大谷翔平の”新バディ”東京生まれのアイアトン通訳を米放送局が異例の特集! 勤勉さを称えた「新しい役割を垣間見た最初の瞬間」とは?

球界を牽引するスーパースターの隣につく敏腕通訳が、再び脚光を浴びている。

大谷翔平(ロサンゼルス・ドジャース)が現地3月28日に本拠地で行なわれたセントルイス・カーディナルス戦に「2番・指名打者」で先発出場。観衆から大歓声を受けた大谷は3打数2安打のマルチヒットを記録し、ホームでの開幕戦白星スタートに貢献した。

1番のムーキー・ベッツ、2番の大谷、3番のフレディ・フリーマンが並んだ最強の「MVPトリオ」が合わせて8打数5安打2本塁打4打点と大爆発。チームも10安打7得点を挙げ、カーディナルスをまったく寄せ付けず完勝を収めた。

初めてドジャー・スタジアムでの試合を終えた後、大谷は「ファンの人も多く入ってもらって、敵の時は怖いですけれど、味方の時はとても心強く、素晴らしい声援を頂いてありがたかった」と地元ファンの盛り上がりに感謝。「1打席目からヒットが出たので、安心じゃないですけど、スタートとしては良かったんじゃないかなと思います」と本拠地での初安打を振り返った。
上位打線を組むベッツ、フリーマンには豪快な一発が飛び出した。「僕だけホームランは打てなかったですけど、比較的いい打席だったんじゃないかなと思うので、いいゲームだったなと思います」と話し、頼もしいチームメイトに笑顔を見せた。

試合では、ベンチでチームメイトと英語でコミュニケーションをとる姿もあった。自分の打席の感覚や投手のボールだったり、積極的に同僚らと情報交換を交わした。「僕がどう見えているかの感覚を初めてのチームの選手たちは知らないですし、僕がどういう風な感覚で見えているかというのを共有するのは大事かなと思います」と、大谷はそう強調しながら、常勝軍団の一員として少しずつチームに溶け込んでいるようだ。

そんな偉才の言葉を英語に訳す”新バディ”のウィル・アイアトン氏への評価は、現地メディアで軒並み高まっている。

ドジャース専門メディア『SportsNet LA』は試合後のインタビューを公式X(旧ツイッター)に共有。違法賭博スキャンダルによりドジャースを電撃解雇された水原一平氏に代わり、代理通訳として大谷をサポートし続けている同氏の仕事ぶりについて「イッペイ・ミズハラに代わるこの新しい通訳は、かなり優秀だ」「グッジョブ、ウィル! もちろん、ショウヘイも素晴らしいゲームだった」「オオタニの話し方の抑揚や間、雰囲気までも通訳しているようにみえる」「時折、2人で顔を合わせてうなずいている。いい関係だ」などと、新しい相棒に好感を寄せている。 ドジャースが本拠地開幕戦を白星で飾ったことを受け、米ハワイ州のローカルテレビ局『KHON2』のクリスチャン・シマブク記者は、かつてドジャース時代の前田健太の通訳を担当したアイアトン氏にスポットを当てた特集記事を配信した。

記事内では「ミズハラ氏の解雇以来、ドジャースは一時的にチームのパフォーマンス・オペレーション・マネージャーのウィル・アイアトン氏に(大谷の)通訳任務を与えている」と記し、その敏腕ぶりを伝えている。

アイアトン氏は日系アメリカ人の父とフィリピン人の母を持ち、東京で生まれた。10代でハワイに移り、ミッドパシフィック大に入学して2007年に卒業。同大学では野球部に所属していた。

13年のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)ではフィリピン代表に名を連ねていたが、惜しくも出場を逃した。さらに4年後のWBCでは同代表の運営スタッフの一員として出場を目ざしたが、この時も予選敗退を喫し涙を飲んだ。

その後、テキサス・レンジャーズやニューヨーク・ヤンキースなどでのインターン経験を積んだ同氏は19年からドジャースに籍を置き、データ分析部門を担うエキスパートに。現在は同球団の編成部選手育成・能力開発主任の肩書きを持ち、水原氏の違法賭博問題で激震が走ったチームは、急遽大谷の代理通訳にアイアトン氏を指名した。
シマブク記者は25日(現地)、日本人スターが報道陣の前で初めて元通訳の賭博スキャンダルについて声明を発表した会見の中で、彼の勤勉な部分を次のように綴っている。

「アイアトン氏はオオタニの発言の間、ずっと彼の側でメモを取り、球界スターの言葉を日本語から英語に訳していた。ミッドパシフィック大出身である彼の新しい役割を垣間見た最初の瞬間だった」

新天地でメジャー7年目のスタートを本格的に切った大谷。新しい相棒と一緒に自身初のワールドチャンピオンを目ざす戦いは、まだ始まったばかりだ。

構成●THE DIGEST編集部

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