「危機意識欠く重大な問題」 女児虐待死受け検証委報告 三重

【一見知事(右)に報告書を手渡す佐々木委員長=県庁で】

 三重県津市で母親の虐待を受けた女児=当時(4つ)=が死亡した事件で、県の検証委員会(委員長=佐々木光明神戸学院大教授、5人)は29日、再発防止に向けた報告書を県に提出した。

 報告書は、虐待の疑いがある情報が寄せられても1年以上にわたって対面で女児の安全を確認していなかった児相の対応について「危機意識を欠いていた。重大な問題」などと指摘した。

 その上で「対面で安全確認をしていればネグレクト(育児放棄)に気付けた可能性があった」とし、対面を基本とした安全確認の徹底や担当者の人材育成、十分な人員の確保などを求めた。

 女児の体重が保育所入所後の1年間で増えなかったことにも言及。「虐待疑いの指標にもかかわらず、認識が乏しかったと言わざるを得ない」と指摘し、関係機関での共有を提言した。

 また、一時保護の判断で参考とするために導入したAI(人工知能)について「十分に活用されているとは言い難い」と指摘。「有益なツール」とし、研修などを通じて活用を図るよう促した。

 報告書は「補足」で、過去に発生した児童虐待でも今回と同じく安全確認や情報共有などに対する指摘が繰り返されてきたと指摘。再発防止に向けた取り組みの進捗を確認するよう提言した。

 この日、佐々木委員長が県庁で一見勝之知事に報告書を提出。「子どもの権利を保障することについて考える機会を設けてほしい。子どもにとっての最善の利益を考えてほしい」と述べた。

 一見知事は児相の職員を増やすなどして対応していると説明。「報告書をつぶさに拝読し、しっかりと対応したい。やるべきことを検討し、なるべく早く対応したい」と述べた。

 検証委は弁護士や児童精神科医ら5人の有識者で構成。昨年7月から今年3月にかけて15回の会合を開き、関係者への聞き取りや現地調査の結果などを踏まえて報告書をまとめた。

 母親は昨年5月21日ごろ、自宅で女児を机の上から転倒させるなどして脳ヘルニアによって死亡させたとして、傷害致死罪に問われた。津地裁は今月、懲役6年の判決を言い渡した。

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