【インタビュー】deadman、“道徳の系譜”を意味する19年ぶりアルバムに混沌と美「矛盾や嘘はない。それこそ20年前から」

deadmanが2024年3月30日、19年ぶりのオリジナルアルバム『Genealogie der Moral』をリリースすることに加え、ライブ会場および通販限定にてリテイクアルバム『living hell』を発売する。両アルバムともにサポートメンバーとしてお馴染みのkazu (B / gibkiy gibkiy gibkiy)と晁直 (Dr / lynch.)が全面参加するなど、現在のdeadmanならではの強固なバンドサウンドが凝縮された仕上がりだ。

タイトルにニーチェの著作でも知られる『Genealogie der Moral』(道徳の系譜)が冠された19年ぶりのオリジナルアルバムには全10曲を収録。2023年初頭の東名阪ツアーにて無料配布された音源「rabid dog」やMUCCとのカップリングCDに収録された「猫とブランケット、寄り添い巡り逢う産声」の新リミックスほか、本作のために書き下ろされた8つの新曲が収録される。

一方のライブ会場/通販限定リテイクアルバム『living hell』は、ライブで人気を博してきた過去の楽曲たちが新たにレコーディングされたアイテムとなる。同アルバム収録曲の「blood:2.0」にMUCCのミヤ、「follow the night light:2.0」にシドの明希がレコーディング参加、deadmanと縁の深い2人が楽曲に新たな息吹を注入した。なお、『living hell』は、今後配信の予定はない。

20年前からの変わらぬ本質と、現在の4人だからこその新たな進境に貫かれた2枚のアルバムについて、眞呼(Vo)とaie(G)にじっくりと語ってもらったロングインタビューをお届けしたい。

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■20年前と何も変わっていない■セッションしながら作っている

──一昨年2022年に解散時のメンバーによるリテイクベストアルバム『I am here』、そして昨年2023年はkazuさんと晁直さんがサポートで加わった現体制でのリテイクアルバム『dead reminiscence』がリリースされました。そして、いよいよdeadman19年ぶりのオリジナルアルバム『Genealogie der Moral』が発表されます。リテイクアルバムのリリースと、その前後でツアーも重ねていくなかで、現在のこの4人でのdeadmanがだいぶ掴めてきた感じでしょうか?

aie:そうですね。どんどんkazu君と晁直との4人バンドっぽくなっていて。あのふたりからも「こんなことしましょうよ」という提案が出るので、サポートとは名ばかりの4人組バンドという感じではいますね。

──この体制となって最初にでき上がったオリジナル曲はどの曲ですか?

aie:これが思い出せないんですけど(笑)。確か2023年のクアトロツアーで配ったシングル「rabid dog」が、このアルバム用の曲を作り始めて3曲目だったのは思い出したんです。「今ある3曲のなかからどれをシングルに選ぼうか」と言ったのを覚えてる。記憶は曖昧ですけど、もう1曲がMUCCとのスプリットシングル『産声』に収録した「猫とブランケット、寄り添い巡り逢う産声」で、もう1曲は「宿主」。この3曲が最初にできたんじゃないかなと思うんです。

眞呼:うん、おそらくそうですね。

aie:そこから、“アルバムを10曲入りにするなら、こういう曲が足りないな”と埋めていった感じですかね。

──楽曲制作方法は、この4人となっての変化というか、当時とは異なる新しいやり方をしていることなどもありますか?

aie:今回はスタジオで、メンバー4人揃って“せーの”でやっていった感じですね。ちょっと違うなと思ったら、そこでアレンジを変えて、「ここのビート感、どうしようか」とかもメンバーと相談をしながら作ったという。で、いざ眞呼さんが歌ってみて、「キーを変えたほうがいいんじゃないか」ってなれば変えてみたり。そういう意味では、本当に昔ながらのやり方で、20年前と何も変わっていないんですよね。セッションしながら作っているというか。

