史上初の公道自動車レースが開幕 V候補は大の日本通「好きな日本食はお好み焼き」

国際レースで初の公道レースが繰り広げられた【写真:Formula E】

サーキット場と化した東京ビッグサイト周辺

日本初開催となる電気自動車(EV)レースの世界選手権「フォーミュラE」が29日、東京・江東区で開幕した。国内の公道で国際レースが開催されるのは初めて。30日の決勝に向け、この日は記者会見とフリー練習が行われた。

ゆりかもめの真下を電動フォーミュラカーが猛スピードで駆けていく。日本初の市街地レースがついにベールを脱いだ。ピットレーンからコースに入り、まずは道路の感触を確かめる。雨の影響で水しぶきが上がる中、徐々にスピードを上げた。止まり切れずにバリアに当たったり、車同士の接触もあった。サーキット場と化した東京の臨海エリア。歴史的な第一歩を刻んだ。

「電気自動車のF1」と呼ばれるフォーミュラEは2014年にスタートし、今季10シーズン目。EVのため、排気ガスを出さず、音が静かなことが特徴だ。車体は全車共通で第3世代のマシン「GEN3」を使用。最高速度は時速320キロに上る。シーズン10にはジャガー、ポルシェ、マセラティ、マクラーレンなど全11チーム22人のドライバーが名を連ね、国内メーカーでは唯一日産自動車が参戦している。

注目はジャガーTCSレーシングだ。今回第5戦となる東京大会が100レース目のメモリアルとなる。ドライバーは日本でもおなじみニック・キャシディがミッチ・エバンスとのコンビで、節目の優勝を目指す。

ニュージーランド出身のキャシディは、ここまで4戦を終え、ランキング首位に立つ。日本は特別な場所だ。19年に全日本F3選手権、スーパーGT選手権、スーパーフォーミュラ選手権を制覇し、日本のモータースポーツタイトルで3冠を達成した実績を持つ。「東京に戻れてうれしい。たくさんの思い出があります。日本は特別に重要です」と意気込んだ。

日本では6年間暮らした。印象を聞くと、「すべてがきれいでとても気に入っています。非常に組織的で、丁寧です。日本文化にはとても素晴らしいものがたくさんあると思います」。好きな日本食は、「焼き肉、お好み焼き。私のお気に入りの2つです」と笑顔を見せた。

ニック・キャシディ(右)、ミッチ・エバンス【写真:ENCOUNT編集部】

激戦のレース展開 「ドライバーはみんな飢えている」

一方、相棒でニュージーランド出身のエバンスは19年以来の来日だ。「日本が大好きなファンになってしまいました。日本の食事は素晴らしい。うわさには聞いていたけど、食べて本当に感動しました」とこちらも再来日に感激の様子だった。

東京ビッグサイト周辺の特設コースで争われ、一部に公道も含まれる。テスト走行はなかったが、チームはデジタル技術を使い、事前にシュミレーションを終えた。

キャシディは、「本当にワクワクしている」と話す一方で、「自信を持っているのですが、強豪もかなりいる。大変なレースになると思う」と予想。「日本で長年レースをした経験がある。日本のカテゴリーは世界で最高だと思っています。タイヤとかダイナミックスとか学んだことをフォーミュラEで活用できると思っている」と気合を入れた。

果たして栄えある“東京初代王者”に輝くのは誰なのか。

「それが僕の描く大きな絵です。僕にとっては(東京開催は)本当にラッキーだと思う。レーシングドライバーはみんな飢えている。みんなチャンピオンになりたいと思っている。ベストを尽くしてやりたい」(キャシディ)

フリー練習ではキャシディが6位、エバンスは7位と好位置につけた。ジャガーが誇る“日本大好きコンビ”が週末の東京を熱くしそうだ。ENCOUNT編集部/クロスメディアチーム

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