与を見たら、今の半分以下、20万円ほどだったんです。雇用契約としてそんなことが許されるんですかね。バカにするのもいい加減にしてください、と思わず怒鳴ってしまいました」

飛田さん、この10年間休まず働いてきました。嵐であろうと、電車が止まろうと、物件でトラブルがあればすぐに駆けつける日々。病欠もまったくなく、会社からの信頼は厚いもので、給与も毎年順当に増え続けていました。

そんな折に言い渡された、酷すぎる減額。二つ返事できるわけがありません。「いったん持ち帰らせてください」と伝え、奥さんに相談することにしました。

当日は一人で悶々と考えた飛田さん。週末の夜、思い切って奥さんに話しかけました。嘱託社員にならないかと勧められたこと、給与のこと、怒鳴ってしまったこと…。洗いざらいに伝えたのち、奥さんは「それで、あなたはどうしたいの?」と一言。あっけらかんとした奥さんの態度に、飛田さんも思わず拍子抜けです。

「子どもたちも巣立ったんだし、もうお金のことはいいじゃない。辞めるのもありじゃない? あなたがこの先20年も働かずに過ごせるとは思えないけど」

この余裕、理由があります。実は飛田家には、親から受け継いだ約2,000万円もの投資信託、1,000万円の預貯金があったのです。

今は亡き奥さんの両親は、定年後間もなく持ち家を手放し、老人ホームに入居していました。その際、土地・家ともに破格の値段で売却。余剰資金を投資信託に回していました。

両親の死後、遺産はすべて彼女に引き継がれました。生前から投資信託の存在を聞いており、「この資産には手をつけず、とにかく老後まで放っておくように」と言われていた奥さん。頑なにその約束を守っていました。自身も働きながら月々の配当金を貯金に回し、コツコツと老後資金を形成していたのです。

夫の飛田さんは、ぼんや〜りと投資信託の存在を聞いてはいたものの、まさかそこまでの金額に膨れ上がっているとは知らず、絶句です。(なんか話が思わぬ方向に行ったな…)と思いましたが、老後資金の心配はないとわかり、ひとまずは安心しました。

「再就職ってのもなかなか厳しいものですよ」

悩んだ末、飛田さんは嘱託社員として同じ職場で働き続けることを選びました。

「この年で再就職ってのもなかなか厳しいものですよ。履歴書書いて、面接して、一からまた勉強して…。身体もですが、気持ち的に辛いものがあります。だからといってずっと家にいる選択肢はなかったんです。『お金の心配はない!』と妻が宣言していたのを信じて、この会社に残ることにしました」

「正直、腹が立つこともありますが、開き直っちゃえば結構楽ですよ。仕事はもちろん真面目にやってますけど、『給与も減ってるしなあ…』と息を抜くことはありますね。以前よりも責任も減りましたし、のびのびと仕事しています」

飛田さん、辞める予定はないものの、年ごとの契約更新で切られる可能性もあります。

「そしたら転職ですよねえ、まあ。働くのを辞める、というのはありえないです。この先何十年も家に居続けるってしんどいです。高齢者に働かせるのはよくない、みたいな風潮ありますけど、私は働きたい」

飛田さんの余裕は、老後資金が十分あってのこと。奥さんの投資信託と預貯金がなければ、また状況は変わっていたことでしょう。

現在、現役世代の税や社会保険料負担は上がる一方です。「給与は上がっているはずなのに、手取りは変わらない」という声も聞かれます。

余剰資金を貯蓄や投資にまわそうにも、まず大した余剰がない…ということもあり得ますが、定年を迎えれば、再雇用後はかなり給与が下がってしまうことがほとんど。厳しい状況ではありますが、なんとかお金の知識をつけ、出来るだけ早くから準備しておく必要があると言えます。

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