▲眞呼(Vo)
──その方法がやはりdeadmanにとっては一番いいと。

aie:僕はそうですね。kazu君といくつか一緒にやっているバンド(The god and death stars / gibkiy gibkiy gibkiy)もそれに近くて。でも、晁直はlynch.とはまったく違う作り方だそうで、このやり方をすごく面白がってくれてますね。例えば、僕がギターをバーっと弾いて、なんとなくのドラムのアプローチを決めるんですけど。「ここで僕とkazu君は6/8拍子で弾くけど、ドラムのビートは4/4拍子でいて」とかだけは言って。「あとは好きにしていいよ」から始めていくんです。そのなかで気になる箇所があれば言うくらい。ほぼ晁直の好きなようにやってもらう感じなんです。

──それはこのバンドのムードなり世界観を理解しているからこそ遊べる面白さでしょうね。

aie:晁直とも3〜4年一緒にdeadmanをやっているし。結構スムーズに進みましたね。

眞呼:aieさんのビジョンがしっかりあるんですよね。「これってこうなのかな?」って訊いたときに、ちゃんと答えが返ってくる。ガイドになるようなデモテープがあるわけじゃないんですけど、曲の構成だったり、曲そのものの設計図がaieさんのなかにある感じなので。スムーズと言えばスムーズなんですよね。

──そのセッションの時点で、眞呼さんのメロディであったり、歌詞のテーマ性も引き出されていく感覚ですか?

眞呼:そうですね。たとえば私は、字面をいっぱい並べられて説明されるのは苦手で。その字面を絵で見せてくれたほうがわかりやすいタイプなんです。映画音楽であれば、“このシーンだったらこういう音楽だよな”っていうのが漠然とあると思うんですね。それと同じように、“この音楽だったら、この場面に当てはめられる”っていう感覚。それはすごく映像的なもので。そうなると歌詞も出てくるんですよね。

──先ほど挙がった3曲のなかでは、特に「宿主」のサウンドから映像的なものや感覚的なものが見えそうです。音の歪みや変則ビートから、ちょっとずつ何かが狂っていく感じが、音からも立ち上がってくるものがあります。この曲は、どういったイメージでしたか?

aie:「宿主」は元々、deadmanがよくライブのラストにやる楽曲「蟻塚」の世界観で。その位置付けにありながらちょっと明るく…というとまた違うんですけど。なので、仮タイトルは「明るい蟻塚」で。

眞呼:そうでした(笑)。

aie:そういう位置付けの曲だから、“これはアルバムのラストの曲なんだろうな”とは思っていたんです。で、曲の始まりのギターの譜割とか、それに対するドラムのアプローチを先に決めて。そこから、細かいところはみんなでアレンジを重ねていったという感じですね。

眞呼:ギターの音数があんなにも少ない…本当に難しい曲ですよね。誤魔化しが効かないから。

aie:難しいです。

眞呼:よくやるなとは思うんですけど(笑)。できるからこそ、ですね。

▲オリジナルアルバム『Genealogie der Moral』
──「宿主」のベースラインとメロディラインの兼ね合いも、不協に聴こえながら、いいハーモニーを築いているというか、独自の世界観を生んでいます。なんて表現したらいいのか…いろいろな歯車が、ちょっとずつかみ合いそうであり、狂いそうであり、という感覚が続いていく不穏さと、不思議な浮遊感が醸す雰囲気が印象的で。平衡感覚が奪われていくような曲ですね。

眞呼:いい表現ですね(笑)。自分で書いていながら、聴いてて“気持ち悪い曲”って思いますもん、やっぱり。薄気味悪いというか、“最悪だ!この曲”っていう。

aie:ははははは!

眞呼:でもそういうものが出せたな、という感じがありますね。

──最初に眞呼さんが「宿主」のサウンドから受けた印象はどういうものだったのしょうか?

