65歳になってからもらえる在職中の老齢厚生年金は退職前の給与を基本に計算されるのですか?

年金制度にまつわることは、難しい用語が多くて、ますます不安になってしまう人もいるのではないでしょうか。今回は、老齢厚生年金の計算について、専門家が解説します。

老後のお金や生活費が足りるのか不安ですよね。老後生活の収入の柱になるのが「老齢年金」ですが、年金制度にまつわることは、難しい用語が多くて、ますます不安になってしまう人もいるのではないでしょうか。そんな年金初心者の方の疑問に専門家が回答します。 今回は、在職老齢年金の計算についてです。

Q:65歳になってからもらえる在職老齢年金は退職前の給与を基本に計算されるのですか?

「特別支給の老齢厚生年金を受給しながら今年65歳で1月末に退職後、翌日の2月1日より別の会社に就職して引き続き厚生年金に加入します。在職しながら、老齢厚生年金を受け取るのですが、今まで働いていた所と比べると再就職先では給与が低くなります。65歳になってからもらえる在職老齢年金は退職前の給与を基本に計算されるのですか?」(tentenさん)

A:65歳以降の在職しながらもらえる老齢厚生年金は、その月の総報酬月額相当額と基本月額で計算されます

在職老齢年金とは、60歳以上の人が厚生年金に加入しながら働き、老齢厚生年金(または特別支給の老齢厚生年金)を受け取る場合に、基本月額と総報酬月額相当額の合計に応じて、老齢厚生年金の一部または全額が支給停止となる仕組みのことです。 在職老齢年金とは、「基本月額(老齢厚生年金額の1/12)」と「総報酬月額相当額(月給と手当、ボーナスを12で割ったものの合計)」の合計が「48万円」(2024年4月からは50万円)を超えた場合、老齢厚生年金額が調整されます。 65歳からの老齢厚生年金の支給額は、65歳までの厚生年金の加入記録をもとに再計算されます。一方、在職老齢年金は「その月の総報酬月額相当額(【その月の標準報酬月額(月給)】と【その月の直近1年間の標準賞与額の合計の12分の1】を足したもの)」と「基本月額」で計算されます。 例えば、相談者「tenten」さんが1月末に月給(標準報酬月額)41万円、6月と12月にそれぞれ賞与75万円をもらっていた前勤務先を退職し、2月1日から再就職、月給(標準報酬月額)30万円となり、老齢厚生年金が120万円だった場合に、在職老齢年金によって老齢厚生年金がいくらになるのかを計算してみます。 ・基本月額:10万円(120万円÷12カ月) ・総報酬月額相当額:42万5000円(30万円+150万円/12) ※「tenten」さんの総報酬月額相当額の計算には、直近1年間でもらった賞与=前勤務先の賞与分が含まれます 10万円+42万5000円=52万5000円>48万円 となるので、在職老齢年金による支給停止の対象になります。 【2024年3月までの在職老齢年金による調整後の老齢厚生年金の支給月額】 在職老齢年金による支給停止月額=(52万5000円-48万円)÷2=2万2500円 在職老齢年金による調整後の老齢厚生年金の支給月額=(基本月額10万円-支給停止月額2万2500円)=7万7500円 この場合、在職老齢年金による調整後の老齢厚生年金として月額7万7500円が支給されます。 2024年4月分から、在職老齢年金によって支給停止になる基準額(支給停止調整額)が48万円から50万円に変更になります。 【2024年4月以降の在職老齢年金による調整後の老齢厚生年金の支給月額】 在職老齢年金による支給停止月額=(52万5000円-50万円)÷2=1万2500円 在職老齢年金による調整後の老齢厚生年金の支給月額=(基本月額10万円-支給停止月額1万2500円)=8万7500円 この場合、在職老齢年金による調整後の老齢厚生年金として月額8万7500円が支給されます。 文:拝野 洋子(ファイナンシャルプランナー、社会保険労務士) 銀行員、税理士事務所勤務などを経て自営業に。晩婚で結婚・出産・育児した経験から、日々安心して暮らすためのお金の知識の重要性を実感し、メディア等で情報発信を行うほか、年金相談にも随時応じている。 (文:拝野 洋子(ファイナンシャルプランナー、社会保険労務士))

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