銀行への規制強化で投資妙味アップ!運用のプロが注目する資産「プライベート・クレジット」とは【アライアンス・バーンスタインの見解】

(※写真はイメージです/PIXTA)

公開(パブリック)市場で取引される株式や債券と対をなす形で存在する未公開(プライベート)資産。かつてはニッチな存在でしたが、いまやポートフォリオに欠かせない重要な資産だと、アライアンス・バーンスタイン株式会社のプライベート・オルタナティブ部ディレクター清森英晃氏はいいます。プライベート資産とはいったいなんなのか、またプライベート資産は投資家にどのようなメリットをもたらすのか、詳しくみていきましょう。

プライベート・クレジット※急拡大の背景

プライベート・クレジットが急拡大してきた背景には、銀行のバランスシートの改善に向けた取り組みがあります。

銀行に対しては、金融危機を踏まえて一定以上の自己資本比率を保つ規制が課され、段階的に規制が強化され続けています。こうなると、多くの銀行が融資を一段と減らし、企業向けローンや住宅ローン、商業ローンの一部をバランスシートから切り離さざるを得なくなる傾向にあります。

さらには、金利上昇の影響も、銀行が資産規模を縮小させる傾向に拍車をかけています。米国では、2022年以降は銀行が保有資産の時価評価損を計上したことなどで預金が流出し、融資を大幅に減らしています[図表]。

【図表】預金流出によって守勢に回る銀行
※出所:アライアンス・バーンスタイン株式会社

銀行は単に資産を保有するだけではなく、ビジネスを動かしていく側に立とうとしています。これは銀行以外の融資元(レンダー)にとっては、市場や地域を超えて銀行と連携するチャンスが生まれることを意味します。

たとえば、多くのローンをひとまとめにして割安に購入する機会や、新規組成のローンを取得するためにリスク・シェアリング契約を結ぶといった魅力的な投資機会を獲得できます。

一方、銀行にとっても、資本規制を課されることなく、ローンの組成に伴う手数料収入を確保するメリットが享受できます。

2024年は、主要中央銀行の金利が高止まりする可能性が高く、一方で欧米には経済成長が鈍化する兆しがあります。ソフトランディングと予想されていますが、いずれにせよランディング(景気減速)すると私たちは見ています。

このことは重要で、仮に変化が緩やかだとしても、借り手のストレスが一段と高まる状況となる可能性が高まるため、信用リスクを効果的に引き受け、プライベート・クレジットを組成できる能力が問われると考えます。

プライベート・クレジットは当事者間で直接交渉して組成されます。つまり、借り手と出資者との意思疎通の機会が設けられ、起こりうる問題をあらかじめ回避することができるのです。こうした状況で有利になるのは、幅広い経験を積んだ運用会社と考えます。

注目しておきたい「プライベート・クレジット」とは

今後、投資家が焦点を当てるべきプライベート・クレジットには、どのようなものがあるかいくつか注目分野を見てみたいと思います。

ダイレクト・レンディング

これは、中堅・中小企業を主な対象にした直接融資で、金融危機以降、急速に普及しました。

米国のプライベート・クレジット市場でも最大のシェアを占めていて、大企業向け融資より高い利回りを期待できる点が魅力です。

しっかりした収益と幅広い顧客を持つ企業にフォーカスすれば、市場環境に関わらず優れたリスク調整後リターンが得られる期待があります。

スペシャリティ・ファイナンス

2つ目はスペシャリティ・ファイナンスと呼ばれる担保資産付きのローンです。

住宅ローンや自動車ローンといったキャッシュフローを生み出す資産や債権への融資は、投資家のポートフォリオを多様化させると同時に高いリターンを生み出す可能性があるため、プライベート資産の中で今後大きな割合を占めていくかもしれません。

実物資産を裏付けとした債権

3つ目は、商業用不動産やインフラといった実物資産を裏付けとした債権です。

商業用不動産市場は、金利の高止まりと先行きの不透明感により活況を欠きました。しかし、金利のピークアウトに伴い不動産の買い手と売り手の間で価格の折り合いがつき、不動産の取引量が増加すると予想されます。

銀行が継続融資に慎重な姿勢を取るなかで、資本余力のある融資元にとっては好機となりえるでしょう。

インフラについても再生可能エネルギー関連のプロジェクト融資で、金利上昇に伴う評価額の見直しにより、有望な投資機会が見え始めています。

「投資家に有利な」プライベート・クレジットの出現が期待できる

たとえ、経済成長のペースが鈍化したとしても、プライベート・クレジットの利回りはコロナ禍以前の水準を上回ると見られています。

また、金利上昇に伴う再評価が魅力的なバリエーションを生み出し、幅広い資産で投資家にとって有利な取引条件が出現するでしょう。

このため、機動的に投資資金を振り向けられる投資家にとって、2024年はプライベート・クレジットへの投資妙味の面で良い時期になると見ています。

清森 英晃

アライアンス・バーンスタイン株式会社

プライベート・オルタナティブ部ディレクター

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