眞呼:あらかじめ「蟻塚」というワードも出てしまっていたので、それも含めた上で聴いていたと思います。より重く、より深く、より絶望的なものにしようかなと。この歌詞の人物になったとしたら、もう本当に最低な人生だなっていう。求めていた優しさも束の間のもので、また絶望の繰り返し…ほんの一瞬だけ優しさを味合わせておいてどん底につき落とされて、それがまた繰り返されるって、もうゲロ吐きますよね。

──アルバムは「宿主」がラストナンバーでなく、インスト曲「dawn of the dead」で締め括られます。「宿主」があまりに壮絶ゆえ、最後ではないという感じですか?

aie:歌がある曲としては「宿主」が最後だと決めていたんです。一方で、インスト曲「dawn of the dead」を置く位置が難しいなとは思いつつも、1曲目だと普通だし。ちょっと洒落というか…20年前にもやっていた手法なんですけど、途中でニルヴァーナの曲のドラムパターンが入ってくるとか、そういうのにdeadman好きな人がピンときてくれたら面白いなと思って、「dawn of the dead」で終わるという。しかも、ちょっとライブの始まりを予想させるというか。“また始まるんじゃねえの?”っていう感じで終わるのがいいかなと。わりとすべて、そのときに思いついたものをパッケージしているだけだから、頭を使って考えたというよりは、瞬発力で物事を決めていくことのほうが多いかもしれないですね。

──「宿主」でアルバムが終わるのとは、また作品の読後感みたいなものが違いますしね。

aie:「宿主」終わりでもいいんですけど、あれでアルバムが終わると、ちょっと暗すぎるかなと。結局、最近はサブスクで聴く人が多いと思うので、そこから他の人の曲にいくのか、それともリピートで頭に戻るのかというのもありますが、そういうことも含めてインストが一番最後がいいのかなとは思って。で、また1曲目に戻るみたいな。

眞呼:あとは、映画でいうとラストシーンに主題歌が流れて、エンドロールがあって最後にインストみたいなのが流れてというのがありますよね。その感覚ですね。結果、その余韻がより痛々しさを感じさせるっていうのはあると思います。

aie:それだ! エンドロールだ。

眞呼:アルバムの1曲目や真ん中あたりにインストを挿入するのはよくあるケースで。最後に持ってくるのってほぼないんですよね。新しいアプローチの仕方をdeadmanがやったというか。

■今、僕が話していることも■僕の言葉じゃないかもしれない

──アルバムの幕開けとなる1曲目「in the cabinet」で、まずインパクト抜群でカオスな始まりがあって、聴き進めていくにつれて今度はずっしりと、歪みが体に溜まっていく感じがある。そんなアルバムだなと思います。

aie:今の音楽の聴き方で考えると、若い子は特にですけど、10曲目まで辿り着く人って少ないと思っているんです。これがサブスクだとしたら、1曲目がよかったら2曲目、続いて3曲目と聴いて、そのままいっても4曲目くらいかなと思ってて。であれば、ファーストインパクトとして1曲目に選んだのが「in the cabinet」。また毛色の違う2曲目や3曲目があって。それ以降はきっと好きな人しか聴かないだろうから。

──そんなことないと思いますけどね(笑)。

aie:ははは。なので、ライト層も視野に入れた曲順にはしたかなと思います。好きな人は最後まで聴いてくれるから。そういう並びかな。まぁ、だとしたら、1曲目は「in the cabinet」じゃないと思うんですけど。

眞呼:ははははは。

aie:ただ、これは“この曲がダメなら、あなたはきっと最後までもたないから、ここでさよなら”と言える曲だし。なので、ドレスコードみたいなものというか。

▲aie (G)
──「in the cabinet」はまさにdeadmanのいろんな要素を詰め込んだ曲ですね。オルタナ、ハードコア、トライバルビートや、独特の世界観が襲いくるもので。これはどの段階でできた曲ですか?

aie:もう最後のほうでしたね。

眞呼:考えすぎちゃって、僕のメロディや歌詞がまったく進まなくなっちゃったんです。

aie:ゴリゴリの変拍子ですからね。

眞呼:特にメロディは考えすぎちゃいましたね。私の尊敬する方が奇人すぎて、その曲を聴いちゃったんですよね。で、“これではあかん。これじゃダメだって”と思って(笑)、何回も作り直しました。

──その尊敬する方というのは?

aie:Merry Go Roundです。これは我々がよくやるパターンで、僕のイメージするものが仮タイトルになってたりするんですよ。例えばそれが「BUCK-TICK」のときもあれば、今回なら6曲目の「the dead come walking」の仮タイトルは「THEE MICHELL GUN ELEPHANT」。1曲目「in the cabinet」の仮タイトルは我々の先輩のバンド「Merry Go Round」。「我々は直属の後輩だからMerry Go Roundをイメージした曲を作る権利がある!」と言いながらやりました。

