日本銀行が金融政策決定会合にてマイナス金利政策を解除することを決定
2024年3月19日、日本銀行が金融政策決定会合にてマイナス金利政策を解除することを決定しました。
長らく続いたマイナス金利が終わることで、「これから住宅ローンを借りても大丈夫?」と不安に感じている人も多いかもしれません。
本記事では、元銀行員が住宅ローンを借りるときに考えておきたいリスクについて紹介します。
後半では意外と盲点となる「収支変動のリスク」についても解説します。
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住宅ローンで考えておきたいリスク(1)金利変動リスク
マイナス金利政策の解除が決定した今、特に注意したいのが金利変動リスクです。
住宅ローンの金利には固定金利型と変動金利型の2つのタイプがありますが、住宅金融支援機構の調査によると、2023年4月から9月の間に住宅ローンを借りた人の約75%が変動金利型を選んでいます。
変動金利型は、低金利の環境下では利息の負担を抑えられるメリットがあるものの、金利が上昇すると返済額が増加する点に注意が必要です。
今後、もしも段階的に利上げが実施されることになると、借入当初の想定よりも住宅ローンの返済負担が大きくなることがあるかもしれません。
これから変動金利型を選ぶ場合は、返済負担が増加するリスクをしっかりと考えておく必要があります。
住宅ローンで考えておきたいリスク(2)災害リスク
自然災害が多い日本では、災害リスクも軽視できないポイントです。
「火災保険や地震保険でカバーできるだろう」と考える人もいるかもしれませんが、必ずしも保険金だけで損害金のすべてをカバーできるとは限りません。
たとえば、地震で自宅を失った場合であっても、基本的に住宅ローンの返済は免除されません。
保険金で損害金や残債をカバーできなければ、住宅ローンだけが残ることとなってしまいます。
災害の規模が大きい場合は何らかの救済措置が設けられることもありますが、災害によって自宅を失ったときのリスクはしっかりと留意しておく必要があるでしょう。
なお、災害のリスクをゼロにすることはできないものの、「ハザードマップを見て立地条件から選ぶ」など、なるべくリスクを低減する対策に取り組むことも大切です。
自然災害に対応した特約もある
金融機関によっては、自然災害によって自宅が被災したときに返済額の保障が受けられる特約があります。
通常の住宅ローンよりも金利が上乗せされることが多いものの、万が一の事態に備えられるのは大きな安心感にもつながります。
災害リスクへの対策として、こうした特約を利用することも検討してみるとよいでしょう。
最後に忘れてはいけないのが、世帯における「収支変動のリスク」です。次章にて確認しておきましょう。
住宅ローンで考えておきたいリスク(3)収支の変動リスク
住宅ローンは、数十年かけて返済していく大きなローンです。
長い期間返済を行う中で、収支に変動が生じることも考えられます。
たとえば、「転職で収入が減少した」、「病気やケガで働けなくなった」といった場合、住宅ローンの返済が難しくなることもあるかもしれません。
もし返済が滞ってしまった場合、せっかく購入した自宅を手放す選択肢も視野に入ってきます。
収支の変動は誰にでも起こり得るリスクですので、「どれくらいの変動に耐えられるか」ということをきちんとシミュレーションしておくことが大切です。
退職金があてにできないことも
住宅ローンを借りる際は、「退職金をあてにしすぎない」ということも重要です。
ここで、厚生労働省の「就労条件総合調査」をもとに退職金の推移を確認してみましょう。
同調査では、5年毎に退職金に関する調査を行っていますが、2002年(平成14年)の調査では約2500万円だった大卒者の退職金が、2023年(令和5年)には約1900万円まで減少しています。
このまま右肩下がりに減少が続くと、「退職金で一括繰上返済する」という選択肢も難しくなるかもしれません。
住宅ローンの返済計画を立てる際は、退職金による繰上返済ありきで考えるのではなく、毎月の返済で完済できるよう無理のない計画を立てるようにしましょう。
長期のライフプランを具体的に立てよう
住宅ローンを組む際は、長期のライフプランをしっかりと立てておく必要があります。
返済中にリスクが発生したときにもきちんと対応できるよう、「いつどれくらいの支出が発生するか」、「家計の収支はどれくらいで推移するか」といったことを具体的に試算してみましょう。
参考資料
- 住宅金融支援機構「住宅ローン利用者の実態調査【住宅ローン利用者調査(2023年10月調査)】」
- 厚生労働省「令和5年就労条件総合調査概況」
- 厚生労働省「退職給付(一時金・年金)の支給実態」