もう、生きていけない…母死去で「生活費月14万円」を失う〈実家ひきこもりの50代男性〉、救済を求めた役所で言われた残酷なひと言

さまざまな理由でひきこもり状態となっている中高年。一家を支えているのは「親の年金」というケースが多いですが、当然、親が亡くなれば生活は一気に困窮します。そのときの救済策として「生活保護」が考えられますが、誰もが生活保護を受けられるわけではありません。みていきましょう。

日本人の2%は「ひきこもり状態」にある

内閣府『こども・若者の意識と生活に関する調査(令和4年度)』では、「ひきこもり」は、生産年齢人口にあたる15歳~64歳で全人口の2%ほど、推計146万人にものぼるとしました。ここでいう「ひきこもり」は「広義でのひきこもり」といって、趣味の用事の時だけ外出したり、自室からほとんど出ない状態が6ヵ月以上続いている人。ドラマや映画などで描かれる「ひきこもり」よりは、ライトなものも含みます。

年齢層別にみていくと、15歳~39歳は7全人口の2.05%で、7年前調査の1.57%から上昇、40歳~64歳では全人口の2.02%と、4年前調査の1.45%からこちらも上昇しました。

若年層のひきこもりは不登校・退学、退職などがきっかけのことが多く、一方で中高年のひきこもりは、定年退職を機に社会との関係が希薄になったことが理由として挙げられることが多いようです。

また中高年のひきこもりを語る際に出てくるのが「就職氷河期」というワード。その名の通り、学卒者の就職が困難だった時期で、1993年~2005年に学校を卒業した現在40代から50代前半の人たちにあたります。なかでも2000年「超氷河期」といわれ、「大学を出ても職がない」という学卒無業者が22.5%にもなりました。

就職活動に失敗し、そのままひきこもりになる……そんな人が多くいました。また就職したからといって安心というわけではなく、圧倒的に雇う側が強く、ハラスメントへの意識も薄い時代。長時間労働は今よりもひどく、せっかく就職しても途中でドロップアウト。この辛い経験がきっかけでひきこもりになる、そんな人も大勢いたわけです。

心に傷をおった結果、いまも働ける状態にない……そういう人は、たとえば「親の年金」で暮らす、という選択肢しかないわけです。

親の年金が頼りの「50代の引きこもり」…母が亡くなり生活が困窮すると

15年近くも実家に引きこもったままだという50代の男性。80代の母の年金(父はすでに他界)、月14万円で暮らしているといいます。周囲からは男性に障害年金を申請したほうがいいとアドバイスがあったといいますが、そのためには病院で診察してもらう必要があります。男性は病院にいくこと、また診断がつくことがイヤだといい、実現には至っていません。

――いつまでも私の年金があるとは限らないので

と心配を口にながら、「お金はないが、家だけは残してあげられる」というのが、子どもにしてあげられる最後のことと、男性の母はいいます。

万が一、母が亡くなったら、男性はどのように生きていけばいいのでしょうか。頼みの綱だった親の年金はありません(親が亡くなったことを隠し、年金をもらい続けることはもちろん犯罪)。せめて雨風をしのぐことができる家があることが救いでしょうか。しかし収入がゼロでは生きていくことはできません。生活保護の申請をすることが、ひとつの選択肢になるでしょう。

生活保護は日本国憲法第25条の理念に基づき、「健康で文化的な最低限度の生活」を保障する制度。「働きたくても働けない」「働いているが給与が最低生活費以下」「資産を活用しても最低生活費以下」「親戚等を頼ることもできない」 などの要件を満たすことが申請の条件となります。

たとえば東京都23区の場合、生活費となる「生活扶助額」は7万7,240円、家賃に相当する「住宅扶助額」が7万7,240円。合計13万0940円が生活保護費となります。

ここで「持ち家でも、生活保護を受けられるの?」と疑問。厚生労働省『2022年度被保護者調査』によると、生活保護世帯161万9,452世帯のうち、持ち家は4万6,791世帯。全体のおよそ3%にあたります。専門委員会説明資料によると、生活保護受給の際の「不動産保有の考え方」として、不動産は売却が原則ではあるものの、居住中の土地建物については保有してもよいとされています。男性の場合、持ち家なので、生活保護の申請をした場合、「生活扶助額」は7万7,240円は認められる可能性があります。

しかし、持ち家でも絶対生活保護が受けられるかといえば、そうではなく、持ち家を売却しなければならないケースも。たとえば「相続を受けた家が空き家になったいる場合」。生活保護は資産の活用が原則ですから、生活保護を受給する前に、まずは売却して得た収入を活用するようにいわれるでしょう。また過去の判断では、居住していても「売却価格が2,000万円程度」になる場合は生活保護は認められず、売却で得た収入を活用するよういわれるといいます。

――生活保護は受けられません

――えっ⁉

――まずは住んでいる家を売って、その収入を活用してください

――持ち家でも生活保護を受けられると聞きました

――良いところにうちがあるので、結構な売却額になると思われ……

「持ち家でも生活保護を受けられる」といわれるものの、明確な基準はありません。相当の売却額が見込める家の場合は、売却を勧められると心得ておいたほうがよさそうです。

[参考資料]

内閣府『こども・若者の意識と生活に関する調査(令和4年度)』

厚生労働省『2022年度被保護者調査』

厚生労働省『社会保障審議会(福祉部会生活保護制度の在り方に関する専門委員会)』

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