『ガリレオ』『SPEC』『TRICK』の男女ペアに惹かれる理由 恋愛を超えた最高のパートナー

東野圭吾のベストセラー小説を原作にした『ガリレオ』シリーズ(フジテレビ系)の最新映画『沈黙のパレード』が、『土曜プレミアム』(フジテレビ系)で3月30日に地上波初放送となる。

本作の魅力は何と言っても“変人ガリレオ”こと天才物理学者・湯川学(福山雅治)と警視庁捜査一課の刑事・内海薫(柴咲コウ)の男女凹凸コンビだろう。

「現象には必ず理由がある」をモットーとする湯川と、よく「刑事の勘」という言葉を口にする内海は正反対にも思えるが、互いに相互補完し合って事件を解決に導く。非論理的なことが嫌いな湯川だが、内海の「刑事の勘」もなかなか無視できないところもあり、互いに自分には持ち得ないものを持つ相手にリスペクトがあり、尊重し合っている様子も見受けられる。また、お互いに立場は違えど、それぞれの見地からの「正義感」がブレないという点は共通している。

また、いつも冷静沈着で、自分の世界をとにかく大切にしているかに見える湯川が、ひたむきで真っ直ぐな内海に揺さぶられ変化していくところが何とも人間臭く味わい深い。

『ガリレオ』の男女逆転版が、同じく人気シリーズの『SPEC』(TBS系)と言えるだろう。IQ201の天才であり大の物理マニアの変人・当麻紗綾(戸田恵梨香)と警視庁特殊部隊(SIT)出身の硬派で無骨な瀬文焚流(加瀬亮)のコンビだ。クセの強い不思議な当麻に冷静なツッコミを入れる瀬文という水と油のような存在の2人が、共通の敵に向かって手を取り合い進んでいく様子が痛快だ。さらに彼らが配属されている通称「未詳」が取り扱う事件は超能力や特殊能力を持つスペックホルダーによる、常識では考えられない事象が対象になる。毎話現れるスペックホルダーたちは揃いも揃った曲者たち。しかしその中にも様々な人間模様が立ち上り目が離せなくなる。

また、男女ともにかなり浮世離れしているコンビが『TRICK』シリーズ(テレビ朝日系)の自称天才マジシャン・山田奈緒子(仲間由紀恵)と自称天才物理学者で大学教授の上田次郎(阿部寛)だ。大抵規格外の主人公の隣には、その軌道修正役を担う真っ直ぐで不器用なフォロー担当がいるものだが、本作では2人共に協調性がなく、突拍子もない(強いて言えば上田のほうが表向き社会性はあるかもしれない)。さらにはそんな2人が超常現象や、奇怪な事件に隠されたトリックを解決していくミステリードラマで、もはや彼ら2人だけでなく登場人物全員が変人というカオス。そんなカオスが放つ圧倒的な熱風が凄まじく、知らないうちに飲み込まれていく。

互いにけなし合いながらも、頼りにし合っているのが伝わってくるのが、山田・上田ペアの面白みであり、はぐれものたちの血の通ったやり取りに可笑しみが溢れる。『SPEC』、『TRICK』共に、よりボケ要素の強い女性主人公の役どころを演じる主演俳優のこれまで見たことのないギャップある一面が引き出されるのも魅力と言えるだろう。

恋愛要素がなくとも側にいて互いに影響を及ぼし合うことはできるし、対極にいるかに見える人間同士が力を合わせることでしか動かない山があり、見えない世界がある。同じ事象を見ても、見え方は人それぞれで、その重なり合った部分にこそ驚くべき真実が隠されている。全く異なる者同士が交わることでこそ、自身の世界が揺るがされ拡張され、より豊穣なものになる。そして、対極にいるからこそ互いに漏らせる本音や弱みがあるのが、人が人と関わることの希望にも思えるのが全ての作品に通じる最大の魅力かもしれない。
(文=佳香(かこ))

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