眞呼:すごいバンドですからね、とにかく衝撃を受けた。

aie:我々なりのMerry Go Roundリスペクトというか。リスペクトを込めたオマージュもあるし。というのが今回は多いかな。

──「in the cabinet」の歌詞には想像力をかき立てられます。いろんなイメージが散りばめられた言葉が綴られていて。音も言葉としても、“これは一体何を歌っているんだろう”と混沌としていく感じもある。

眞呼:そうですね、人格がいろいろある。人格が分裂している人の立場のことを書いているんです。統合失調症であったり、寄生してる思考だったり。自分じゃない人の思考が、自分のものだと誤認して言葉を発している状態というか。自分じゃないものと、いろんな人格がひとつにまとまっている…そういうテーマのもとに歌詞を書いているんです。

──なるほど。

眞呼:幻想だったり、幻聴だったり。でも、その声が聞こえるっていうっていうことは、本当は幻想じゃないのではないかって。聞こえている、言葉を発しているという意味では、少なくともその人にとっては現実だから。そういうところからアプローチした歌詞ですね。今、僕が話していることも、僕の言葉じゃないかもしれない。本来の僕の考えじゃないかもしれない。誰かに言わされているという場合もあると思う。それを自分のなかから出した言葉だって自分が信じているだけで。

──では、人格とはどこにあるのかという。

眞呼:という、カオスな歌詞になっていますね。

──それはアルバム全体を貫いている感じもありますか?

眞呼:そうですね、そうなってしまったのかもしれない。いろいろな人の考えを僕が拾ったからかもしれないし。でも、事実として書いている。

──となると、このアルバムのタイトル『Genealogie der Moral』は、ニーチェの著作でもある『道徳の系譜』がとてもしっくりときます。道徳なり善悪なり、正しさとは何かなど、いろんなものがせめぎ合ったり時に、それが反転していったり。現代はその判断がつかない世界になってきているようにも思いますし。

眞呼:明確なものが薄れてきているというかね。発した人間がいないですから。本当のことを言っている人はいるんですけど、やっぱり届かない。全員がそれを吟味して噛み砕いていない。わかりやすく言うなら、キリストだったり、釈迦だったりの言葉って、全部が全部、その人の言葉がそのまま伝えられているとは思えないんです。きっとどこかで改ざんされているし、その集団に都合のいい解釈をするように、言葉を変えているはずななので。

──操作されているわけですね。

眞呼:だから矛盾も出てきている。“ここではこうなのに、こっちでは違うことを言ってるんじゃないかな”という矛盾。その矛盾こそ、ある時点で作り替えられているんだろうなという点で。そうなると、道徳も一緒。道徳だって、権利や利権を持った人の考えに沿って改ざんすることができる。昔からある教えや道徳というのは、現時点ですごくボヤッとしているというか。場所も変わって状況も変われば、正義も悪も変わってきますからね。

──立場が変われば、ですね。その善悪を糺す(ただす)ということではなく、サウンドや歌でまざまざと見せられている感じがあるから、より掻き乱されるんでしょうね、このアルバムは。

aie:…嫌ですねえ、俺たち。

眞呼:はははは、そうなの、嫌なんですよ。

aie:知らなきゃよかったーっていう(笑)。

──そうですよ(笑)。見ないようにしていた暗部が、ポップに明らかにされてしまうというか。ちなみにポップ性や鋭さ、キャッチーさということでは、「零」は他の曲と佇まいが違うなと感じますが、どういうふうにできた曲ですか?

aie:これはもともと眞呼さんのデモテープがあって。

──眞呼さん発の曲だったんですね。

aie:そうです。デモを聴いて、俺とkazuくんで「こういうビート感でこういうアプローチにしようか」とか、その日の夜に飲みながらアレンジを話していたんです。それで「明日、試してみましょう」ってやってみたら、わりとすんなりと決まった感じで。

