北周の武帝の顔、DNA解析で復元 中国の考古学チーム

北周の武帝の顔、DNA解析で復元 中国の考古学チーム

28日に発表された宇文邕の頭部の復元図(左下)と唐代の画家・閻立本が「歴代帝王図」で描いた宇文邕(右下)。(西安=新華社配信)

 【新華社上海3月29日】中国上海市の復旦大学科技考古研究院は28日、陝西省考古研究院と共同で作成した南北朝時代北周王朝の武帝、宇文邕(うぶん・よう、543~578年)の頭部の復元図とこれに関連する考古学研究の成果を発表した。科学技術を駆使して古代の帝王の顔立ちを復元する試みは中国で初めてとなった。

 歴史書の記載によると、宇文邕は遊牧民族・鮮卑(せんぴ)の出身。中国北方を統一後、「突厥(とっけつ)を制圧し、江南を平定する」野心に燃えていたが、志半ばにして早世した。阿史那(あしな)皇后とともに、現在の陝西省咸陽市にある孝陵に葬られている。

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 28日、陝西省西安市で発表された宇文邕の頭部の復元図。(西安=新華社記者/李一博)

 古代の帝王の容貌を復元する上での最大の困難は、完全な頭蓋骨や質の高いゲノムデータを手に入れにくいことにある。幸いなことに、孝陵では1994~95年に陝西省考古研究院と咸陽市文物考古研究所が実施した緊急発掘で、宇文邕の頭蓋骨や肢骨のほか、阿史那皇后が皇太后になった後に使った金印「天元皇太后璽」が見つかり、墓の主が鮮卑族の帝王であることが明らかになっていた。

 復旦大学科技考古研究院の文少卿(ぶん・しょうきょう)副教授の研究チームは、古代DNAの検出に適したプローブを用い、宇文邕の肢骨標本から利用可能な約100万の遺伝子座を取得し、頭髪や皮膚、瞳孔などの重要な特徴を再現。6年の試行錯誤を経て、宇文邕の頭部を描き出すことに成功した。

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 28日に発表された宇文邕の頭部の復元図。(西安=新華社配信)

 復元図中の宇文邕は黒い髪、黄色の皮膚、茶色の目をしており、典型的な東北アジア人、東アジア人の顔つきと言える。鮮卑族と聞いて多くの人が想像する、ひげが濃く、髪が褐色で、彫りが深く、鼻の高いイメージとは大きく異なる。

 唐代の画家、閻立本(えん・りっぽん)も「歴代帝王図」で宇文邕を描いているが、ふっくらした顔にどっしりした体つきをしており、今回復元されたシャープな容姿とはやはり違いがある。

北周の武帝の顔、DNA解析で復元 中国の考古学チーム

28日、宇文邕墓の考古学研究の成果を紹介する復旦大学科技考古研究院の文少卿副教授。(西安=新華社記者/李一博)

 文氏は「宇文邕の家系をたどると、祖母の王氏は北方の漢人だった可能性がある」とし、「鮮卑族は多民族が融合する過程で形成された可能性が高い」と指摘した。

 復旦大学歴史学部の韓昇(かん・しょう)教授は「北周武帝の容貌の復元は歴史研究に新たな道を開いた」と評価。南北朝時代は中国の歴史に大きな影響を与えた民族大融合の時期であり、科学技術に基づく考古学研究は歴史研究に新たな証拠をもたらすだけでなく、中華民族の「多元一体」の構造に対する人びとの理解を深めることにもつながるとの認識を示した。

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28日、宇文邕が葬られた孝陵での考古学的発見について紹介する陝西省考古研究院の張建林(ちょう・けんりん)研究員。(西安=新華社記者/李一博)

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28日、宇文邕墓の考古学研究の成果を紹介する復旦大学科技考古研究院の文少卿副教授。(西安=新華社記者/李一博)

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 28日に発表された宇文邕と鮮卑サンプルの遺伝構成分析図。(西安=新華社配信)

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 宇文邕墓を発掘する調査員。(資料写真、西安=新華社配信)

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 宇文邕墓。(資料写真、西安=新華社配信)

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 水素気球から空撮した宇文邕墓。(資料写真、西安=新華社配信)

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 宇文邕墓の発掘現場で作業する調査員。(資料写真、西安=新華社配信)

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