SixTONES、初冠番組『バリューの真実』終了に寄せて 高校生と寄り添う中に光った6人の多彩さ

SixTONESがMCを務めてきた『バリューの真実』(NHK Eテレ)が3月26日の放送で最終回を迎えた。最後の放送ではメンバーがペアになり、ハート型のクッションを持って登場。「ありがとう」をテーマに番組の冒頭から優しい雰囲気で最終回を飾った。改めて2年ほどの活躍を振り返ってみたい。

SixTONES初の冠番組である『バリューの真実』は、遡ること2020年12月、2021年6月に2週連続のパイロット版が放送され、2022年3月の55分拡大版の放送を経て、2022年4月からレギュラー化。毎週火曜夜7時にリモート出演する高校生たちと一緒に様々なテーマに向き合ってきた。悩み多き多感な高校生たちを前にSixTONESの6人は時にはお兄さん、時には同級生のように寄り添い、高校生の親が登場する回では20代のSixTONESメンバーが間に入ることで、各世代をつなぐ役割を果たす場面も。テーマによっては自身のエピソードを明かすことも多く、アドバイスを送るにしても決して上から目線になることはなく、いい関係を保ちながら接していた印象だ。

性格などから犬系・猫系に分けるタイプ診断を取り上げた2022年5月3日放送回では、周囲の人たちをその視点で分けることはないと意見が一致した6人だが、松村北斗は芝居をする際に演じる役柄を分析する際に似た分析を活用していると明かした。診断テストで「困っている人を放っておけない」に×をつけたジェシーに髙地優吾と田中樹がツッコミを入れると、元々は放っておけないタイプだったが、あまりにも頼られすぎた経験からの回答だったというジェシーの思いが引き出された場面も。高校生にとっても、親世代ほど離れていないものの一歩先を行く彼らの経験を交えたエピソードは参考になり、様々な選択肢があることへの理解、そして視野を広げる一助になったのではないだろうか。

また、失敗を許されない風潮を感じているという高校生の意見を聞いた森本慎太郎は「失敗することはすごく大事、失敗があるからこそ次の成功につながる道が開ける」と力強いアドバイスを送った。ジェシーは「(失敗した時は)ここが地獄だと思って生きています」と自身の考えを明かし、「地獄なのにこんなに笑って暮らせる」「地獄なのに飯食える」と思うことでポジティブに捉えていると語っていたのも印象的だ。
番組では様々なお悩みに向き合ったほか、京本大我が部長を務めたスイーツ部企画も好評だった。マカロンやアイスクリームなど、家庭で簡単に作れるスイーツを紹介。モンブランの回では京本の無茶振りによって松村が“甘栗体操”をあみだしたほか、森本が静かにカメラに向かって変顔を披露するなど、単なるスイーツ作りで終わらないのが彼ららしい。さらにアウトドアスイーツ部として、アウトドアに詳しい髙地が活躍するなど、スイーツ部ひとつとってもいろいろな展開を見せた。そんな笑いの絶えない雰囲気からは、何ごとも自分たちで楽しむ、受け身ではなく主体的に楽しむという姿勢をごく自然な流れで伝わってきたのではないだろうか。

このほか、テーマに沿ったドラマも放送され、後輩にあたるジュニアと共演したことも。教養バラエティらしい学びを盛り込んだ番組オリジナルのドラマは、他にはない見ごたえがあった。また冠ラジオ番組『SixTONESのオールナイトニッポンサタデースペシャル』(ニッポン放送)に続き、本番組を仕切る田中も、より親しみやすいテンションで進行を務めていたのも印象深い。

そして欠かせないのが音楽。SixTONESの楽曲「WHIP THAT」がストレス解消に、「Good Luck! 」はモチベーションアップにつながると専門家が分析。彼らの音楽の魅力を理論的に知る機会となった。

「応援する気持ち」をテーマにした放送回では、SixTONESの楽曲「こっから」を全国から募集した7校の吹奏楽部が挑戦。スタジオにも38人の吹奏楽部の部員が集結し、バリュー高校生吹奏楽団としてSixTONESとのコラボレーションが実現した。リハーサルでは、田中が「楽しんでくれたら」と優しい眼差しで語っていたように、高校生たちと一緒になってステージを作り上げる姿には胸が熱くなった視聴者も多いはず。

お悩みを通して専門家から様々な知識を教わるだけではなく、笑いに溢れるトークにドラマ、料理に音楽……いろいろな方向に展開していったのも多彩なメンバーが揃っているからこそ。

レギュラー化から2年で幕を下ろした『バリューの真実』。民放やYouTubeチャンネルともまた異なるEテレならではの落ち着いた雰囲気の中で、6人の個性とユーモアが際立っていた。ここで覚えた知識は一生の宝になるだろう。またいつか、こんな風に異なる世代同士の交流が見られる彼らの番組が新たにできることを願うばかりだ。

(文=柚月裕実)

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