眞呼:イメージしていたアレンジにピッタリだったというのももちろんあるんですけど、それぞれの解釈で、自分の音でやってくれれば一番いいんですね。私も最初の歌メロとは全然違うものになっているし。つまり、みんなの音を聴いて、歌も変わってくる。それがすごくよかったなと思います。

aie:他の曲と違って、メジャースケールな感じなので。そこをぼやかすのか、前面に打ち出すのか、どちらにしようかというのはあったんです。イメージは僕の中では、BUCK-TICK。「BUCK-TICKの突き抜けたポップさというか、そっちの方向でアレンジしていきましょう」って酒を飲みながら喋っていた気がします。あと、このアルバムには他に、BARBEE BOYSもあるんですけどね(笑)。「the dead come walking」はオケがTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTで、歌がBARBEE BOYSっていう。

眞呼:Bメロなんて杏子さんが歌ってるんじゃないかっていう(笑)。

■ビジュアル系のカテゴライズではないですよね■このバンドって3/4人がBOØWY好きだから(笑)

──またアルバムのリードとして「静かなくちづけ」がシングルリリースとなりますが、この曲をチョイスしたのは?

aie:シングルとしてMVも作るということで、やっぱり初めましての方や多くの方々に聴いてもらう曲として入りやすいのかなと思って選びました。混沌とした音楽をやっているというdeadmanの側面と、美しい曲をやっているというdeadmanの側面。その両極端のうちの後者というか。ただ、これを聴いて、もっとdeadmanを聴いてみようと初めて手に取ると、最新アルバムの1曲目が「in the cabinet」という…そこに俺たちの性格の悪さが出てる(笑)。もう蟻地獄に近いですよね、「おいでおいで」と誘っておきながらも。

──終いには、抜け出せられなくしてしまうという(笑)。「静かなくちづけ」は非常に繊細な美しさがある曲ですが、特に眞呼さんの抑えたボーカルや歌声が印象的です。

眞呼:この歌い方って、実は以前ちょっと試したことがあるんです。しかも人の曲…MUCCのカバーで試したんです。思いのほか、それがよかったんですよね。

aie:「死の産声」というMUCCとのスプリットシングル収録曲です。YUKKEが書いた曲なんですけど、最初にこの曲を聴いたときの僕の印象が、安全地帯だったんですよ。「YUKKEの新曲いいじゃん。安全地帯みたいで」って眞呼さんとも話をしていた上で、歌録りのときに「じゃあ、ちょっと玉置(浩二)さん入れてみましょうか」みたいなディレクションを(笑)。

眞呼:玉置浩二も入っているけど、僕個人は中森明菜っぽくしようかなとかね。思いのほか、ばっちり楽曲にも合ったよね。もちろんよくしようとして、ああなっただけなんですけど。それを「静かなくちづけ」でもやっています。もちろんその歌い方が似合う、曲がよくなるという視点からです。

──19年ぶりのオリジナルアルバムが完成して、今、率直にはどう感じていますか。

aie:うまくいったなと思ってます。たまたまですけどね。並べてみたら、まとまってるなと思いました。

眞呼:ビジュアル系のカテゴライズではないですよね。そこは、聴いている人が理解してくれたらいいかなと。私がどぎついメイクをしているので、ビジュアル系バンドか?って思われるんですけど、音楽ってそこじゃないんですよ。だから、ジャケ買いはしなくてもいい。純粋に曲を聴いてもらえればいい。

──そうですね。どこまでもdeadmanでありながら、4人それぞれのバックボーンが出た曲にもアレンジもなっていると思います。なおかつ、この4人だからなのか、確実にポップ性が上がっているように感じてます。

aie:はい。何人か確実に、布袋寅泰がいる感じ。このバンドって3/4人がBOØWY好きだから(笑)。どうしてもアレンジに困ると、「布袋に聞いてみます」ってBOØWYの曲を聴いたりして。好きだからこそリスペクトを込めて「ここはBOØWYっぽくしてみよう」ってこともできる。それを理解した上でカッコよくアレンジするということを楽しみながらやってますね。

