行って観よう 中部のレジャースポット 上高地 夏と一変、静寂の世界

河童橋と穂高連峰

 夏から秋にかけて多くの観光客や登山客でにぎわう上高地(松本市)も冬季は静けさに包まれている。なにしろ標高1500メートルの山岳地。4月中旬まで上高地バスターミナルへの車両アクセスはなく、徒歩のみたどり着ける場所だからだ。ただ、冬ならではの景観を楽しもうと、最近はスノーシュートレッキングツアーなどもあるようだ。寒さが緩んだ3月中旬、冬の登山装備で上高地を訪ねた。

 旅のスタートは、高山濃飛バスセンター(高山市)。松本行きの高速バスに乗り込むと、約1時間15分で「中の湯」バス停に着く。バス停の先が、上高地に通じる唯一の道路である「釜トンネル」だ。トンネル延長1310メートル、両端の標高差は100メートルあり、行程はきつい。その先の「上高地トンネル」を抜けるまで、修行のごとく歩みを進める。

 だが上高地トンネルの先には別世界が広がる。雪化粧した北アルプスの山々が、視界に飛び込んでくるのだ。

 上高地バスターミナル方面に歩き出すうちに雪が深くなり、軽アイゼンやチェーンスパイクが必要な場合も。途中、大正池では雪に包まれた焼岳や穂高連峰が一望でき、息をのむ。

 上高地を象徴する吊り橋「河童橋」までは、釜トンネルから約6キロ。この日は雪の深さと写真撮影で2時間半かかった。途中、雪中で毛づくろいするサルや雪の中の静かな上高地バスターミナルなど、冬ならではの景色を堪能した。
 河童橋から見る北アルプス、山々を水面に映す大正池。充実の1日だったが、帰り高山までのバスを平湯温泉で途中下車して立ち寄った「ひらゆの森」も格別だった。山と温泉。それに地元の酒があれば、旅は極上のものになる。
(松田理恵子)

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 観光需要が戻る中、中部の魅力あふれるレジャースポットを紹介します。
(第5土曜日に掲載)

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