きょう71年の歴史に幕「わがまちのお肉屋さん」神尾食肉店 群馬・前橋市  

「お客さんの笑顔に支えられた」と話す(左から)広一さん、広子さん

 「わがまちのお肉屋さん」として親しまれてきた群馬県前橋市堀越町の神尾食肉店が30日、71年にわたる歴史に幕を閉じる。3代目店主の神尾広一さん(75)と妻の広子さん(71)が「元気なうちに幕引きを」と決断。同店の味で育った常連客が名残を惜しんでいる。

 1952年12月に創業。当初はブタの種付けや養豚、仲買、精肉への処理も手がけていた。塊の状態で筋切りする機械は年季が入っているが、広一さんは「柔らかい肉が提供できる」と信頼を寄せる。

 86円のコロッケはジャガイモをふかすところから仕込む人気商品。メンチカツやサラダなどは広子さんの手作りだ。こども園に納入する給食用の精肉は調理に手間がかからないよう、一口大に切るなど工夫した。

 広一さんは、66年のプロ野球ドラフト会議でサンケイアトムズ(現東京ヤクルトスワローズ)から指名を受けた実力者。進学を選択したものの、その後、地元の少年野球チーム「大胡リトルスターズ」の監督に就任。約10年間で200人以上の選手を育てた。

 広一さんの父で2代目の喜代松さんが亡くなった年齢に近付き、愛用の精肉機器も耐用年数に迫ったことなどから閉店を決めた。広一さんは「結婚以来連休した記憶がないから、これからどんな生活になるか想像がつかない」と笑う。

 最終日の営業は午前10時半~午後6時半で、揚げ物は午前11時から。商品の販売は予約優先で、完売次第、閉店する。

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