──キャッチーさの由来はBOØWYなんですね。世界観や歌の意味合いがすべてがわからなくても、確実に伝わる、刺さるものがある、それが今回のアルバムでより明確になっていると思います。

aie:僕の体感でしかないですけど、コンピュータで作った音楽も素晴らしいと思いつつ、細胞レベルで記憶に残るものって、やっぱり人間が出してる音だなと。特に居酒屋とかで流れているBGMで気になるのって、“あれ!? これの曲ってボーカル直してないよね?」みたいな曲のほうが耳を惹くんですよ。それは人間ぽさを感じるからかなと思ってて。だから、人間同士が互いに目の前で向き合って作った音楽だってことがわかるような作り方を心がけていますね。4人が顔を向き合わせて曲を作って、レコーディングをして、というのが聴いて感じ取れるように。

眞呼:歌も上手さだけじゃない…まぁ上手さはなきゃいけないですけど、きれいにはしたくないんですよ。美しい歌声を聴いている、というのではなくて、言葉の感情を聴いている、となったらいいですね。

aie:アルバムを聴いて“ライブに行ってみよう”と思って観に来てくれたら、音に矛盾はないと思うんです。そういう嘘はない。そうしていきたいとずっと思ってますね、それこそ20年前から。

▲リテイクアルバム『living hell』
──この後、全国ツアー<deadman TOUR 2024「道徳の系譜」>もスタートしますが、ツアー会場限定(通販限定)でリテイク作品『living hell』もリリースされます。「blood:2.0」にMUCCのミヤさん、「follow the night light:2.0」にシドの明希さんがゲストとしてレコーディング参加していますが、これはどういう経緯からですか?

aie:明希は以前から、酒飲みながらですけど冗談半分で「今度やらせてくださいよ」と言ってくれてたりしてたんです。オリジナルアルバムを作るにあたってツアーも回るし、kazu君からも「最近ライブの定番になっているけど、まだ録ってない曲は録っちゃおうよ」っていう提案もあったので。

──そもそも、リテイクアルバムリリースの意図はそういうところにあったんですね。

aie:そうですね。「じゃあ、今回もリテイクを出しましょうか」という話が上がって。収録曲を決めたとき、「「follow the night light」を入れるなら、明希に弾いてくれるか一度確認しよう」という感じで。それも流れでそうなったのに近いですね。「じゃあ、ミヤ君にもギターソロを弾いてもらったら面白いかもね」っていう話から、本人に連絡してとか。楽しみながら作ってる過程のなかで、そこにふたりの友だちがいたっていう感じですかね。

──それにしてもこの短期間でよくオリジナルアルバムとリテイクアルバムを完成させたな、という感じですけど(笑)。

aie:ボロボロですよ、ツアー前にして(笑)。

──ここから新しいオリジナルアルバムを引っ提げて、ということでは久々のツアーになると思いますが、また新たな感触や思いも芽生えそうですね。

aie:緊張というか、初めて演奏する曲が多いので。全会場もちろんちゃんとやりますけど、もしかしたらツアーファイナルには曲のアレンジが変わっている可能性もあるし。

眞呼:確かに。

aie:テンポが変わってるとかね。それに一回もやらなかった曲が存在する可能性もあり得るなと思ってて。やっぱりステージに立って、お客さんの前でやると、“あれ、こっちのほうがいいかもな”っていうのは結構昔からあるんですよね。変わる可能性は大いにありそうです。それと、「2025年、deadmanは25周年らしいんです」って話をkazuくんから聞いたんですね。kazu君の中にはプランがあるみたいなので、それをツアー中に話し合って、ぼんやりとしたものでもなにかが見えればなと思ってますけどね。

──また忙しくなりそうな…。

aie:ただ今回、いいアルバム作ったなというのは自覚もあって。今、評価されなくてもいいけど、10年後くらいに評価されてもいいなと思えるくらい、いいものができたと思っているんです。まだレコーディングが終わったばかりですけど、燃え尽きたとか、また新しいものへ向かっているというよりは、まずは作ったものを表現していきたいのが大きい。ツアーが終わるまでは、2025年のことはぼんやりしてたいですけどね(笑)。もうちょっと余韻に浸りたいというか。

──2019年の復活から、deadmanとして、ずっと濃密な時間を過ごしていますしね。

aie:2019年に活動を再開したものの、コロナ禍のせいで活動ができなくなって。(視野に入れていた)解散というものがなくなって、deadmanを続けようとなったくらいから思ったことがあって。世の中、どうなるかわからないから、今決定できることをやっていこうと。そういう判断でしかできない。本当に流動的というか、フットワークの軽さ、瞬発力だけで物事を決めていく3年間だったんです。うまくいってるとしたら偶然だし、頭からこうなることを考えて動いてないんですよね。

眞呼:もし頭からなにか考えているんだったら、復活の最初の瞬間にオリジナルアルバムを引っ提げてやっていたと思うんです。でも、そうじゃない。最初は、“終わらせよう”というところからなので。で、今がこういう状況だということこそ、本当に生き物というか。“こうなりました”というのを私たちdeadmanも再確認している状態ですね。

aie:kazu君と晁直を入れて4人になって、一緒にいる時間がすごく長いんですね。晁直もkazu君もdeadmanをやりたいというモチベーションがあるから。「新しいもの作りましょうよ」というのがあって、それでできたのが今回の作品。全員が「やりたいね」と思っているから続けていられるのかな。楽しいですからね、一緒にいて。楽しくライブをやっていて、終わっても朝まで一緒にいたりするから。そういう仲の良さもすごく大きいかも。

取材・文◎吉羽さおり

■オリジナルアルバム『Genealogie der Moral』

2024年3月30日(土) CD発売
2024年6月03日(月) 配信開始
【CD】DCCA-127/3,850円(税込)
▼収録曲
01. in the cabinet
02. 真夜中の白鳥
03. rabid dog
04. 静かなくちづけ
05. ミツバチ
06. the dead come walking
07. 猫とブランケット、寄り添い巡り逢う産声
08. 零
09. 宿主
10. dawn of the dead

■ライブ会場/通販限定リテイクアルバム『living hell』

2024年3月30日(土) CD発売
【CD】DCCA-126/3,000円(税込)
※ライブ会場&通販限定販売
通販:MAVERICK STORE:https://www.maverick-stores.com/deadman/
▼収録曲
01. dlof facs:2.0
02. please god:2.0
03. blood:2.0
04. follow the night light:2.0
05. additional cause for sorrow:2.0
06. please god:2.0 (ORIGINAL KARAOKE)
07. blood:2.0 (ORIGINAL KARAOKE)
08. follow the night light:2.0 (ORIGINAL KARAOKE)
09. additional cause for sorrow:2.0 (ORIGINAL KARAOKE)
▼Guest Artist
ミヤ(MUCC):M3「blood:2.0」
明希(シド):M4「follow the night light:2.0」

■アルバムリリース記念インストアイベント

3年31日(日) TOWER RECORDS 新宿店
4月21日(日) TOWER RECORDS 名古屋パルコ店
4月28日(日) TOWER RECORDS 福岡パルコ店
5月12日(日) TOWER RECORDS 札幌パルコ店
5月19日(日) TOWER RECORDS 梅田NU茶屋町店
※詳細は各店舗にて

■全国ツアー<deadman TOUR 2024「道徳の系譜」>

▼2024年
4月06日(土) 金沢・金沢vanvan V4
4月07日(日) 長野・長野ライブハウスJ
4月13日(土) 京都・京都MOJO
4月14日(日) 岡山・岡山IMAGE
4月20日(土) 愛知・名古屋E.L.L
4月21日(日) 愛知・名古屋E.L.L
4月27日(土) 福岡・福岡INSA
4月28日(日) 福岡・福岡INSA
5月04日(土) 埼玉・HEAVEN'S ROCK さいたま新都心 VJ-3
5月05日(日) 宮城・LIVE HOUSE enn 2nd
5月11日(土) 北海道・札幌Crazy Monkey
5月12日(日) 北海道・札幌Crazy Monkey
5月18日(土) 大阪・アメリカ村 DROP
5月19日(日) 大阪・アメリカ村 DROP
6月01日(土) 東京・新宿BLAZE
▼チケット
前売6,500円(税込)
※スタンディング
※入場時ドリンク代別途必要
https://eplus.jp/deadman24-official/

関連リンク

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